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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章最終節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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229.縁と緑の舞踏会⑬。千年愛歌、世界樹の調べ。

 


 舞踏会が始まって二時間ほど経った頃だろう。

 用意された椅子で休む人も出てきて、踊るスペースが広くなり、演奏者も何度目かの交代を経ていた。


 そんな交代の合間、ユディット先生からの目配せがあった俺達は、中央付近で集合していた。

 目立つ集団だったお陰だろう。誰もが遠巻きにして話しかけてくるものは居なかった。


「まぁ、話しかけてこないのは、私もヤマトも、知り合い以外からのお誘いを蹴りまくったからでしょうけど」

「社交界としては見事な落第点ですわね」

「あたしでも初対面の子とも踊ったわよ?」

「なるべく猫被って、断ってるんだけどな」

「そう言えば…兄上は語尾にニャンが好きでしたね」


 いや、そう言う猫ではない。というか未だに根に持ってたのか、イザベラ。

 出会った初日のやり取りを思い出し、冷や汗をかく。違うって、あれはツッコミ待ちだったんだって。


 などと、身内で固まって話して居ると、ユディット先生が何度目かになる登壇をした。


「……諸君、舞踏会を楽しんで居るだろうか。…ここで、ユグドラシル王家より、諸君らに贈り物がある。…それは…」

「はーい!わたし、先代女王コルネリア・ユグドラシルの歌でーす!」


 ユディット先生の言葉に割り込んで、ステージ、否、大階段の踊り場に登場したのはネリー。

 大人しかったのが嘘のような、はしゃぎっぷりだ。


 会場に異変が起きたのは同時だった。学園生が、走りはしないまでも、足早にその近くにと、歩んでいった。

 先ほどから、休んでいた生徒も立ち上がって、だ。


「人の集まり方が、話に聞いてた以上だな」

「王都においてネリーさんの歌は、ある種の伝説なのよ、兄貴。

 披露するって分かれば、近くで聞きたいってのが、王都市民の共通認識よ」


 俺達も聞かされた、ネリーの過去の話。それは王都の市民にとってもなじみ深いものであるらしい。

 無論、伝わる話はネリーの主観や、その時当人同士が言ったことなどは大幅に削られているらしいが、建国神話のようなものであり、古き恋物語でもあるのだ。


「と、言っても、王都で企画される子供が大勢参加される催しでは、積極的に参加されています。

 その場で歌ったりしているので、初めて聞くというの人物は少ないのですが」


 イザベラからの補足が入った。母性が強いエピソードに余念がないな、ネリー。

 よく見れば、友人らしき人を引っ張ってる生徒もいる。王都外の学園生を誘ってる王都出身者、という構図か。


「では、わたくし達はここで中央を確保し、待機しつつ、コルネリア様の歌が終わり次第…」

「ブチかますわけね!」

「…お姉様は、歌を聴いて気を落ち着かせるべきですわ」


 メグに窘められてるナデシコ。お祭り騒ぎが好きなナデシコは今から高ぶってるらしい。


「はーい!みんなー集まってー!初めましての子も居るから、王都の定番の歌を歌うよー!市民楽団みんなー!よろしく!」


 テンションが高いのは、ネリーもだった。

 そのノリは先代女王というか、どちらかというと歌のお姉さんに近い。


「~~♪」


 だが、歌が始まるとまたもや印象は一変した。

 既知の感覚、言葉は分からない。なのに、その歌の意味は伝わってくる。


 ―――出会いの喜び、思いが通じ合うことの楽しさ、自分が変わって行くことの怖さ、それを受け入れることの勇気。そして、それらを全て愛しているという、ひたむきな思い。


 洗練された旋律だった。

 以前はアカペラ、外で唐突に聞かされたものだった。

 だが今、大講堂という室内で、演奏付きでその歌を聴くと、より響いてくるものがあった。


 ―――寂しい。会いたい。でも、心の中でまた会える。だから、立ち上がれる。前を向ける。


 いや、それだけではないな。この歌に、深く共感している自分がいる。

 おしゃべりをしていた俺達は、もはや誰もが黙って、その歌を聴いている。

 そして、以前は聞けなかった曲の続き。



 ―――出会ってくれて、ありがとう。



 それは、ネリーにとって最愛の夫との歌であり、家族との歌であり、友達との歌でもあるのだろう。

 だが、その出会いを感謝する歌は、出会いを愛する歌は、誰との出会いであろうと、そこに愛があるのなら、当てはまるものかもしれない。


 恩師や、クラスメイト、恋人にも。敬愛、友愛、恋愛。

 親愛だっていい。身近な人に、どうしようもなく感謝を送りたくなる。それを歌に乗せたのだ。


 それは千年だって超える程の愛歌ラブソングだった。


『世界樹の調べ』。エルフが歌うその旋律を、俺は生涯忘れない。



 曲は終わり、会場には壮大な拍手と共に、すすり泣く声も混じっていた。

 中には、友達に支えてもらってる子まで居た。


「あれー?みんな、泣いてない?大丈夫?

 だったら、楽しい歌を……って、思ったけど、わたしの友達にお任せしちゃおうかな?

 というわけで、ユディットちゃんの担当クラス『若葉組』のみんなー!後はよろしくねー!」


 ネリーは集まった視線をまとめて、こちらに寄越した。

 だからその時、ネリーと似た表情に見えたユディット先生を俺達だけが確認出来た。

 言葉にするなら、


『……やってしまえ』


 と言ったところか。上等だ。作戦、決行!



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