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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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224.縁と緑の舞踏会⑧。高貴な付き合い。

 


 ルスィスさんのゼリーを食べた俺の嗅覚に飛び込んできたのは、オレンジとグレープフルーツ。

 ラケルで見つけ、こちらに世界にもある、柑橘系の果実が使われている。

 中にあるだ。


「…なんて豊かな香り、そして、爽やかな甘み……」

「使用した果肉はグレープフルーツ、ゼリー液にはオレンジの果汁を混ぜ込んでいます。そこに砂糖で味を整えました」


 呟いた感想に、ルスィスさんが応えた。改めて、良く味わう。

 控えめな甘みの中に柑橘系の酸味、そして果肉と頬張れば苦みも感じる。

 それらはうまく重なり合い、一つの器にまとめられている。


 故に、疑問が残る。オレンジとグレープフルーツ、香りが強いのは後者だ。

 だと言うのに、俺は一目見た段階では、オレンジゼリーと断じてしまった程に、オレンジの香りが豊かだ。

 量の問題か?それも違う。グレープフルーツの果肉はたっぷり入ってる。


 食べ進める。甘さも程よく、冷えていてのどごしも心地いい。そして、器の縁に当たった。その感触は、柔らかい。


「オレンジの皮を器に使ったのか…!」

「はい。陶器の内側に、オレンジの皮が敷き詰められています。硝子の器も候補に入りましたが、驚きを提供したく、この器を選択致しました」


 いや、利点はそれだけじゃ無い。皮が天然の香料になっている。

 そうか。だから、『一口一口、ゆっくりと』なんだ。皮を誤って食べたりしないように…!



「ふふっ、ルスィスったら楽しそう。ヤマトさんに気付いてもらえて、嬉しいのかしら?」

「それにしても、たまに二人がお家で作ったりしてたけど、なんだがこのゼリーは透き通ってるね」


 両隣のフルリスもネリーも食べている。

 そして、ネリーの発言で気付いた。このゼリー、俺達の世界の品のように透き通っていてるのだ。

 どちらかというと、この透き通ったゼリーこそ見慣れたものである。

 ゼリーが透き通る…つまり……


「ルスィスさん、『砂糖』にも一工夫、加えてるな?」

「…見抜かれましたか。より、ゼリーに合う『砂糖』を探し、製法を調べたのです。より雑味が無く、加えても濁らない砂糖を求めて。

 そして、煮詰めたシロップから一番最初に取り出される、最も純度の高い結晶、それのみを使用し完成させました」

「やはり、『グラニュー糖』か!」

「そちらの…地方では、そう呼ぶのですね。恐らく、間違いないかと思います」


 グラニュー糖は、砂糖の製造過程で最初に抽出された純度が高い結晶を乾燥させて作る、非常に純度の高い砂糖だ。

 雑味がなくクリアな透明度とフルーツ本来の風味を引き立てるゼリーに仕上るのに、普通の砂糖より優れている。

 ゼリーに合う砂糖から逆算し、グラニュー糖にたどり着いたのか…。


「お見事。うまかったよ。ゼリーに関しては右に出るものなしだな」

「もったいなきお言葉です」


 ルスィスさんは深く頭を下げた。顔を上げたとき、その顔はどこか満足そうだった。

 ふと、眼下を見れば、ゼリーを提供しているテーブルには人だかりが出来ていた。

 女生徒同士で、喧嘩にはなって居ないようだが、常に人が絶えないスペースになりそうだった。



 エルフの貴賓席で過ごして、しばらく時間がたった。

 雑談しつつ、メイドさん達が時折運んでくる料理を両隣の二人と分けたりしていた。

 その内、会場内でも人の動きが固まりつつある。そろそろ、皆と合流出来るだろうか?

 そんなことを思っていると、ユディット先生がやって来た。


「あ、ユディットちゃーん!」

「お母様?学園では学園長を付けた方がいいのでは?」

「……いや、構わないよ。…この貴賓席はある程度、音を遮断する作用があるから、ね?

 …二人は気を楽にして、楽しんで欲しい」


 挨拶の時の堅苦しい態度ではなく、いつもの親子の会話だった。そして、ユディット先生は俺に目を向け、しばし考え込んだ。


「……そして、ヤマトくん、キミは……ワタシの想定以上に、面白い事になるのが得意なようだ」


 発言の意味を考える。今の俺の状況を整理しよう。

 両隣にエルフ王家の美人母娘を侍らせ、エルフメイドさん達から尽くされている。


 ハーレム系主人公の様だった。


「……キミの時間はあるようだ。…ナデシコくんを呼んでこよう」

「待ってください誤解です」


 俺は立ち上がった。このままでは、最終日に学園追放ものになってしまう。断罪イベントは無いっていったじゃないですか…!


「……キミこそ、誤解している、よ?……ヤマトくんとナデシコくんに、挨拶したいと先方が言っていてね」

「先方?」

「……このエルフの貴賓席のメンバーは、名実ともにワタシの身内だが、『あちら』は、取引相手、でもあるのでね。…なにより、生徒の親には可能な限り丁寧な対応を心がけているつもりだ」


『あちら』、そう言ったユディット先生の視線の先には、対面のバルコニーがある。

 つまり、王家の貴賓席だ。そして、中に居るのは……


「メグの親が、俺達に?」

「……だ、そうだ。…念のため、聞くが、いいか、な?」

「ナデシコがいいなら、俺は大丈夫だ」

「……助かる、よ。…すこし、ここで待っていてくれ」

「ああ、分かった」


 人間側の王家には興味があまりないが、メグの親は見て見たい気がする。

 それに、高貴な付き合いは今更だ。こちとら、女王陛下と一つ屋根の下にいる異世界人だ。

 でも、まぁ、念のために…。


「なぁ、二人とも、今更だけど礼儀作法とか教えて貰っていいか?」

「いいよー。ホントに今更だね!」

「確かに、今更ですね?」


 王妃に会うために、女王陛下にマナーを習う。奇妙な話だった。



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