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【学園編完結】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章エピローグ】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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232.縁と緑の舞踏会⑯。真を写す光、未来へ繋ぐ足跡。

 


 何かが燃え尽きるような音。そして、注目を集めたユディット先生。


 そして、その手に握られたもの、それは『この世界』の者にとって見慣れない、いや初見のものだろう。

 だが、俺とナデシコは似たものを知っている。

『若葉組』、並びにその関係者は事前の打ち合わせによって知っている。


 カメラ。写真機。

 あるいは、その形状からフォールディングカメラ、折畳式カメラとも呼ばれたものに近い形状をしていた。



「……我らエルフには…いや、ワタシには悲願があった。…それは、今現在を保存することだ」


 ユディット先生は、カメラをエマ先生に渡す。

 そして、エマ先生は、素早く大講堂から出て行った。


「…故に、己の出来事を物語として記し、感情の動きを曲にして歌い、あるいは目についた風景を描き、思い出そのものを彫刻として形に残してきた。

 …端的に言おう、忘れたくないのだ。…長い時を生きる我らにとって、一瞬に等しい、その一時を」


 王都には、エルフが作った多くの芸術品がある。

 そして、旧エルフ国は、芸術を禁止したことで多くの民がその地を去った。


「……ワタシはかつて、自ら教鞭をとり、王都の民と過ごしていた。…今でも思い出すとも、ある生徒は生意気で、ある生徒は素直だった。…恋の相談なども受けたし、将来の事を助言したこともあった」


 その瞳は遠くを見ている。距離の話ではない。時の話だ。


「……ある日、ふと会いたくなるときがある。…しかし、往々にして、それは遅すぎる願いなのだ。

 …その内、王都でワタシを知らないものが居なくなり、『七天将星しちてんしょうせい』が伝説と化した。

 …今だから、言おう。………うんざりだった、よ」


 その言葉には、多くの学園生が息をのんだ。


「……かつて、生意気だった生徒の面影を持つ者が話したこともないのに、尊敬のまなざしを向けてくる。

 …かつて、素直で質問をよくしてくれた生徒の面影を持つ者が、尊敬のまなざしを向けてくる。

 …いつかの恋の結末を知り、いつかの助言の結果を知る。…尊敬のまなざしをもった子供達から、ね」


 嘆息。それは嘆きだった。

 教師という形で、王都で誰より多くの人間と関わってた故の。


「……それでも、学園は好きだった。…かつていがみ合った種族が、教え合い、高め合うそんな場所が。

 …例え、ワタシを見る目が一色でも、伝説の中のワタシしか見てくれなくても、ね?」


 学園生徒一人一人を見るユディット先生には、紛れもなく慈しみがあった。


「……ただ、その悲嘆に関して言えば、ワタシの思い込みだったのだよ。

 …それを証明したのは、ワタシに対して誰より深い尊敬を持ちながも、本質を見る目を待ち、学びを楽しむある生徒であり、今は教師の……。いや、本人に口止めされていたな。

 …とにかく、型にはめ込んでいたのは、ワタシだった、という大変、情けないオチだ」


 エマ先生の友人である、フレイヤさんが吹き出した。そんな時、大講堂の扉が開き、エマ先生が戻って来た。それを見たフレイヤさんは慌てたように咳払いをし、姿勢を正したのだった。


「……さて、ワタシの長話もたまには役に立つ。…時間稼ぎなどに、ね」


 壇上のユディット先生が、悪戯っぽく目を細めて笑う。


「…エマ、手元の『それ』を掲げながら、こちらへ…。そして、生徒諸君は、生徒同士の間に人の通れる隙間を作りたまえ。…そして、エマの手元の『それ』を見るように」


 エマ先生は頷き、大講堂をゆっくり歩いた。

 今、学園の生徒は二種類に分かれている。なにごとかといぶかしむもの。そして、『それ』を、この世界で見慣れないだろう『写真』を見て、驚愕に目を見開くもの。


 驚き、ざわめきは広がる。

 エマ先生が会場を回り終え、ユディット先生の元へ到着するころには、会場中が驚きに包まれていた。

 その、先ほどの俺達『若葉組』生徒一同の姿が写ったものを見て。


「……『写真』、そう呼ぶらしい。真を写す、という意味だそうだ。…着色もなく、ありのままに記録する。…新たな記録方法だ。

 …さて、理論や制作方法を語りたいところだが、それをやると長話では済まなくなる。…いずれ、正式な発表をするとしよう、か。

 …そして、この発明には、『若葉組』からこの二人の多大な貢献があったことを紹介しよう」


 ユディット先生が隣に手を向ける。そこに立って居たのは、俺とナデシコだ。

 会場の混乱に乗じて、俺とナデシコは変身状態を解除して移動していたのだ。


「……二人は我が同胞、赤のアーテナイより紹介された学園編入生、ナデシコくんとヤマトくん。

 …ヤマトくんの方は制度の都合上、従者扱いだったが、二人とも我が学園の一員だ」


 アーテナイの名前が挙がった時から、またざわめきは強くなった。


「……さて、先ほどの出し物で二人の実力の片鱗、その特異性はよく知れただろう。

 …そして、『写真』開発への並々ならぬ貢献。…彼らは、学園史上、稀に見る逸材である」


 すこし照れるが、ここでの指示は堂々としているように、とのことだった。

 眼下に視線を移せば、事前にこの流れを知っていた三人娘も胸を張っていた。可愛い妹分達である。



「…ゆえに、このワタシ『緑のユディット』の名の下に、ラディス大陸各地での調査活動を担う、『ロニア魔法学園特別調査員』の任を、ここに命ずる。

 …それに伴い、学園高等部卒業相当の実力と認定し、冒険者ランクB級の権限を授与するものとする」


その宣言に、歓声が広がる。


文句を付けるものなど誰一人おらず、『ロニア魔法学園特別調査員』。それが新たに増えた俺達の肩書きの一つだった。







次回、学園編、第七節『紡がれる前奏曲プレリュード』開始します。

これにて最終節になります。

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