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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第五節 捧げる練習曲

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194.子供達へ。女王より。

 


 ネリーにとって、ヤマトとナデシコ、二人は大切な友人である。


 自分の思い出の場所に来た二人。

 その距離感に、かつての自分たちを重ね、応援したい恋人同士となった。


 そして、少し話しただけでも、純粋ですれたところが無く、素直な子達だと思った。


 だが、気付いた。旅の道中と言っているのに、目の前を楽しみながらも、遠くを見つめる寂しさがあった。

 恐らく事情を抱えている。王城につれて行ったのも、これが大きい。

 なにか力になりたい。その一心だった。


 そこで出てきた話の数々、信じ堅いのに嘘を付いていないと分かるのだから、頭は混乱状態だった。

 その動揺を見せなかったのは、娘達が前に居たからということもあるが、その時のある感情で一杯だったことも大きい。


 怒りとやるせなさだ。


 親として、引退したとはいえ女王として、許せない。

 子供が親と世界を分かち、引き離される。許しておけない。

 互いの死さえ認識しようが無いという点を見れば、死別よりもなお酷い。


 しかし、ネリーに彼らを助けることは出来ない。

 ネリーは別の世界への行き方、その手掛かりを知っている。恐らく、娘のユディットも同様に。

 エルフに残る言い伝え、エルフの始祖王の遺産、それらが示すものを。


 ネリーは『七天将星』に次ぐ、魔力と実力を持っている。

 だが、その手掛かりが眠る地、かの『禁足地』にネリーは踏み込めない事情があった。


 もどかしい、二人の魔法の講師になってなお。

 二人になにか贈れないか、なにか助けになれないか、そう考えていた。

 いや、考えている。今、この時も。



 昼食も終わり、作戦会議の時間。

 ライリー、メグ、ネリーの『三淑女』は集まっていた。

 会議の主導権を握るのは、その中でも小さく年上であるネリー。


「というわけで、これでナデシコちゃんをやっつけちゃいます!」

「意外ね。なんというか…」

「遊びがない、ですわね」


 彼女らの作戦はシンプルだった。

 ライリーは前衛でナデシコへ接近戦を仕掛け、メグは中衛で全体指示と前衛の援護、ネリーは固定砲台として杖を狙う。


 前衛が接近して相手の動きを制限、中衛が臨機応変な対応、後衛が大火力でトドメ。

 まるで魔物を討伐する冒険者の作戦である。


「えー!わたし、いつも今日も多分明日も真剣で真面目、目の前に精一杯だよ?」

「真剣に撫でてるわけ?」

「真面目に抱きしめますの?」

「うん!」

「「(精一杯言い切った…!)」」


 この世界の定番戦略。隙が無く、個々の戦力的に劣っていても抗える人類の知恵。

 ネリーが立てた予定では、この戦略を取るのは残り三戦の時点だった。


「(…もうちょっと時間が掛かるかと思ったけど、もうなにか掴んだみたいだね、ナデシコちゃん)」


 昼休憩、ネリーは見た。空を見て、何か呟いたナデシコを。淀みとはまた違う、『コリ』や『こわばり』といった何かが解れた。そう感じたのだ。


「(…うーん、残念なのは『臨時講師のネリーちゃんからのアドバイス』がそのに、までで終わりそうな事かな?

 そのなな『恋人といちゃいちゃしちゃおう!』は後で二人に伝えよっ)」


 ネリーは未来を悲観的にもならず、過去を悲劇的にも考えない。

 現在で出来る事を精一杯やり、顔を上げて歩み続けることを信じている。

 その歩みの先に希望があるはずと脳天気にも思うのだ。


 ネリーにとって、ヤマトとナデシコ、二人は大切な友人であり、子供きぼう達である。


 年月とも言えない時間しか共に過ごしてなくとも、血も世界も繋がっていなくとも、そんなものは小さな事だ。


 格子のような窓から連れ出されたあの日から、ネリーは愛と奇跡を信じてる。

 それは、残酷な現実さえも越える力であると。涙の意味さえ変えてしまう力だと。


「(…だよね!エサルカくん!)」


 今は、返って来ない問いかけだ。

 それでも、ネリーの明るい問いかけに思い出達は、微笑んで首肯を返したのだった。



 相対する両者。

 休みの時間は間もなく終わる。


 ナデシコは構えた。それを受け、三人も腰を落とした。


「(…なんですの、あの構えは…?)」


 メグの疑問はもっともだ。少なくとも杖術の構え方ではない。

 まともな武器術が、己の獲物を地面すれすれに保持し、指に体重を預けるような構えを取るはずがない。

 クラウチングスタート、ナデシコはその体勢を取っていた。


「(…魔力が指先と足裏に集中してるわね)」


 ライリーはその構えの意味を理解した。

 それ即ち、駆け抜け。スタートダッシュで小細工の通じないほどの速攻を仕掛けてくる、そう考えた。


 後ろの二人に知らせるか迷った。

 だが、自分が出鼻をくじけば、二人からの援護を期待できる。

 突破されても、その頃には、二人は対応出来るだろう。


「(…それに、もしここで動きが分かったわ、なんて言ったら姉貴の狙いが変わるかもしれない…)」


 作戦会議でも出た話題。それは、もっとも警戒すべきはナデシコのアドリブ、即興の対応ということだ。

 文字通りの別世界の発想力を持っているナデシコの動き、それがもっとも警戒すべきことなのだ。


 ライリーは、後ろの二人に何も言わず、先ほども自分の考えも、決めつけも止めた。

 ただ、冷静に目をこらした。


 各々の集中力が高まる。間もなく開始時刻。

 そんな中、ナデシコは頭部を落とし、腰を上げ『用意』の姿勢。

 全身に魔力を行き渡らせ、己をバネに変える過程の中で、


「最高速度でぶち抜いてあげる」


 己を高めたいた。その表情は笑み。


 ――楽しんでるナデシコが一番厄介。


 ヤマトがこの場にいたら、再びこう言ったであろう。



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