144.森林探索1日目①。賢者の行進。
同意書というなのラケルからの手紙を受け取ってさらに1週間。
前日の休養日を事前準備に当て、今日から二泊三日の森林探索に出発する。
集合場所は、朝の学園の校庭。少人数ながらそのメンツ故か、注目されながらの出発となった。
通りかかった図書館棟からはフレイヤさんが手を振り、エマ先生が真っ先に振り返し、赤くなるという珍事もあったが、本人の為言及は避けよう。
「……冒険者、行商人。…普段から旅をする者は世間一般から見れば少ない。…しかし、世間一般で言うところのいざと言うとき、その知恵は役に立つものさ。…つまり、荷造りや携帯食に関する知識だ、ね」
「というわけで、道中ではありますが、授業のおさらいをしましょうね」
都市を出て、今は森の中、熊さんに出会う事も無く、木々の間を歩いている。
ちなみに、熊さん出会う実績は真っ先に解除した実績でもあるのだが、街からほど近い今回はきっと大丈夫だろう。
全員、それなりに体力はあるし、いざとなれば魔力で身体強化も可能だ。喋る余裕は当然ある。
教師陣もそれを見越してか、授業の振り返りがてら歩くらしい。
今やっている授業の振り返りは、荷造りや、携帯食に向く食材に付いてなどだ。
あまり俺達の世界と変わらない。背嚢の場合の重心を意識した詰め方や、食料は生ものを避けることを習った。
大きな違いがあるとするなら、
「それから皆さん、魔物が現れたら、よほどの戦力差がない場合はまず逃げる。その時は、荷物になるものは躊躇いなく捨ててくださいね」
「……キミ達に、渡したナイフ。…いざと言うときは、それで背嚢の肩紐を切りたまえ」
そう言う万が一の場合対応がある点だろうか。13歳、俺達世界では子供のクラスメイトにも、切れ味のいいナイフが支給されている。
今日は、俺達もチートアイテム、『取り寄せバックパック』を置いてきた。なので普通の背嚢を背負っている。
ネリーには『取り寄せバックパック』の保管を依頼した。
代償は高かった。ラケルでの初めての夜を語る事になったのだ。恥ずかしくて死にそうだった。
なお、その時のネリーはどんな甘味を食べた時より蕩けた顔をしていた。
「そう言えば、二人は自前のナイフね」
「使い込まれています。冒険のお供ですか?」
「ううん。もらい物。ラケルで出来た冒険者の友達に貰ったのよ」
「はっ!まさか、また都市の重要人物ですの…?」
「違うぞ」
ライリー、イザベラからの質問答えるナデシコに、すっかりトラウマじみた反応を見せるメグ。しっかり否定しておいた。
このナイフは、ラケルで出会ったベンとリニー、二人の冒険者パーティー『双杖』から貰ったものだ。
ラケルからの手紙に寄れば、順調に依頼をこなし、Aランク昇格も見えてきたそうだ。相変わらず、アメリアちゃんのところには通っているらしいので、近況もよく分かった。
そんな授業の振り返りと雑談の道中はトラブルなく進みんだ。
途中、開けた所を見つければ、休憩がてら周辺植物の講義なども行われた。
数回の休憩の後、歩いていると木々の間隔が開けてきた。
森の中は木々が朝の日差しを遮って、木漏れ日が道中を照らしていた。
しかし、森を抜けて感じたのは昼間の太陽だ。すこし、目がくらみ目が慣れた時には、目映い湖面が映り込んだ。数人から歓声にも似た感嘆の声が上がる。
「……ようこそ、『ミール湖』へ。そして、午前中の徒歩移動は一区切りだ。…身体や、体調に異常、痛みがあるものは……居ないようだね」
歩いたのは合計二時間程度だろうか。途中休憩もあったので皆、軽く汗をかいた程度だ。
「では、皆さん。この方向にもう少し歩けば、見晴らしのいい丘がありますよ。そこで、昼食にしましょうか」
「「「はい!」」」
いつも大人びたクラスメイトから元気な返事があった。
フッ、お弁当でテンションが上がるとは、まだまだ子供だな。
「行くわよヤマト!一番眺めのいいところはもらったわ!」
「ああ!先にレジャーシートで場所取りだな!」
駆け出す俺達。甘いぜ、すでに競争は始まってるんだよ!
俺達は遠足の場所取りで、一番にいい場所を取る事を6年間行ったコンビだ。
「いや、七人なんだから、どうせ一緒の場所でしょ?」
「やれやれです」
「全く、元気ですわね」
そんな声も後ろから聞こえたが、駆けだした俺達は止まらない。
小学校の頃は自由だったが、中学時代はグループ強制だったからな。3年振りのコンビプレイについテンションも上がるというものだ。
ちなみにこの後、
「……先走らずに、集団を意識することは重要だ。…たとえ、もう安全と分かった上でも、ね?」
「はい…」
「仰るとおりです…」
普通にお説教を食らった。この感じ久しぶりだな。反省します。




