210.光明。世界最高難度の課題。
「……今年は、黒竜討伐戦より500年。節目の年だ。…我々『七天将星』は、100年に一度集い、禁足地、旧エルフ国『 ルグス』に赴く。…目的は現地調査、及び禁足地の魔物の殲滅」
それが、たまたま今年…?確かに、運命じみている。
「…正確には、殲滅と言いつつ、調査の際に遭遇したものを倒すのみだが、お題目は大切だ。
…この活動を支援する各都市の代表者には、秘密だ、よ?」
「お姉様?」
「……フルリスには、隠しても分かってしまうだろうから、言ったまでさ」
ホントにうっかりじゃないよな?
「前回だったら集合場所は王都だったのにねー」
「ネリー、集合場所って?」
「決起集会、というか、お披露目?
『七天将星』のみんなが禁足地に向かう前に、一つの都市に集って会議をするの」
主要国首脳会議みたいなものか?
国、いや都市か、その重要人物が一つの都市に集い、会議を行う。俺達の世界でもやってたな。
興味が無くても、ニュースで見るような重要イベントだ。
「……ワタシとアーテナイ、ロニアとラケル。…二つの都市は比較的近いので、顔を合わせる機会もあるが、他の都市間だと行き来にも一苦労、近況報告も兼ねて集まるように決めたのさ」
「お披露目、ってのは?」
「………最終日、その都市の最も大きい会場で、我らは見世物になる…」
ユディット先生の顔には、分かりやすく『めんどくさい』と書いてあった。
自由人でもマイペースでも、断れない集いのようだ。
「でも、ここだけの話、都市の収益としては凄く儲かったよ。
町はお祭り騒ぎだし、観光目的の来訪者の財布の紐は緩くなるし。
記念商品ってだけで、じゃんじゃん売れるしねー」
「お母様……」
あっけらかんと言うネリーに、フルリスはあきれ顔。
周囲にとっては、オリンピックやワールドカップのノリなのか。
「まぁ、経済効果の話は置いといて、『七天将星』の禁足地調査の後にしろってことだな」
「道中の安全が確保されてから、遺跡調査ね」
先走るなということだな。
ユディット先生が出した条件、生き延びること考える、とは…。
「……いや、違うが?」
違った。
「……そもそも、古代遺跡や扉の存在、及び始祖王の遺産である『セックヴァベク』を知っているのは、この場を除けば『七天将星』の筆頭、紫のアルジーヌのみだ。
…第一、アーテナイが知っていれば、キミ達に話すか、隠すかしていただろう。…そして、アーテナイの隠し事は、比較的わかりやすい」
アーテナイは一貫して心当たりが無い、という話だった。その発言に嘘は無いように思えた。
というか、冗談や照れ隠し以外で嘘を付かれたことは、あったのだろうか?
基本的に信用していたので、疑いの目で見てなかったのが俺とナデシコである。
「……故に、これまで、古代遺跡は調査から外れていた。
…だが、今回の調査、古代遺跡を対象とするつもりだ。…そこに、キミ達も同行したまえ」
「同行していいの?」
「アーテナイは、事情を話せば許してくれると思うが…」
残り5人、客観的に見て怪しさ別世界級の俺達の同行を許可してくれるだろうか?
「……そこで、キミ達に新たな課題を出そう。
…『七天将星』の全員から、同行許可を取り付ること。…それが新たな課題だ。
…ワタシを含め7人に、その実力を認めさせた上で、ね?」
7人。それぞれに色を冠する彼らは、この世界の英雄であり、生ける伝説。
伝説と対峙し、認めさせる。同行者として。もしくは、戦力として。
「許可が取れたら、一緒に遺跡調査をしてくれる、ってこと?」
「……前提として、『セックヴァベク』の調査の際、何がおこるか分からない。故に、ワタシも同行しておきたい。
…加えて、魔物脅威度を示した話は、真実ではあるのだ。しかし、我らが揃えば、敵では無い。
…そもそも、禁足地の『奴ら』の生態は……いや、これはまた別の機会にしよう」
禁足地の魔物の話は蛇足になるのか、ユディット先生は言葉を切った。
生態的な理由で、なにか明確な攻略法があるのかもしれないな。
「……始祖王の遺産に頼るつもりは無かったが、ワタシが一から魔法を編んだのでは、キミ達の寿命が持つまい。…遺憾ではあるが、頼らざるおえない、ね」
ユディット先生は、遠くを見る。
フルリスに話さなかった理由の一つに、尋常の力ではないものに頼ることをよしとしない旨を語った。
それに加え、遺産は母親が故郷に帰れなくなった遠因でもあるのだ。
『セックヴァベク』の事を、良く思っているはずもないか。
「…たった一度、頼るなら、別世界からの人さらい対策というのは、丁度いい。
…なに、本音を言えば、好奇心はあったのだ。…キミ達は、いいきっかけになった。礼を言おう」
ユディット先生は、遠くからこちらに視線を移し、笑いかけた。
アーテナイの隠し事は比較的わかりやすい、か。
俺に言わせれば、先生も時々だが、結構わかりやすい時もある。
「こちらこそ、ありがとう、先生」
「ありがとうございます、先生」
ユディット先生の気にするな、と書いてある笑みに、ごめんなさい、と頭を下げて目を反らすのは、不誠実な気がした。
だから、お礼を返す。返しきれない恩にせめて、誠実であるように。
「……さて、では改めて…『緑』としてではなく、ロニア魔法学園の学園長、キミ達の担任教師『若葉組』のユディットとして問おう。
…『七天将星』の全員から認められる。…それは紛れもなく偉業。これ以上の課題はあるまい。
…それでも、挑むか、な?」
随分と挑発してくれる。課題の難度は段違いだが、森林探索の時の確認を思い出していた。
「上等!その課題、受けた!」
「もちろん!全力で全員と勝負して認めさせてやるわ!」
俺とナデシコは吠える。何が待つか分からない、この先に向けて。
「……いや、なにも必ず勝負するとは限らない、よ?」
「「?」」
てっきり、全員と戦え、みたいなことだと思ったが、違ったか?




