表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
230/235

221.縁と緑の舞踏会⑤。いざ会場へ。

 


 この日、学園は舞踏会に舞い上がっていた。



 大規模になった交流会は、例年に見ない程の人が関わっている。

 主催者側である高等部生も想定しえなかったことであり、参加者側の中等部生も都市をあげてのイベントになったことに戸惑っていた。


 しかし、開催日が近づくにつれ、戸惑いは高揚になり、熱となって学園を波及していった。



 中でも、貸し衣装が学園にやって来た日は、学園史を紐解いても、もっとも多くの黄色い声が上がった日だろう。


 学園に備え付けられた大ホール。高等部と中等部の中間地点。

 学園生全員を収容してもあまりある、卒業式や入学式の開催場所。

 そこに、花園に咲き誇る花の如く並べられたドレス達。


 その着数は中等部、高等部の総数より、なお多い。

 王都の大商人のコネと、王都の伝説的英雄の声かけにより集まられた数は、王や王家でもとても所有しきれまい。

 文字通り一堂に会するその様相、涙を流す生徒までいたという。


 その日、演習場も図書館棟も設立以来、学園生の最低人数を更新した。


 ある生徒はもっとも煌びやかドレスを求め、ある生徒はもっとも自分に似合うドレスを、自分の好きな色を、思い人が好きな色を、心引かれる形を、ただただ美しいと思った形を、皆が求めた。


 その日を指して、ユディット先生曰く、

「……あの日は、ワタシが通りかかっても、誰もこちらを見なかった、よ。…教職員もいたようだが…まぁ、いいだろう…」

 とのこと。さしもの英雄も、乙女の夢、千着を超えるクローゼットには一歩及ばなかった模様。



 さらに、貸し衣装に満足出来なかったものには、そのまま呉服店に駆けるものも居た。

 昨年のものや、春のお披露目に使われたドレス、お下がりなどの手直しの依頼も乱れ飛んだ。


 春のお披露目が落ち着いたこの時期に、大量の発注を受けたお針子の悲鳴が連日木霊したとか、しなかったとか。


 これまで春のお披露目、秋の収穫祭、冬の年始祭が主だった王都のドレス市場に、サマードレスという、新たな概念も誕生したという。


 また、この特需に対して、商人達は一致団結して、新商品の提案や発表、平行して割引を実施。

 のちのサマーバーゲンである、のかもしれない。



 そして、熱狂の当日。

 扉一枚の向こうには、その会場が広がっている。

 扉の前に集ったのは、『若葉組』全員。


「とんでもない魔力ね」

「ああ、心の状態が魔力に関係あるって言うのが実感できるな」


 俺とナデシコは、最後尾で隣り合っている。


 この数だと流石に魔力の詳細までは分からない。

 事前の知識込みで察するに、正面大ホール一面に学園生、右手バルコニーにエルフ王家、左手バルコニーに人間側の王家だろう。

 それぞれ、魔力がバラバラ、不自然な空白地帯、特異な魔力がいくつか、そんな感じだ。


「どうしたのよ、イザベラ?妙に緊張して」

「…母上が来ています。恐らく、職務として…」

「奇遇ですわね。わたくしのお母様も、いらっしゃいますわ」


 リラックスしてるライリーに対して、イザベラとメグの二人はガチガチだ。

 三人とも、それぞれのドレスのリボンを髪を編み込み、薄い化粧をしてる。

 可愛らしい三人だが、今は美人だ。声でも掛けるか、と思っていると…。


「二人とも大変ね。…でも、気合い入れなさい、今日がどんな日か忘れたの?」

「…忘れるものですか。ええ、忘れませんとも。…ですが、礼を言いますわ、ライリー」

「そうですね。…今日は、ずっと楽しく笑って、忘れられない日にします」


 3人娘に、グッと力が入ったのが分かった。そして、三人はこちらを向くと、笑った。

 …三人に声掛けは不要だな。だから、ナデシコと笑みを返す。それが十分な返答になったようだ。


 2ヶ月。共に過ごした時間の間にも、彼女達は成長している。うかうかしてると追い抜かれそうだ。

 ワルツを踊る子犬や子猫では無い、華麗なる少女達。

 彼女らの親愛に応えられるような成長の道を俺も歩みたい。ナデシコと共に。



「……さぁ、ワタシの自慢の生徒達、気楽にいこう。

 …二つの世界を知るキミ達にとって、今日の会場はその半分の、そのまた一部だ、よ?」

「私も卒業式の日は、学園主席として全学園生の前に立ちました。とても緊張しましたが、思い返せばいい思い出です。…さぁ、皆さん、思い出を作りましょう!」


「「「「「はいっ!」」」」」


 ユディット先生とエマ先生からの期待が掛かる。応える声は、はっきりと、大きくなった。

 一つの世界だけでは、出会えなかった恩師。導かれ、教えられた。


 今は少々照れくさいが、いつか、あなた達が恩師だ、と言えるようになりたい。

 この台詞は再開の時までとっておこう。さながらタイムカプセルのように、今は閉じ込める。



「……ちなみに、例の作戦に変更はないから、そのつもりで、ね?」


 何やら不穏なことを言うユディット先生に、俺達生徒一同は…


「勿論!……ちょっと恥ずかしいけど…まぁ、いい思い出よね!」

「俺も覚悟決めなきゃな…!」

「やり遂げましょう!兄上!」

「なんとかなるでしょ!」

「このクラス、ストッパー不足にも程がありますわね…。と言いつつ、わたくしも今日は加担側ですわ!」


 改めて気合いを入れていた。


「……女神様、どうか今日この日が、悪い意味で伝説になりませんように……」


 エマ先生の祈りは、無事届くだろうか。乞うご期待。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ