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【学園編佳境】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章六節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第五節 捧げる練習曲

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191.戦果は上々。油断できない臨時講師。

 


 魔法学園の演習場を走り抜ける影がある。

 迫る魔法をかいくぐり、立ち塞がる少女を飛び越え、終点に向かい走る。

 その影もまた少女、ナデシコである。


「これでゴールよ!」

「舐めんなっての!ウインドバレット!」

「甘い!杖は飾りじゃないのよ!」


 風の弾丸は寸前まで迫るが、突き出された杖がその軌道を変える。

 かくして、危なげなくナデシコは簡易的に引かれたラインを飛越える。

 その行為の意味するものは…


「いえーい!二連勝!二人ともまだまだねー!」

「「…ぐぬぬ…!」」


 決着。修行が始まってから、早くも2セットが終わった。

 結果はナデシコの二連続逃げ切り、それも迎撃が巧さで切り抜けたのではなく、身体能力のごり押しで、だ。


 そして、ライリーとメグが悔しがるのも無理はない。

 例え、ナデシコの相手でも、もう少し通用すると思っていたのだ。


 原因は二つだ。一つは、決定力不足。

 これまで、ヤマト相手に培った来た連携は、ヤマトのとっさの動きにも対応出来る観察力に優れたイザベラの不在。

 ライリーには、イザベラの方へ誘導するクセが付いていたし、メグも無意識の内にイザベラを主戦力として組み込んでいた。


 もっとも、イザベラも切り込み役をライリーに任せることで観察に集中し、詰めをメグに任せることでとっさの動きでも対応出来ていたのだ。

 つまり、誰かが秀でているという訳でもなく、三人の連携こそヤマトを追い詰めていたのだ。



 もう一つは、人手不足。そう、ネリーは先の二戦、観察に徹していた。


「いやーおしかった、おしかった。じゃ、作戦会議始めよー」

 そして、そのネリーは二人を呼び寄せ、二人を撫でようとしたところで、避けられた。


「…全然おしくありませんでしたわ」

「馬力が違うわね。というか、言われた展開通り過ぎてムカつく…」


 機嫌の悪い二人にもネリーは笑みを崩さない。むしろ、10分の制約が無ければ抱きしめて居たところだ。


「まずは、わたくしとライリーで2戦。この意図は、現状の把握でしょうか?」

「一発届けば十分、とは言われたけど、ホントにゴール間際に一発だけだったわね。メグは飛び越されるし」


「むしろ、あそこでわたくしが立ち塞がったから、なんとか一発届いたのではなくて?」

「ええ、その通りね。立ち位置が逆でも、同じ結果だったわ」


「…素直ですのね」

「リベンジマッチなのよ。……喧嘩を売るような言い方になったのは…ごめん」

「こちらこそ、変に勘ぐって申し訳ありませんわ」


 二人の顔は真剣だ。不機嫌になっている時間も惜しいというように。


「あと、絶対に姉貴の鼻を明かす!」

「同意ですわ!」

「うんうん、けっこーけっこー」


 やる気溢れる若者にネリーは満足げだ。見た目で一番若いのはネリーなのだが。


「じゃ、わたしも今度は参戦します!」

「頼もしい助っ人ですわ」

「いや、あたし達が助っ人なんじゃなかったかしら?」

「そう言えばそうでしたわね」


 二人がネリーの誘いに乗ったのは、ナデシコ達の力になりたかった。というのが大きい。

 二人の名誉の為に、修行が始まる前に言った建前とこの本音の比率は秘することにする。


「あ、次はメグちゃんは見学で。今度はライリーちゃんとわたしのコンビで頑張ろー!」

「なっ…!」

「ただし、メグちゃんはナデシコちゃんをよく観察しててね。

 正面の攻撃にはどう対応するのか、右から来たら?左から来たら?上から下からの色んな攻撃を見せるから、ね?」


 少女のような見た目のネリーからの指示は、まるでイタズラ娘の提案のようだった。



 間もなく休憩時間も終わる時、そこには相対する両者がいた。

 ただし、メグは側面の離れた所にいる。


「選手交代、ってわけ?」

「臨時講師のネリーちゃんからのアドバイス、そのいち!今日は三人が相手だよ?」

「そう、やる気が出てきたわ!」

「こっちの台詞だっての!」


 休憩時間は終わった。ネリーは、真っ直ぐ腕を伸ばす。


「『ウインドブラスト』」


 短い詠唱。予備動作も僅か。練り上げられる魔力の予兆もなかった。

 故にナデシコは、自分の身体が浮き上がってから、その異常さに気付いた。


「なっ!…によこれ…!」


 ナデシコの取った選択は、杖を使い、自分からも後ろに飛ぶこと。そして、壁に着地した。

 その瞬間、風が止んだ。

 重力の消失に等しいその不意打ちにも、ナデシコは床への着地を成功させた。合わせて数秒のロス。


「(やるじゃない…!でも、覚えた。もう食らわない…!)」


 安堵するのもつかの間、接近に対応するためにも、急いで顔を上がる。

 するとそこには、


「はい、ぎゅー!」

「なにすんのよ!」


 ライリーに後ろから抱き着いてるネリーがいた。


「…いや、本当に何してんのよ…」


 思わず、突っ込むナデシコ。ちなみに、少し遠くでメグもこめかみに手を当てていた。


「なにって、波長を合わせるための準備だよ。わたし、結構器用だからね!」

「…なんですって?」


 魔力の波長は生まれてから死ぬまで変わらない。しかし、一定範囲で調整可能。これが、常識。

 だが、調整可能範囲には個人差ある。これは学園で習ったこと。

 もし、誰とでも合わせられるような、それこそチート級の魔力制御を行える人物がいるとしたら…。


「さぁ、ライリーちゃん。今から体験するのは、もしライリーちゃんが魔眼をものに出来たら、見れる光景。ま、20年先取りってとこかな?楽しんでね!」

「ずいぶん遠いわね。でも、見えたわ…!」


 この時、ナデシコの視覚を頼った視点では、なにも変わった様子はない。ライリーとネリーがいるだけだ。

 しかし、魔力を感じる感覚が、ライリーの魔力がこの場に二つあると告げていた。



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