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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第六節 円舞曲を止めないで

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199.5の月の終わりに。世間話をする。

 


 元に戻った俺達は修行をすることにした。もちろん、休養日を経て、多少メニューは変えている。


「行くわよ!フォアハンド!バックハンド!スマーッシュ!」

「打ち返されると謎の悔しさがありますわ!」

「次行くわよ!姉貴!」

「いいわよ!二人とも!カモン!」


 ナデシコは、順調そう。

 メグとライリーが交互に打つ魔法に、ラケットで対抗している。

 字面は意味不明、絵面はテニス部、それでも立派な魔法の訓練だ。

 俺はといえば……


「では兄上、参ります!」

「ああ、頼む」


『姫桜』に魔力を付与する。『理想』は断ち切ること。


「では……『ウインドバレッド』!」


 風の弾丸我迫る。その中心を捕らえ、『姫桜』振る。

 風はかき消えた。しかし、分かたれた訳ではない。これでは、潰したのと変わらない。

 つまり少々苦戦中だ。


「『理想付与』ですか…。

 確かに、そのように定議すれば、一部の『剣聖』や最上級冒険者の数々の逸話にも説得力がでますね…。だとすると……」


 エマ先生にも相談済み。しかし、有用なアドバイスは、今は、期待できそうにない。

 ならば、磨こう。一足飛びで成長できないなら、一歩一歩進んでいこう。


「イザベラ!次を頼む!」

「はい!兄上!」


 理想に近道はない。それでも、自分を試しながら、タイムリミットの中を駆ける。いい緊張感だ。丁度いい。

 こうして、俺とナデシコは腕を磨いていく。



 そして、放課後、俺とナデシコはユディット先生の研究室に来ていた。


「失礼しまーす」

「ユディット先生いるー?」

「……おや、よく来たね。二人とも」


 玄関入ってすぐの応接間、書類の束を前に置き、手元の書類を眺めているユディット先生が出迎えてくれた。

 そして、そのまま杖を一振り、書類がそのままスライドしてスペースが出来た。


「…月末は読み物が多い。…学生関連や教職員関連のものは読んでいて楽しいのだが、支払い関連の精査などは退屈の極みだ。…その昔、言い値でいい、と言ったら逆に商人達から説教を食らってしまった。…苦い経験だ、よ」

「俺達もお金関係は説教食らったな」

「ね。報酬を断ったら、酷い目にあったわ」


 着席を促されて、目の前の椅子に腰掛ける。

 お金関係は、雑にしてはいけない。俺達が得た異世界らしからぬ教訓だった。


「……さて、なにか相談事か、な?」

「いや、そういうわけじゃない。休養日前のお茶会での一件が気になってな」

「……お茶会の一件?」


 ユディット先生は首を傾げた。

 確かに別に約束もしてない一件だから、心当たりがないかもしれない。


「特訓も今日の分は終わって、一度家に戻って取って来たの」

「……おお、これは…」


 ユディット先生は手元の書類を脇に置いて、俺達からの土産を受け取った。

 中には陶器の器。それを満たすのは黄色の半固体。


「プリンよ」

「粉ゼラチンもこの為に作ってたんだろ?」

「……ほう、コレが噂の…」


 その噂の出所からのお届けである。ユディット先生は、器の上から観察している。

 手元に紙とペンを持って来て、なにやらメモまで始めた。


「レシピは日誌に書いておいたから読んでね」

「……ふむ、ありがとう。…あとでエマと食べるとしよう。…そう言えば、修行は上手くいっているかい?」

「内緒よ。お楽しみは取っとかないとね」

「当日の答案は出来てる、とだけ言っとく」

「……楽しみだ。質問があれば、いつでも受け付けるとしよう。…案はいくつあってもいいものだから、ね?」


 勝負前でもいつも通り、いや勝負前だからこそいつも通り。

 プリンを作ったのだって、まだ疲れ気味だったネリーのついでだ。


 普段通りは向こうも同じのようで、俺達に探りを入れるというより世間話で、修行の話を聞いたように感じた。



 俺達は、家路をめざし、夕方の学園を二人で歩く。

 借家なのに、家路という言葉を思い浮かべた自分に苦笑が漏れる。


「どうしたの?鼻で笑って?」

「いや、もう一ヶ月か、って思ってな。」


「そうね。ゴールデンウィーク取り損ねちゃったわ。

 多分、計画してた旅行より、こっちの方が充実した日々を送ってるけど」

「へぇ、旅行なんて計画してたのか」

「うん。ヤマトと二人のミステリーツアー」

「……初耳なんだが?」

「初めて言ったもの」


 確かに誘われたら断らなかったが、それにしても独断専行である。


「秘密も程々にな」

「その台詞、今から戻ってユディット先生にも言ってくる?」


「やめとく、賭けの代金を前借りしたくない」

「そうね、しっかり勝ってふんだくりましょう!」


「うん、俺の賭けって言葉が悪かったな。もっといい感じに言い換えようぜ」

「この世に生を受けたからには、私はすべてをこの手に握る!!」


 拳の王を目指そうとしてる?



「…ねぇ、ヤマト。私、学園じゃなくて高校に行ってても、こんな会話してたと思うの」

「だろうな。世界が変わったくらいじゃ、俺達は変わりなかった、ってことだ」

「ええ、そうみたい。でも、しっかり比べる為に帰りましょうね」

「ああ、二つから好きに選べるように、だな」

「分かってるじゃない!」


 夕日の放課後、笑みを交え、拳を合わせる。二人で歩く、あかねさす道は明日に続く。



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