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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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207.放棄された伝承。望郷。

 


「……その通り。…そして、故あってフルリス、現女王であるキミにも内緒…いや違うな…。

 …臆病にも、伝承を放棄しようとしていた話も含まれる」

「ワタシも共犯。…だって、知る人は少ない方がいいって思っちゃったの。ごめんなさい、フルリスちゃん」

「……異なる世界の二人に話す以上、今代の女王であるフルリス、キミが知らないというのは避けたい。

 …今まで、不誠実だった…誠に申し訳ない」


 ユディット先生とネリーは頭を下げる。その前の二人の表情は沈痛と表現するしかないものだった。


「お姉様…お母様……。顔を上げてください。

 何か理由があったことを察せないほど、フルリスは子供ではありませんよ?

 むしろ、信じて頂ける事に感謝を、知るきっかけになってくれた二人と友人となれたことを幸運に思います。


 どうか、お話ください。

 私はもう子供ではありませんが、子供の頃からお母様のお話も、お姉様のお話も、大好きなのです。無論、いまでも」


 フルリスは穏やかな表情だった。そこには怒りも悲しみもない。ただ、親愛だけがあった。



「……ありがとう、フルリス。…ヤマトくんもナデシコくんも待たせたね。…分かりやすくするため、少々遠い昔の話から始める、お茶を飲みながらでも聞いてくれ」


 ユディット先生は語り始めた。エルフの物語を。



 歳月を数えるという行為そのものが虚しくなるほどの、途方もない過去。一人の王が存在した。

 その名を『カアル』。始祖王、自らの種族をエルフと定めた者である。


 かの王が定義したものは多い。

 生命が持つ、目に見えない力、魔力。魔力のみで構成され、生命を憎む物、魔物。魔物に対抗しうる力、魔法。これらの知識を、同族に惜しみなく分け与えた。

 そして、これらの知識は長い時を経ても、根幹は一切変わっていない。


 かの王は、魔物から同族を守るため、一本の木を生み出した。

『世界樹』。魔物を寄せ付け無い神秘の木。


 そして、大陸中心の内海に、陸地を顕現させ、そこに『世界樹』を植えた。


 その地をエルフの国『 ルグス』とし、エルフに平穏をもたらしたという。



「なんて、いうか……王、って言うより神……いや、こっちの世界に合わせ言うなら……何になるのかしら?」

「やってる規模が個人の範疇は超えてるな。あえて言うなら…超人か?」


 日本人の俺としては、ナデシコの『神』、という言葉がしっくり来る。

 西洋に見られる全知全能の神、というより上位存在を呼称する時の『神』だ。


「エルフの一般常識ですね。知識は独占せず分け与えるべし、との教訓にも使われますね」

「あんまり他の種族に喧伝はしてないけどねー」


 フルリスとネリーの注釈。

 俺とナデシコは学園で、魔法のみを勉強してきたわけではない。

 各都市の成り立ちや、産業なども勉強してきた。その中でも、現在の王都の成り立ちは習った。


 ちなみに、ネリーことコルネリア・ユグドラシルは、授業の中に歴史上の人物として出てきた。

 芸術を否定する暴君である父から独立し、『世界樹の若木』を携え多くの同胞と共に移民となり、今の王都の基礎を作った人物として紹介されていた。

 ネリー本人視点だと駆け落ちのついでなのに、ついでの方が偉業扱いである。

 しかし、過去のエルフの国については習わなかった。


「ところでなんで喧伝しないの?凄いことなのに…」

「……今となっては、他種族に悪印象をあたえるのさ。

 …なにせ、その作り出した大地の底、世界樹の根を食い破り出てきたものこそ、『黒竜』なのだから」


 俺達の推理は当たっていた。

 旧エルフ国『 ルグス』こそ、黒竜誕生の地であり、討伐の舞台。現在の『禁足地』である。


「もしかして、黒竜を生み出したのは、始祖王カアル、と思われてるのか…?」

「……その考えは400年前ほどまではあった、ね。…誰も証明出来ないから廃れたのだが、ね」


「それだけじゃ無くて、ユディットちゃんが各都市に上下水道を配備したりしてる時、エルフにいちゃもん付けたら工事が遅れるって噂が一人歩きした結果でもあるけどねー」

「ちなみにその噂を流したのは…」

「あー、いいわ、フルリス。多分、その人、今はお茶でも飲んでるから、そっとしておきましょう」

「……賢明な判断だ」


 ユディット先生はお茶を啜りながら、ナデシコの判断を褒めた。どこまで計算してやってんだか。



「……では、そろそろ、前置きは終えよう。…これから話す事こそ、異世界への手掛かりである。

 …『 ルグス』に残された始祖王の遺産群。……教えはする、しかし、決して口外しないように…」


 ユディット先生は言葉を選ぶように、沈黙した。ネリーが目を伏せ、フルリスが息をのんだ。

 その雰囲気に、俺とナデシコにも緊張が走る。


「…残されしその名は『セックヴァベク』。……あらゆる願いが叶えられる程の財と知識の、宝物庫にして禁書庫。…禁足地のどこかに今も存在してるはず、だ」


 ……あらゆる願いが叶えられる…?……じゃあ、帰れる、のか?



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