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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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209.転移。禁足地の魔物。

 


「……始祖王は、まず間違いなく、転移や転送といった魔法体系を持っていた」


 そんな語りから始まった始祖王の話。


 根拠となるのは、先ほどもあった、手記の記録。


 セザール王は扉をくぐると、見たことも無い空間に『飛ばされた』。

 そこには宙に書架が並び、視界に満ちるは用途の検討も着かない道具。

 まるでこの世のどこでも無い、そう感じたと記されていた。


 それから長い間歩き、見て回り、書を手に取ろうにも届かず、困り果て、望みを口にした。

 すると、知らない知識が頭に流れ込み、意識を失った後、気がつけば扉の前に戻っていたという。


 そして、臣下は口にした。王は瞬きの隙に帰還なされた、と。



「ちょっとまって…その現象って…!」

「……そう、キミ達の『取り寄せバックパック』、だったかな?…そこから時計を取り出したとき…」

「時間は進んじゃいなかった…!」


 奇妙な共通点。異世界から来た俺達と、どこかに飛ばされたセザール王。

 時間の流れが異なる空間。異空間とも形容すべき場所。


 そこに移動する技術は、転移や転送と呼べるものではないだろうか。


「……キミ達が、招かれたのか、送られたのか、呼び出されたのか、移動させられたのか、思考の上でも答えは出ない。…だが、無関係ではあるまい。…尋常の力ではない、という点についても。

 …そして、これが妄想の産物で無いことは、母上とかつてのエルフの民が証明している。

 …これが一つ目の根拠」


 ネリーが帰国できなかったこと。

 そして、逃げ出さなかったエルフの民の異常な様子。決まりを守っていたのではなく、『禁ずる』ことを強制されていた、のだろうか。

 どちらも、既存魔法というには当てはまらない。


 言葉を換えるなら、『次元』が違う。



「それから、もう一つあるよ。別世界や異世界って、考え方が無かったから最近気付いたの事がね。

 普通、エルフのみんなが亡くなったとき、『還った』って表現するの。森の中で生きたエルフは森に還る、って。


 多分、わたしが生まれるよりずっと前、それこそ始祖王の時代にもこの『還った』って表現は使われてるはずなの。

 でも、旧エルフ国『 ルグス』にあった王墓、歴代の王の慰霊碑ね。

 そこには、歴代の王が『偉大なる王、母なる森へ還る』って碑文が刻まれる中で唯一、始祖王だけ『始祖なる王カアル、久遠の理想郷へ旅立つ』って刻まれてたの」


 ネリーもユディット先生に続いた。

 追加の情報、それもまた、転移を示唆しているようにも感じる。



「……なるほど、確かに『異世界の手掛かり』だわ」

「魔力不足の頭には、ちょっぴり重い情報だな」


 そうは言っても、普段通り頭は働いている。嘘や騙りは、恐らく無い。

 あるとすれば、読み違いか…勘違い…。いや、これまで考慮すると、話が進まない。


 お茶と一緒に、飲み込むのが精一杯だ。後でノートにでもまとめよう。



 簡潔にまとめると、

『異世界の手掛かり』は、『始祖王カアル』の宝物庫『セックヴァベク』に納められている。

 そこへ通じる扉は、旧エルフ国『 ルグス』のどこかにある。そう、今は禁足地の…………ん?



「あの、一つ、いいですか?お姉様。

 ……『セックヴァベク』へ通じる扉は、黒竜が暴れた『 ルグス』に今も、残っているのですか?」



 フルリスの言うとおりだった。俺とナデシコは同時にお茶を飲む動きが止まった。そのまま、コップを置き、ユディット先生の方を見る。


 ま、まさか、ね…?ここまで話して、昔はあったそうな、的なオチじゃないよ、ね?


「……焦ることは無い。…この目で確認しているよ、500年前だが。…扉と言っても、古代遺跡の一部なのさ。

 …じっくり調査しておきたかったが、ご存じの通り、気軽に立ち入れなくなってしまって、ね。

 …500年間塩漬けにしていた案件だ」


 500年間の塩漬け案件って、もはや化石じゃねぇか。日本だと戦国時代だ。


「ねぇ、ちなみに、さ。…もし私とヤマトが禁足地に行ったら探索出来ると思う?」

 ナデシコは意を決して聞いた。


「……なんとか、トンボ帰りは出来るだろう」

「それ出来るって言わない…!」


 そう言えば、『それだけの力があれば、どんな状況からでも撤退できると確信出来た』なんて言われてたっけ…。

 俺達が万が一先走っても大丈夫な段階まで鍛えられたから、話したのか…!


「仮にアーテナイが居たら?」

「……禁足地の魔物と互角以上に渡り合える。…連戦を考慮しなければ」


「そこにユディット先生も居たら?」

「……片道は保証出来る。…帰りは厳しいだろう、ね」


「どんだけ強いんだよ…!?」

「……それって詰んでない!?」


 世界最強格の二人と、その弟子兼教え子、ただし合格点ギリギリの四人で片道レベル…!?


 今更ながら思い出した。

 俺達とユディット先生が初めて会った時、事情を話した後に零した言葉。

 それは『……恨むぞ、アーテナイ…』、という呟き。


 その真意は、『キミ達の欲しい情報はある場所は知ってるけど、そこに行ったら死んじゃうゾ』という意味だったのか。言える訳ないな。



「……だが、キミ達は実に運がいい。…いや、もはや、運命か、な」


 え?この状況で入れる保険があるんですか?





ユディットが「……恨むぞ、アーテナイ…」を言った回。


『96.求めるのは一つ。全てを賭ける。』


https://ncode.syosetu.com/n5368lm/105


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