155.森林探索2日目③。描いた思い出。
「……では、キミ達の絵を見ていこう。…キミ達の共通点は一つ、人物が中心になっていることだ。…確かに、人物が映り込むことについてを禁止してなかったが、あくまでもスケッチは風景を描いて欲しかった。……と、後出しになってしまったのは、ワタシも反省するところだ。…ここからは、エマに進行を譲り、一人一人見ていこう」
ああ、そう言うことね。
確かに、スケッチと言えば、風景だな。だが、それより描きたいものがあったので仕方ない。
出題者の意図から逸れてしてしまったのは、悪かったと思う。
「では、ライリーさん。絵を見せてください。出来れば、説明も」
「はい!昨日の森での道行きの様子です!」
「なんでライリーが先頭になってるのかしら?」
「わたくし、あんなに疲れていましたの?」
「昨日、道中では、剣を振って居ないのですが」
「俺はそこまでナデシコにくっついてないぞ?」
森の中を『若葉組』みんなで歩いて居る絵だった。
ライリーが先導し、後に教師陣と俺達が居る。
ただし、先頭のライリーは凜々しく描かれているのに、後は俺達のコメントの通りどこかコミカルというか、主観たっぷりだった。
「次はメグさんですね」
「かしこまりましたわ。皆で丘の上で食べた、食事の様子ですわ」
「円座だったのにメグが中心になってるわね」
「食事中のわたしはあそこまで気が抜けているのでしょうか?」
「食事そっちのけでエマ先生に食いついてるのって私達よね?」
「冷や汗垂らしてるエマ先生の横で、淡々としてるのがユディト先生だな」
丘の上でお弁当を食べる風景だった。
メグは余裕有る慈悲深い笑みを浮かべながら、騒いでるみんなを見守ってる様な構図だ。
いや、メグはタマネギをしゃくしゃく言わせて食べてただろ。
取り過ぎて、口をすぼめてたの知ってるからな。
「イザベラさん」
「水練の練習風景です」
「……盛ったわね」
「…盛ってますわ」
「そこに付いては触れないが、俺の視線が真っ直ぐナデシコの胸に向かってるわけだが…」
「事実じゃない。というか、目がいきそうになると慌てて反らしてたから、むしろ印象に残ったわ」
「ち、違う!いや、今はイザベラのターンだろ!?」
え!?印象に残るほど!?確かに脳内の保存フォルダには残しましたが!
とにかく、イザベラの絵は皆で、湖面に向かって並んでいるところだ。
そして絵は、恐らく本人は将来性補正込みで描いている、とだけ言っておこう。
「では、そんなヤマトくん」
「どんな!?…いや、もういい。…俺は、昨日の料理の様子だ」
「森も湖も関係なく、別荘の中を描いたっての…?」
「その発想はありませんでしたわ」
「刃物の描写は加点項目ですね」
「ないわよ、そんな評価システム」
「あ、わたし達も描いてくれたんだ。やったね、リリーちゃん!」
「ええ、そうですね、ネリー先輩。ありがとうごさいます、ヤマトさん」
なぜか、メイド親子、今は先輩後輩のコメントまで頂いた。
俺の絵は、みんなで魚の下処理をしているところを描いた。
発想はネリーの絵から着想を得た。みんなで居るところが描きたくなったのだ。
「最後は、ナデシコさんですね…」
「ええ!ミール湖の対岸で、でっかい魔物をみんなでぶっ飛ばしたところよ!」
「まさかの未来ね」
「この規模の魔物が出たら即撤退ですわ」
「わたしはこのポーズ、嫌いではありません」
「この流れならトランプじゃねぇのかよ」
ナデシコの絵は、背景に大きな魔物が目を回しており、そのまえで『若葉組』の生徒一同が、戦隊ヒーローよろしくポーズを決めていた。
言うまでもなく、ナデシコはセンター、レッドの位置だ。
後ろの空いた隙間には、教師陣もメイドの三人も居る欲張り仕様であり、都合のいい未来予想図だった。
「……くく、ふふふ…」
その笑い声は、意外なところから上がっていた。
やがてそれは耐えきれなくなったというように、大きくなった。
「…あははっ……あー、……あは。……ふぅ。…すまない、なんというか、キミ達は本当に…ふふ、可愛い、ね」
声を出し、落ち着こうとしても、それでも抑えられず出る笑い。
それが、ユディット先生から出ていた。みんな目を丸くしている。
ネリーやフルリスも例外なくだ。
「……まったく、これでは評価を付けることが出来ないな…。キミ達の絵が、心底気に入ってしまったよ。…どう頑張っても、贔屓してしまう。……お母様、その昔、兄とワタシがお母様とお父様の絵を描いた時、どちらが上手いかと、聞いて貴方を困らせてしまった」
「…うん、覚えてるよ、ユディットちゃん」
ネリーの声色は、暖かく優しい。
「……決められるわけがない、だって、こんなにも喜ばしいのだから…」
「ユディット様…」
「お姉様…」
エマ先生も、フルリスもユディット先生を呼んだ。
「……ワタシの生徒達、キミ達の思い出に、ワタシ達を入れてくれて、ありがとう…」
そう言って微笑むユディット先生は、ネリーが時折浮かべる優しい笑みによく似ていた。
「何言ってんだか、『みんな』の思い出、でしょ?…ね、ヤマト!」
「そうだな。しかし、まだ終わってないのに思い出と呼ばれてもな!」
「その通りですわ。まだ半分程度ですわよ、ユディット先生!」
ナデシコに俺、メグも加わり、ふんぞり返って照れ隠しだ。
そう、まだまだ続くのだ。
「いや、それより……『お母様』に『お姉様』…?」
「それは、つまり……ネリーさん、いえ、ネリー様とリリー様は……」
………あ。
ライリー、イザベラは、何度も目線を泳がせている。
「………………………………よし、では午後の準備に」
「行けるわけないでしょ!?」
「行けるわけないです!!」
「まぁまぁ、二人とも、落ち着いてくださいな」
「いや何故落ち着いているのですか!?」
「テンパるのは、メグの役目でしょ!?」
「どういう意味ですの!?」
こうして、大問題は大混乱につながり、お昼は長めになった。とさ。
「うーん、みんなしょうが無いなー」
「「お前が言うな」」
俺とナデシコは、ネリーにツッコんだ。




