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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章四節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第三節 若葉の協奏曲

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141.夕食は豪華に。エルフと芸術。

 


 時刻は夜。場所は借家。

 今日の晩ごはんは、おからハンバーグと豆乳シチューだ。

 そう、引き続きおからと豆乳の消費が続いている。どちらも健康的だ。


「てなわけで、昼間はアーテナイの話を聞いてきたんだ」

「その後、私達が作ったアーテナイのぬいぐるみを渡したら、王都でも売り出す計画があるって話聞いてビックリしちゃった。今、ラケルに話を持って行ってるところなんだって」

「まぁ、二号さまの姉妹が王都にいらっしゃるのですね。楽しみです」


 食卓には現役女王陛下、フルリス。ま、2回目だし別にいいか。


「……それにしても、キミ達はアーテナイがよほど好きかのか、な?」

「俺達、基本的にこの世界の人で関わった人たちはみんな好きだぞ?今のところ、親切にされた記憶しか無いしな」

「もちろん、先生達のことも好きよ?」

「……照れなく言われると、照れる、な」


 大家で元王家のユディット先生も居る。元はこの人の家だし、まぁいいか。


「ねぇねぇ、わたしは?」

「好きよ?ヤマトが一番で、後は同率二位って感じね」

「わかるー。家族はみんな一番だよね!わたしも二人のこと好きだよ。二番目にね!」

「そう?ありがと、ネリー」


 ナデシコとネリーは共感し合っている。それを聞いた俺もナデシコの言葉に流石に照れる。思えば、初日以来のエルフ王家の集合だ。


「『エサルカ城』のメイドさん達と森林探索の時の別荘の件で打ち合わせをした帰り道。

 ユディット様から二人のところに顔を出そうと誘われて、頷いたのが全ての始まりでした。

 食事に誘われたのも覚えています。お二人の料理には興味がありましたし。

 軽い気持ちで、懐かしいと言えるほど離れていない勝手知ったる家に入りました。

 そこからの記憶が曖昧です。というか、目の前の光景は夢?それとも現実?

 私に分かるのは、ほんの少し『コンソメ』の味がする、まろやかなスープの暖かさだけです…」


 虚ろな目で、震えながら呟いてるのは、エマ先生。ユディット先生の『コンソメ』が有ったからこそ、この豆乳シチューが作れたので、その分析に間違いは無い。


「エマ先生、どうかしたのかしら?」

「……エマなりの動揺を抑える術と言ったところか、な?」

「俺達より付き合いの長いユディット先生がそう言うなら、大丈夫か」


 それにしても、男女比が教室と同じだな。ルスィスさんも姿は見えないけど、どこかに居るはずだ。


「ああ、まるでここは演劇の中。この世は舞台?」

 エマ先生は食べる手は止まらないが、目は虚ろなままだ。本当に大丈夫か?シェイクスピアってるけど。


「今更だけど、初めて会った時にユディット先生が言ってた、舞台に詳しい知人ってエマ先生の事だったの?」

「……ああ、そうだ、よ。…キミ達との日誌のやりとりで出た言葉を使うなら……オタク、かな?」


 演劇オタクか。また深そうな沼の住人だな。


「そう言えば、ラケルには無かったけど、王都には劇場や美術館があるんだよな」

「そうだよー。その辺は、エルフの公共施設でもあるのです!」

「国が運営、いやエルフが運営してるの?」

「ええ、そうなのです。エルフはしっかりとした情操教育がないと、無感情に育ってしまう。それが発見されて以来、芸術には力を入れて取り組んでいます。ちなみに、発見者はお姉様です」


 情操教育って、美しいものや優れたものに触れて感動する心、思いやり、知的好奇心を養う教育、でいいだっけ。


「……ワタシは、一度、母の故郷、エルフの『国』に行っていてね。…そこで音楽、芸術が禁じられたエルフ達を、見たのさ」


 ネリーの話で、後付のように語っていた内容か。

 確か、ネリーがエサルカさんと駆け落ちした事に激怒した当時の王が、芸術を前面禁止して、多くの国民が逃げたという。その後の事になるのだろう。


「……ワタシの知る難民時代のエルフとは、朝に歌い、昼に絵を描き、夜に物語を紡ぐ、そんな愉快な自由の民だった」

「そこまでだっけ?」


 歌がきっかけで駆け落ちした自由の象徴みたいなエルフの姫、ネリーがなんか言ってる。


「……しかし、そこで見たのは、生気も無く『ただ生きている』枯れたエルフ達だった。…ぞっとした。ワタシも感情表現は豊かな方ではないが、アレは根本が違う。…目的を果たした後、ワタシは早々に立ち去った。…その時に立てた仮説なのだが、王都に居を構え学園を運営始めた頃、魔法一辺倒の幼いエルフにその兆候がみられてね。…母上に進言したのさ」


 それは王都で、人間エルフの区別無く、教育していたユディット先生だから気付けたことなのかもしれない。



「ちなみに、エルフの国に行った目的ってなんだったの?」

「……母上から、故郷の話を聞いた時に思ったのさ。…きっと多くの魔法の資料があるに違いない、と。……ならば、王と血の繋がりあるワタシにには、継承の権利がある。…ちょっと生前贈与を貰いにね。…了解の手間を掛けさせるのも悪いので、勝手に拝借させて貰ったが」

 まさかの泥棒目的。


「あの時は本当に焦ったんだからね!書き置きも『少し寄るところがある』なんて短めな書き置きだけの残して、山ほどの本を持って帰って来たと思ったら、エルフの国に行ってたなんて!」

「……今にして思えば、黒竜が現れる直前だったから、運が良かった」

「そこじゃ有りません!」


 ネリーの怒った顔を初めて見たかもしれない。うん、これはお母さんの顔だ。素直に怖い。


「……許して欲しい、母上。…というか、この件については、すでに決着したと」

「今の話は本当ですか?学園長」

 いつの間にか、意識をはっきりさせたエマ先生がいた。


「…エ、エマ、どうしたのか、な?…そんなに魔力を高ぶらせて…?」

「いえ、学園長とお話することが出来ただけです。生徒の前で、昔のことを責められるもの居心地がわるいでしょう。なので、研究室でじっくりと、知的好奇心に関する安全性、自制についてのお話がありますので、ご了承を」

「…………はい」

 凄く怖い。普段温厚な人ほどとはよく言った物だ。


 そんなこんなで、メンツは少々ロイヤルな夕食の時間は過ぎていった。


 今日のMVPは、念のため食材を多めに買っていた俺に贈りたい。

 残念賞は、ユディット先生に贈らせてもらおう。



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