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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章最終節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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231.縁と緑の舞踏会⑮。異世界舞踊。

 


 俺とイザベラの『曲芸』も終わり、今はメグが全体の注目を集めている。異なる属性の魔法球を出し、それを自在に操っているのだ。魔法学園らしい演目とも言える。


 そう、メグは異なる属性を同時に生み出すところまで、魔法の精度を高めていた。

 本人曰く、まだ混ぜ合わせて使う事も出来ないし、形状も基本的な球状しか、などと謙遜していたが、その年では天才的な魔力と属性の制御だという。

 その血筋を知らない生徒も、メグには一目置くだろう。


 メグの単独公演。その間に、肉体演目の四人で休憩兼、女子のお化粧直し。俺も汗を拭っておく。

 使った木剣と木刀をルスィスさんに渡し、再び『姫桜』を腰へ。お察しの通り、この『作戦』にはエルフ王家の全面協力でお送りしています。


「ったく、打ち合わせの時にないことやっちゃって…。私もだけど」

「そうだな。メグには悪いことをした」


「メグのやつ、結構焦ってたわよ、イザベラ」

「この度はわたしが全面的に悪いので、あとで謝ります。でも、ライリーも一緒ですよ?」


 4人で謝るか、などと軽口を叩いてる内に、メグの演目は大盛況の内に幕を閉じた。

 ちらりと来賓席を見れば、ヴァイオレット様も拍手をしていた。よく見ていたのだろう。



「さぁ、皆様。我ら『若葉組』、最後にお見せするのは、今日の舞踏会に相応しき舞踊。題をつけるなら、そうですわね…『異世界』としておきましょうか?」

「「!?」」


 その演目名に、俺とナデシコが思わず目を見開いた。打ち合わせでは、題などなかったはずだが…。

 ああ、そうか、ちょっとしたイタズラだ。メグもまた、いい子なだけではない。『若葉組』の一員だな。

 挑発的な題目に驚きはしたが、よりやる気が出てきた。


 配置につく、白と黒の俺とナデシコが中心で、桃のライリー、紺のイザベラ、金色のメグがその周辺を囲う。


「それでは、異なる世界に居るのような一時をご堪能あれ」


 メグの言葉と同時に音楽が始まる。3人娘の円環の舞は、規則的であり、その色の鮮やかさから目を引きつける。

 だが、やはり魔法学園の関係者、俺とナデシコにも注目が集まっている。魔力を合わせ、高ぶらせている俺達に。


「――『天衣無法イノセント・アウトロー』」

「――『開花仙現ブルーム・ハーミット』」


 小さい呟く。ルーティンの一部になったその詠唱が終われば、変わる。

 ナデシコは髪白くなり、それと同色のツバサを生やし、俺の髪が桜色に染まる。


 色を訂正しよう。ナデシコは黒一色から、黒と白のモノクロへ。白い儀礼服と黒髪の組み合わせから、白と桜色の淡い組み合わせへ。

 会場にどよめきが起こった。今の俺達は、常識から外れた存在、それこそ異なる世界のものであると、分かりやすいだろう。


 どよめきから混乱に変わる前、ナデシコがふわりと飛び立った。

 羽ばたきもないその飛翔は、あまりにも神秘的で、舞台じみていた。


 俺とナデシコはお互いに手を伸ばす、まるで抗えない何かに引き離されるように、その手は離れた。

 ナデシコは宙に1人、たたずみ顔を覆う。俺は、ゆっくりと膝を突く。


 これは自分たちで考えた演出なのだが、縁起でもない演技である。バッドエンドは大嫌いだ。だから、ここからは大逆転。


「「「さぁ!お行きなさい!」」」


 3人娘はその場で手を上空に掲げる。

 その声に、俺は顔を上げ、立ち上がる。そして跳ぶ。

 ただの跳躍では、ナデシコの所まで届かない。だから、空中でもう一度跳ぶ。

 ナデシコの前の空中に着地。そして、ナデシコに手を差し出す。


「俺と踊ってくれますか?」

「はい、私と踊りましょう」


 2人、手を取り合う。

 そして、始まるのは、空中でのダンス。身体を密着させた三拍子と円運動の舞踊。


 会場は歓声と感嘆に包まれた。



 種明かしをすれば、ユディット先生がやっていた空中歩行の応用。

 空中ジャンプや、ナデシコの前の空間には、ライリー、イザベラが魔法で作った魔力の足場があった。

 メグは緊急事態への備えである。安全面には配慮されているのだ。


 空中での踊りは、俺とナデシコの体幹と腕力によって実現している。

 ちなみにナデシコのツバサの浮力については、ユディット先生でも解析不可だった。

 謎の力と筋力、それが演出の正体だ。ある意味、俺達らしい。


 空中で踊りながら、会場を見渡す。みんなの顔がよく見える。


 ユディット先生がエマ先生を抱き寄せながら2人で微笑む。教室でよく見た笑みだった。

 元気よく手を振るネリーと、控えめに手をふるフルリス。その笑みは良く似ていて、食卓でよく見た笑み。

 ルスィスさんを始めとするメイドエルフの皆さん。

 あっけにとられてる教師陣の中で、楽しげにしてるフレイヤさん。

 ミッドガルド家の貴賓席には、イングリットさんとヴァイオレット様。

 挨拶を交わした学園生の顔も見える。初対面であろう人々の顔も。


 そして、踊りながら、着地すれば、3人が居た。

 イザベラ、ライリー、メグ。クラスメイトであり、妹分であり、ライバル。

 彼女らは色鮮やか笑みでこちらを迎える。


 ……ああ、間もなく曲が終わる。


 メグを中心に、その両脇に俺とナデシコ。その隣に、イザベラとライリー。

 一列でメグ仕込みの優雅な礼をするはずだった俺達は、気付ば、お互いの手を握っていた。


 最初の勝負の時からそうだった。計画通りに行かない、自分勝手な集団。『若葉組』。


 曲の終わりを惜しむほど、離れががたい。でも、ここで沈んだ顔をする者は1人たりとも居ない。


 切なさなんかに邪魔させない。感動なんかで誤魔化さない。青春劇は胸を張って堂々と行うのだ。


「本日はご覧いただき…」

「「「「「ありがとう、ごさいました…!」」」」」


 故に『若葉組』生徒一同は、通る声を発した。頭を下げ、拍手を受けて、顔を上げる。もちろん、笑顔で。



 ―――ボシュッ!


 その瞬間、聞き慣れない音が鳴った。俺達に向けられた拍手も一旦止まり、その音のした方、大階段の踊り場に数多くの視線が吸い寄せられる。


「……ありがとう、『若葉組』生徒の諸君。…次は、『若葉組』教師の番だ」


 ユディット先生の褒めるような笑み。つまり、ここからは『作戦』第二段階だ。



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