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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第五節 捧げる練習曲

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202/229

193.読み切る。勝利と向き合う。

 


 開始時間と共に、ナデシコはメグの方面へ駆ける。ネリーとの間に、メグを挟む形だ。

 狙いは、メグを盾に前進しつつ、例え魔力を同調したとしても、その時間で駆け抜けられるように。


「ネリーさん、わたくし『ごと』、お願いしますわ」

「はーい!『ウインドブラスト』!」


 狙いは破られた。ナデシコが感じるのは横風、その風を背に受け、メグが迫る。


「メグが接近戦!?」

「『ウインドハンマー』!」


 眼前に迫る、風の鉄槌。だがナデシコは、逆に接近した。


「根元はお留守!」

「…と思いますわよね?」


 メグはそれを読んでいたように、ナデシコの杖を掴む。

 一瞬驚くが、握力、体重、筋力、魔力、どれもナデシコに分がある。

 すぐに振りほどける、はずだった。


「ネリーさん!」

「もう一回『ウインドブラスト』!」


 ナデシコは、片手で杖を保持している。それに対して、杖に対して、メグは両手のみならず両足も絡めている。そして、推力をネリーに頼った。それでも、僅かな時間、拮抗した。


「絶対に、離しませんわ!」


 その時、ナデシコは見た、メグの強い意志の目を。気圧されてはいない。それでも、強い目だと思った。


「っ!待ちなさい!」


 杖が持って行かれた。ナデシコは追う。

 下に落とそうとも、投げようとも、先に手に取るのは自分だと、言わんばかりに。

 そう翼を持っているわけではないのだ、空中で方向や速度を変えることなど出来るはずが…。


「打ち上げなさいな!ライリー!」

「来ると思ったわ!メグ!」


 それはナデシコの意識外の一手。

 これまでライリーとネリーが組んでいた時に、メグは参戦しなかった。故に、ライリーへの警戒を無意識に断った。

 相手に出し抜かれた。


「行くわよ!『ウインドブラスト』!」


 空中、不安定ながらもメグがライリーへ投げた杖は、途中で魔法を受けて加速した。

 ナデシコが追いつかない程に遠くで、石材と木材の衝突音が響く。


「……負けたわ」


 2敗目。

 勝ち越してはいる。しかし、読み切られての敗北。

 ネリーとメグ二つの王家コンビに、思考で及ばなかったことを見せつけられ、午前の最後の6戦目は終わった。



 お昼休憩。ご飯の時間。

 メニューは、ネリー特製サンドイッチ。

 爽やかに健闘を讃え合う。…とはならなかった。


「ネリーさんがあたしと組んだときは『メグちゃんは見学』って言ったのに、さっきは『ライリーちゃんは少し離れてて』だからピーンと来たってわけ!」

「ま、私は4回勝ったけどね」


「見学を通してお姉様の、動きや今日の状態や思考傾向を考えることが出来たのも勝因でしたわ」

「勝ち越してるけどね」


「それも含めて、メグちゃん『ごと』だけで作戦が分かったわたしもすごいよねー」

「ぐぬぬ」


 勝ち誇った顔と、悔しがる顔。午前最後の勝負が思いっきり尾を引いていた。


 それはそれとして、新鮮な野菜と燻製肉を挟んだサンドイッチは美味しい。

 付け合わせの酢漬け、よく冷えた果実水も疲れを癒やしてくれた。

 ナデシコの不機嫌顔も長続きしない程だ。


「臨時講師のネリーちゃんからのアドバイス、そのに!いっぱい食べて元気百倍!」

「さすがに、百倍は言い過ぎではありませんの?」

「そう言うフレーズがあるのよ、私とヤマトの世界に」

「エルフの言葉でもないのね…」


 午後に向けて英気を養う乙女達。ここに敵味方の区別無く、世界の区別もなかった。



 食後の一時、『三淑女』は集まって作戦会議をしている。

 それを横目に、ナデシコは一人、振り返る。


「(……動きはライリーに、思考はメグに読まれる)」


 奥の手、ツバサはヤマトが居ないと使えない。というか、使って勝ちたくない。

 作戦、メグとネリーに見切られる予感がする。

 本能任せのアドリブで動く、ライリーに止められる。


 手の中には二度落とした杖。二度の敗北はどちらも武器を落としたこと。


「(…武器のせい、には出来ないわね)」


 確かに負け筋。杖が無ければ勝てたかもしれない。今日この場は。


「(…でも、ユディット先生には勝てないわ)」


 予感、いや確信に近い。何度か見たユディットの魔法。

 それに対して、殴り飛ばせる、素手で受けきる。そのイメージは湧かなかった。


 魔法使いと戦う。自分も魔法を使う。

 数ヶ月前の自分に聞かせたらどれほどワクワクするだろう。

 いや、今も楽しんではいるのだ。しかし…


「(…勝算。勝つためにはどうするのか、計算しているのよね)」


 必要な事だ。だが、それ故に思考を読まれている。


 解を勝利に持っていく以上、筋道が要る。

 向かう先が分からない者の動きを予測するのは困難だ。

 しかし、行き先が決まってる相手なら、予想も容易い。


『ナデシコ、アンタは一つを極めるより、色んな手札から一番、楽しい事を選びな。それが相手からしたら、一番厄介だから』


「アーテナイ…。ええ、そうね」


 不意に頭の中に響いた声に、思わずその名を呟いた。その唇は、笑みを象る。

 休憩の終わり際、楽しむ準備を完了したナデシコが居た。



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