148. 森林探索1日目⑤。色とりどりに咲き乱れる。
この世界は美しい。
いや、別に怪しい宗教に目覚めたわけでも、異世界転移の果てに精神を病んだのではない。
時間も、みんなから水着を褒められてから一時間も経ってない。
現在は、『ミール湖』の前で各自、身体を解している。
「兄上、何やら気が乱れていますよ?」
「そうか?」
いや、そうだろう。
なんせ俺以外みんな水着という状況で、表面上でも正常に保ててることを、むしろ褒めて欲しい。
しかも、こちらの世界にはワンピースタイプは存在しないのか、ビキニタイプなのだ。
イザベラ。三人でも、とりわけ薄い肢体を包むのは、薄い水色の水着。
白い縁取りをされたそれは、イザベラの清廉な印象にもあっている。
ただ、水練なのに木剣を持ってきたのはどういうわけだ。
「あ!アタシ達の水着にドキドキしちゃったんでしょ、兄貴」
「なわけないだろ?」
その通りである。
ライリー。こちらを挑発するように笑う彼女は、濃いめの黄色の水着。
黒の縁取りは、生意気な雰囲気をだしているが、まだまだかわいらしさの方が勝る。
毎日の基礎運動の成果だろう、三人の中で最も太ももに厚みがある。
「まぁ、あまりからかっては可哀想ですわ。それに水中運動では余計なことに気を取られると、危ない。そうでしたわね?」
「ああ、その通りだ」
そう、だから今まさに大変危ない。
メグ。恐らく素直に気遣ってくれた彼女には大変申し訳ないが、薄桃色の水着の下で揺れるものを視界に入れないように必死なのだ、こちらは。
なぜ、三人で最もメリハリの付いた身体の彼女が、桃色という膨張色で紐も揃えたのか。
この謎は解けないだろう。探ったら、セクハラになるし。
「はい、皆さん。しっかり身体を解しましょうね。私は基本的には陸地に居て、いざと言うときは魔法でお助けしますね」
「「「はーい」」」
杖を持ってきているエマ先生は、水着の上から上着を着ている。今は眼鏡も小脇に置いている。
しかし、陽光と湖の照り返しが彼女の肢体のシルエットを分かりやすくしている。
もちろん、その影は同級生三人よりも女性的であった。色は薄い緑、それが透けていた。
「……というわけだ。…ナデシコくん、木の陰から出てきたまえ。…ワタシとエマには監督責任がある」
「こっちでしっかり、身体解してるから、ダメ?」
「……ダメだ、よ?」
上着を着ている間は平気だったナデシコは、湖の近くにくると木の陰に隠れてしまった。
それに話しかけているのは、ユディット先生。
ユディット先生は、芸術品じみていた。
端正な顔立ちに加え、長身に長い手足、海外モデルの一流モデルか彫刻の中の存在だ。
しかし、身に纏う水着が現実感と、女性特有の柔らかさのようなものを際立たせている。
エマ先生と違い、上着は早々に脱いでいる。深い緑の水着は、本人曰く
「……だって、ワタシがこの色以外だと、キミ達驚くだろう?」
とのこと、なんとなく、すねた表情だったが、過去に「あ、緑じゃないんだ…」的な事を言われたのかも知れない。無論、確かめた訳じゃないが。
「分かったわよ…。うぅ、無くしたことにした記憶が疼くわ…」
上着を脱いだナデシコが木の陰から、姿を現した。俺は直視出来ず、我ながらなかなかの勢いで首を振った。
「これは…アレね」
「そうですね」
「確実になにか、有りましたわね…」
「「ナニモ、ナイヨ」」
俺とナデシコは否定する。
そう、大人げなく水、というかお湯の掛け合いをした記憶はあるけど、その際には何も見なかった。
…なにも!な゛がった…!
「だったら、兄貴はしっかり見て感想言ってあげなさいよ」
「姉上は堂々としていてくれないと、困ります」
「さぁ、向かい合ってくださいな」
このお節介な同級生達はどうしてくれよう。教師陣も見守る構えだ。いや、注意しろよ。
俺達は観念して向かい合う。
「……なんか、言いなさいよ」
「…ああ、その…綺麗、だな」
「……そう」
後ろで手を組んだナデシコが催促したことに関して、短い感想を返すのが精々だった。
自分でも気付かないうちに、首元に手が伸びていた。その手にも頬の熱さが伝わった。
はぁー、可愛い!てか、もうなんか、アレだ。エロい。クソ、直接的表現を避けてたのに、俺の脳みその馬鹿野郎!
大体、そのプロポーションは反則的なのだ。
普段から、服の上からでも大きさはなんとなく分かるのに、いざ脱いでみたら想定以上不意打ち気味に驚かされる。
腰のくびれは、最近意識してるのかはっきり分かるし、へそから腰の曲線も官能的だ。
肌のきめ細やかさなんて、日の光を反射させてる。いや、むしろナデシコが輝いてる。
平塚らいてうも「ウーマン、イズ、サンシャイン」なんて宣ってたし、だったらナデシコが太陽だ。
何言ってんだ俺は。
赤いビキニは深い谷間を作り、腰に紐の食い込みを作る。まるで創世神話だ。
だから何言ってんだ俺は。
「……このミール湖を選んだのは、現在、5の月後半でも風邪をひかない温水湖だったからなのだが、今は冷水が必要なようだ、ね」
「それから苦めのお茶が欲しいですね、学園長」
「蹴っ飛ばして落としてやろうかしら」
「全く、かないませんね」
「今なら初日の的当て完封出来そうですわ」
「よーし!授業だ授業!」
「そうよ!授業なんだからね!」
俺達は、なんとか自分を取り戻し、皆の呆れ顔に向き直った。あ、そうだ。言うの忘れる所だった。
「みんな!水着、似合ってるぜ!」
この後、一纏めにしたことを怒られた俺なのであった。




