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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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215.素のままで。うさぎはたぬき。

 


 少々、フルリスからネリーへの説教の時間があった後、


「お二人とも、母が申し訳ありません。……お母様?」

「はい…ごめんなさーい…」


 俺達は久しぶりにフルリスの女王の威厳というのものを感じていた。

 先代の方が情けなさ過ぎるので、その比較の要素が無いとは言い切れないのが悲しい所だ。


 ネリーは、シュンとしてイタズラをして怒られた子猫ようだった。


「嫌いにならないでね?」


 そして、小首を傾げてウインク一つ。フルリスはそんな母親にため息一つ。

 態度について、訂正しよう。愛嬌満点、反省減点だった。


「はぁー、ったく、今更なれねぇよ」

「今まで上げてた好感度に助けられたわね、ネリー」

「わーい!」

「あまり甘やかさないでくださいね?」


 何回目か分からないけど、どっちが親なんだか…。


「じゃあ、残り一ヶ月の家庭教師で反省を示す、ってことで」

「今更かしこまられても対応に困るんだが?」

「え?いつも通りだよ?」

「ならいっか」

「いいのですか…」


 ネリーは俺達にとって、教師や友人の母というより、愉快な同居人と言った方がしっくりくる。

 反省顔の方が困るのだ。


「今度、是非我が居城にお越しください。

 この一ヶ月、私も学園からの交流会の他、大きな行事もありませんので、お二人の予定がよろしいときにでも。

 いらっしゃった際には心ばかりのおもてなしを致しますね?」


 フルリスは、母の態度を挽回するように少し、よそ行きの顔で笑う。

 もっと自然に接してくれてもいいのだが、一人前の以上の女王様には、崩せぬ一線というのものがあるのだろう。


 それでも、随分と素の顔を見せてくれているのだろう。

 しかし、ネリーのように、元気いっぱいに笑うところも見て見たいとも思った。


「あ、思い出した!ちょっと待ってって!」

「ナデシコさん…?」

「なにかな?」


 ナデシコは戸惑うフルリスとネリー置いて、駆け足で自分の部屋に向かった。

 ああ、そう言えば、『アレ』があったな。ルスィスさんに情報を聞いて、俺も手伝って完成させたものが。

 俺が思い出している間に、ナデシコはあっという間に戻って来た。


「じゃーん!」

「「これは……」」

「ポンちゃん五世!うさぎのぬいぐるみよ!」


 ナデシコが差し出したのは、自作ポンちゃんシリーズ第二弾だった。

 姿は緑の蝶ネクタイを着けたデフォルメされたうさぎだ。ロップイヤーはナデシコの趣味。


 身体の大半を占める白い布はタオル生地ことパイル生地を使いっている。

 鼻や口、耳の中は桃色の糸で刺繍を施し、目はワインレッドに輝く天然の貝ボタンを使用した。

 また、こちらの世界では高級品の羊毛の綿も使ってるのでふかふかだ。

 ちなみに蝶ネクタイは既製品。

 緑の物が数多く存在する、『緑』のユディットのお膝元、王都の品だ。


 タオルはナデシコと俺ので未使用品を『取り寄せバックパック』から取り出したもの。

 他は乗り合い馬車で出会った服屋経営老婦人のデライラさんから譲って貰った。


 詳細、特に渡す相手は伏せたが、ぬいぐるみを作ること話し、俺達の世界のタオルを見せた時、目の色が一瞬変わった。商気を感知した商人の目だった。


 こだわりの素材は相応の値段は覚悟していたが、デライラさんたっての希望でタオル一枚と交換で入手した。

 料理以外の技術流出は、出来るだけ避けているが、多少は見逃して貰いたい。



「…………ポンちゃん、五世……ふわふわ……」

「わー、かわいいね!」


 恐る恐る受け取った、フルリスはうわごとのように少しマヌケな名前を呟き、手触りを堪能している。

 ネリーも隣で見て、目を輝かせている。


 うさぎなのに、ポンちゃん?などと疑問に思うのも無理は無い。

 ナデシコ曰く、うさぎが大好きな女の子と仲良くなるため、完全にうさぎに化けたポンちゃん兄弟の新顔らしい。複雑な身の上だ。あと兄弟ってことは男なのか。


 うさぎ好きは、俺達がこちらの世界で初めて米を食べた日にナデシコがルスィスさんに質問して、入手した情報である。



「……!…あ、あの…ありがとうごさいました…触らせて頂いて…」


 夢中で撫でていたフルリスが、少し震えながら、こちらに名残惜しそうに差し出して来た。


「え?その子、私達からの、フルリスにプレゼントだけど?」

「ああ、献上品の米を譲って貰ったお礼と、それから親愛の品だな。二人で作ったんだ」

「ちなみに名前は変えていいからね?」


 今でこそ、ユディット先生にまとまった量を譲ってもらったが、あの時の俺達にとってはあの米は、干天の慈雨であった。実際泣いたし。


 ナデシコの思いつきで始まったお返し計画。

 ネリーに隠れつつしていた作業は、ユディット先生との決戦後、王都を出るかもしれないと思っていたので、すでに仕上げていた。


「ふたりがコソコソしてる時、この子を作ってたんだね。……てっきり『仲良し』なことしてると思って、邪魔しないよう覗かず、気配もわかりやすくして別の部屋に居たのに…」


 ネリーは少し残念そうだった。

 余計なお世話だ。それに、どんな『仲良し』だよ、とかツッコミは居れないぞ。


「……こ、この子が…わ、たしの……」


 ネリーの発言も耳に入らない様子で、フルリスはポンちゃん改めて、五世と向かい合っている。

 そして、その目から一筋の涙が零れた。


「こ、これは……ディンプル表現か…!」


 直訳すると「二形性表現」という意味で、「心の中で起きている感情」と「実際に表に出る身体的・表情の表現」が、真逆、矛盾した状態で現れる現象を指すのだ。

 まぁ、分かり安く言うと……。


「かわいすぎて泣いちゃった…ってコト!?」


 ナデシコの言うとおりである。


 俺達の戸惑いを余所に、ネリーはフルリスに寄り添い、そっと涙を拭って、その頭を撫でた。


「フルリスちゃん、よかったね…」

「うんっ!……はっ!いえ!そうですね!嬉しく思います!」


 返事の際の無垢な表情を見た時、改めて似たもの親子だな、と思ったのだった。



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