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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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214.親。子。

 


 あの後、誤解を解き、ルスィスさんに護衛の皆さんの分のお弁当を渡すと、いつのまにか消えていた。

 丁寧なお礼と、失礼しました、という挨拶はあったのだが、目を反らした隙にというやつだ。


「相変わらず、かなり気合い入れないと魔力が探れないわね」

「それでもうっすら、方向だけって感じだな」


 ナデシコもすっかり落ち着きを取り戻した。今はネリーの頬を弄って復讐している。フルリスもこれについては咎める様子もない。日頃の行いが伺いしれる。


「ふかふぃから、ふぃようなふぉだったかふぁねー」

「昔から器用な子だったからね、とお母様は仰っています。…確かに、私にとってはもう一人の姉のような存在ですね」


 今のフルリスの言葉に外のルスィスさんの魔力が乱れ、少しだけ離れたのが分かった。


「あのレベルの人でも動揺は魔力に出るから不思議だな」

「ふぁぁ、ふぁりょくはふぉふぉろとふふぁくふにゃがふぇるふぁらねー」

 まぁ、魔力は心と深く繋がってるからね、だろうか。


「なんとなくその感覚はあるけど、そこまでかしら?」


 ネリーの言葉に、ナデシコも頬から手を離して、質問した。


「うん。心は魔力に影響を与え、逆もまたしかり、だね」

「その言葉も元を正せば、始祖王の言葉から来ていると言われています」


 俺達にとって魔力はこの世界に来てから、強く感じるようになった存在だが、この世界の住人に取ってはそれこそ生まれる前から存在した空気の一部みたいな物だ。


 例えるなら水分に近いか。

 自覚はしないが、空気中にも体内にも含まれる一般的な成分。

 水分不足や、逆に過剰に摂取しても体調を崩す。



「わたしが女王を引退した理由もそれだしね」


 あくまで軽い調子のネリーに、俺とナデシコは少し押し黙る。


「……それ、聞いて大丈夫なやつか?」

「…無理に話す事ないのよ?」

「大丈夫だよ?むしろ聞きづらいことだからこっちから話そうかなーって思ってたの」

「……お母様…」


 フルリスも、テーブルの上に置いたネリー手に自分の手を重ねた。フルリスは笑顔だ。

 実は、察しは着いている。


「もう分かっちゃってるみたいだし簡単に言うと、エサルカくんと毎日話せなくなって、わたしはすっかり参ってしまったのです。…ちょっと立てなくて、ご飯も食べれないくらいだったの」


 起き上がれもしない、食事も食べれないネリー。今の様子からは想像も着かない。

 それは、子供達やネリーを慕う人達からみたら、どれだけ心をえぐる光景だっただろう。


「見かねたフルリスちゃんが王位を継ぐって言ってくれたの。

 フルリスちゃんは兄妹の中で世界樹の魔力と相性抜群だったからね。

 黒竜討伐後に生まれたフルリスちゃんは、平和の象徴とも呼ばれて、人気もバッチリ!

 わたしを慕ってた討伐前から生きているエルフのみんなも、わたしにそっくりだったフルリスちゃんを可愛がってたしね」


 話すネリーはあくまでも明るい。

 皆から、自らも、フルリスは望まれた女王なのだろう。


「戴冠式は凄かったよ。王都中がお祭り騒ぎ。わたしが寝てる部屋にも響いたくらいの歓声。

 その時、わたしは声出せなかったから、歓声の一部にもなれなかったんだけどね」


 だが、声なきネリーはどう思った?


「そこから、ここままじゃダメだな、って。せめて先代女王として支え無きゃ、って。

 女王の勤めを頑張ってたフルリスちゃんに比べたら、ちょっとだけ頑張って、起きれるようになったの」


 これから女王として努める子供を心配して、死の淵から気力でよじ登ったのだろう。この母親は。

 それも魔力?……いや、違うな、俺達の世界にもある力だ。


「…それは愛、ね」


 俺と同じ答えにたどり着いたナデシコが、そう呟いた。


「うん、わたしは子供達を愛してます。一度、手放しそうになった情けないお母さん、だけどね……ふぃたい」

「…まったく、痛い、など泣き言は聞きません。女王命令です。…いつまでも、どうか元気でいてくださいね。お母様…」

「……ふぁーい」


 頬をつねられたネリーは、女王の仰せを拝命していた。



「というわけで、今はすっかり一人前以上の女王陛下になったフルリスちゃんに、教えられる事も無くなったの。

 そして、各地を旅する元女王として、フルリスちゃんやエサルカくんに聞かせてあげたい各地の話を集めることを趣味にするくらい、元気になりましたとさ」

「時折、お姉様のお使いもしてますよね」

「うん。各都市のギルドに、お手紙届けたり、逆に預かったりね」


 しばらくして、解放されたネリーは頬を押さえながら、現状の告白をした。


 それ密偵行為では?

 この世界にスパイの概念があるか分からないが、ただ遊び歩いてるわけではないようだ。

 またネリーに属性が増えたな。もう数えないぞ。



「というわけで、ヤマトくん!ナデシコちゃん!」

「なんだ?」 「なによ?」


 俺達の手をがっちり掴んだネリーは、目を輝かせている。


「二人も子供を作ろう!」


 それは見事なマタニティハラスメントだった。


「「…………はっ!」」


 あまりの直接的表現にナデシコと二人、意識がどっかに行っていた。そうか、夢か。


「今より何倍も強くなれるよ!人間的に!そして、子育て談義をしよー!…んー!!!」

「お母様……お静かに」


 フルリスに物理的お口にチャックを貰ったネリーは暴れていた。


 もう、どう突っ込んだらいいか分かんないよ……。



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