表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第五節 捧げる練習曲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
204/227

195.振り切る。発現する新たな魔法。



「位置について。…用意。…ドン!!」


開始時刻と同時にナデシコの進撃は始まった。その軌道は、直進、否、驀進ばくしん

その速度、車がないこの世界において、大型動物の輸送車両の走行のような力強さを想起させた。

接触でも、ただでは済まない。ライリーの本能は撤退を叫ぶ。


「今更ビビるかっての!『ウインドハンマー』!」


それを、胆力でねじ伏せ、魔法を繰り出す。

そこには多少の理性の加勢もあった。ナデシコの敗北条件の中に、反撃禁止もあったからだ。


「さっすが!ライリー!でも打ち下ろしは不味いんじゃなーい?」


ライリーの視点、ナデシコが横に平行移動したように見えた。


「何っ!?」

「サイドステップ、ってね?」


フェイントである。ナデシコは、魔力を両足に集中させたのだ。

軸足に魔力を集中させれば、もっと効率的に動けた。しかし、それでは狙いがライリーにバレる。

つまり、対ライリー用の目くらまし。魔力で動きを見切る感覚を身につけてかけたライリーだからこそ、引っかかるフェイントだった。

そのまま、隣を駆け抜ける。


「想定内ですわ!『ウインドバレッド』!」


メグは、ライリーが突破される事を読んでいた。だが、右から出るか左か出るか分からない。

よって、メグが選択したのは両方。風の弾丸は左右に別れ、ライリーの左右をカバーする。


「でしょうね!弾幕薄いのも想定内!?」

「…っ!」


薄く広がった弾幕は、ナデシコの杖の一閃に弾かれた。次弾が来るより先に、ナデシコはメグを追い越した。

しかし、この動きもまた、想定内である。


「だったらこの威力はどうかな?ナデシコちゃん!『ウインドバレッド』!」


一撃に集約した風の弾丸。

ネリーの魔力で編まれたそれは、速度と大きさ共に倍以上。

風がナデシコの手元に迫る。


「いいね!打ち頃剛速球!『ウインドラケット』!」

「何それ!?」


ナデシコの杖に風が逆巻く。風は杖の先端に収束し、楕円を形成した。

そう、テニスラケットの形だ。無論、異世界初の魔法である。


拡散の魔力特性持つ『ウインド』の弾は、ナデシコの『ウインドラケット』に触れた瞬間、魔力の膜に覆われ、球となった。


「まだまだね!」


リターンエース。

ネリーの足下ギリギリに返され、そのまま後ろに抜けていった。

ネリーは反射的に、首をひねってその球の行方を追った。


「(…一体、なんの意味あるの!?)」


そう、テニスを知らないネリーのとっては、ナデシコの魔法はあまりにも未知数だった。

防ぐだけなら、返球する必要は無い。なにか意図があるはず、そう考えたのも無理はない。


「はーい、ご機嫌いかが?」


その結果、ナデシコ隙をさらした。

ネリーが、気付いた時には、すでに目の前にナデシコがいた。すでに、魔法の行使よりもナデシコの手が届くのが早い。

そして、ネリーは抱きしめられた。


「え!?ナデシコちゃんったら急に大胆!?」

「違うわよ!この距離なら魔法は使えないでしょ!」


そう、ナデシコの狙いは、ゴールまでネリーを抱えて走ること。

拘束は反撃には当たらないというのが、ナデシコの主張だ。


「お待ちなさい!」

「待ちなさいっての!」


すでに、反転して追ってくるライリーもメグも迫っていた。

ナデシコは杖と一纏めにして、ネリーを抱えると逃げ出す。


「二人とも!魔法を使うならネリーに当てないようにしなさいよ!これでも女王陛下よ!」

「じゃあその女王陛下を捕まえてるのは誰よ!」

「拐かしですわ!騒乱罪ですわ!」

「きゃーたすけてー!」


まんまと物理的に女王陛下という、とんでもないものを盗んでいったナデシコは、演習場を駆ける。

修行の最中に突如始まった追いかけっこは、ナデシコが逃げ切るまで続いたという。


真剣な顔の彼女らはどこへやら、笑みと怒号飛び交う演習場はまるで遊び場のようだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ナデシコから、今日の様子を一通り聞き終わった頃、夕食の準備は完了した。


「一応その修行は私の勝利で決着。ま、物言いもあったけど…。

 その後は、修行も中断して、私の魔法『ウインドラケット』の検証ね。

 メグは分析、ライリーは魔眼で観察ね。かなり世話になっちゃったわ」


修行や新技取得と充実した時間を過ごしたらしい。


「お疲れ様。二人にも、またお礼しないとな。そう言えば、ネリーの様子と繋がらないが?」

「ネリーは、またライリーと同調して魔眼を強化したり、色んな形状の魔法を使ってくれたりしたの。どんな時に使えるか、どれくらいの魔法相手に使えるか、色々試させてもらったわ」


「…魔力切れの寸前まで?」

「そうそう。エルフは魔力切れになりにくいけど、いざなったら人間よりキツいんですって。フルリスに連絡するか聞いたんだけど…」

「やーだー…、おこられるー…」

「てなわけ」


どうやらナデシコは、臨時講師の顔を立てたらしい。

今も、居間の椅子で伸びてたネリーを抱えて、食卓に持ってきたところだ。

大きいぬいぐるみのようにされるがまま、無抵抗のネリー。


「今日のメニューは、鶏胸肉のはちみつ照り焼きに、葉物野菜のマリネ、柔めに炊いたごはん、食後には昨日分けてもらったゼラチンで作ったゼリーもあるぞ?」


本当はスープでも作ろうかと思ったが、甘いのがいいというリクエストで、ゼリーに変更になった。

食後には程よく固まってるはずだ。


「ゼリーから食べていいーい…?」

「ダメよ。身体は元気なんだから、栄養あるものから食べなさい」

「食べさせてー…」

「もう、今日はフルリスが居なくてよかったわね?…はい、あーん」

「…あーん。おいしー…」


どちらが子供か分からないやり取りだ。

それでも、ナデシコはとことんネリーに尽くすようだ。


「今日はありがとね、ネリー」

「いいの…いいのー」


お互いの好意に、甘え合っている夕食は、いつもより少しだけ、長い時間続いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ