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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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201.夏風の中で②。疾風。

 


 演習場に入ると、その中心にユディット先生が居た。手にはナデシコと同じ杖。

 いや、エマ先生も少し離れた所に居る。俺達と来た3人娘とネリーもその方へ歩いていった。ユディット先生は一瞬だけネリーを見たが、特に驚いた様子はない。


「じゃ、頑張りなさいよ!」

「応援してますわ!」

「信じています」

「みんながんばれー!」


 皆が、エマ先生の方へ歩いて行く。当然ながら、特設席などはない。

 先生は、催しと言ったが、あくまで授業の延長なのだ。


 脳内では、勝負条件を反芻する。

 勝敗条件は、武器の喪失。相手の武器を、破壊か、落として10秒経過で勝利。

 ただし、ユディット先生は俺達2人同時にそれを達成しないと勝利にならない。


 身体の状態を自己診断する。万全だ。


 そして、ユディット先生と演習場の中心で相対する。

 顔を上げ、目に入ったのは、穏やかな目だった。


「……よく、たどり着いた、ね?」

「別に迷う距離でもないでしょ」

「いつもの演習場だしな」


 露骨なすっとボケな俺達の返事を咎めることなく、言葉を続ける。


「……単純な魔力量なら学園創立以来の5本の指に入る。…確実に、ね。

 …しかし、特筆すべきは、その魔力を制御下においたことだろう。

 …出会った時、持て余していた魔力を、今は己のものとしている。…本当に、キミ達は、よく頑張った」


 言葉のみだが、頭を撫でられたような、くすぐったさがあった。


「そんなんじゃ照れないわよ?うれしいけど!」

「手助けも応援も山ほどもらったしな!……先生達にも…」

「……それは、ありがとう。嬉しく思う、よ。…さぁ、位置につこう」

「「はいっ!」」


 背中合わせになり、十歩移動する。

 たった十歩、その間にも、多くの思考が流れる。


 照れくさい。

 もし、勝負に掛かっているのが俺達のプライド程度なら、戦意を喪失していたかもしれない。


 でも、そうじゃない。

 それは俺達の世界の手掛かりも、当然ある。しかし、それだけでもない。

 この王都の日々だ、この勝負に乗せるのは。


 学び舎での学びも、演習場での友との研鑽も、湖畔での戦いも、王城での憩いも、ほかにも色んなものが、ここに立たせてくれた。


 頬の熱は、心臓の熱に遠く及ばない。息を吸って吐く、不思議と今は全身が熱い。

 その熱を持って、向き直った。同じく十歩だけ歩んだ、ユディット先生。その表情は冷たい。


七天将星しちてんしょうせい、緑のユディット」


「ロニア魔法学園、特別クラス『世界樹の若葉』、出席番号4番、異撫椎子イナデ・シイコ、ナデシコ」

「同じく5番、朱谷纏アケヤ・マトイ、ヤマト」


 互いに名乗った。示し合わせた訳ではない。

 七天将星しちてんしょうせいを名乗ったユディット。そこに、先生の甘さはない。

 対する俺達は、生徒であると名乗った。これまでの学びをぶつける為に。


「……さぁ、間もなく、午後の本鈴が鳴る。…その終わりが、開始の合図だ」


 ユディット先生は構えを取らない。ただ、杖を持ち、立って、居るだけだ。感じる魔力も驚くほど薄い。

 それでも、本能が告げる。目を反らすな、一挙手一投足、どれも見逃せば、倒れるのはこちらだと。


「そう。…じゃ、そこが全力恩返しの時間ね…!」

「楽しい楽しい答え合わせだ…!」


 ナデシコは上を片手に身を低く構える。槍の構えにも似た、疾走の構え。

 俺は片手は剣帯の上から鞘を掴み、利き手を『姫桜』柄へ。軽く乗せる。腰を落とし、重心を前へ。


 俺達2人の狙いははっきりしてる。速攻。2人で考えた最も勝率が高い手段だ。

 距離を離されれば、高威力の魔法が飛んで来る。ならば、まずは距離を詰め、2対1の近距離戦を挑む。


 これを最初に、3人娘に話したとき、確かに根性論だった。

 だが今は、ナデシコには新たな魔法が、俺には『技』がある。実行可能。そう判断した。



 ――キーンコーンカーンコーン


 この世界と俺達の奇妙な共通点。それはこの鐘の音。四つの音が二回鳴る。


 ――キーンコーンカーン


 魔力を練り上がる。身体の力は抜いたまま。

 イメージするは、矢より弾丸よりなお、早き物体。


 魔力は爆薬、全て推進力に変える。

 身体は制御装置、視線は誘導信号、届ける弾頭は我が得物。


 ――コーン


「……来なさい」

「「上等ッ!」」


 飛ぶ。ミサイルのように。一歩で半分ほど距離を詰めるが、ユディットも後方へ飛び退いている。

 否、それだけでない。空中で杖をこちらに振った。


 展開される風の弾丸達は、まさに弾幕、それが正面から迫る。


 横に飛び退く。それが昨日までの俺が選べる答え。だが、今は違う。

 ナデシコと同時に、弾幕に飛び込む。


「『ウインドラケット』!」

「はぁああああ!」


 ナデシコの返球が、他の弾丸を打ち返し、俺の刀が魔法を断った。


 疾風の如き、進撃は止まらない。



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