139.女王陛下とブランチ。お土産を持っていこう。
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俺の毎晩の日課がバラされて数日。つまり、身体測定から、同日数経過した。
間にあった事と言えば、ナデシコのダイエットもどき。それからメグ達の保護者の同意書回収などの林間学園の事前準備。
変わらず、魔法の授業や修練は続いており、俺とナデシコの手掛かり探しなども平行して行っていた。
結界魔法の話も聞いた。興味深かったが、残念ながら異世界の手掛かりにはならなかった。
パウンドケーキのレシピ提出に伴う、少々の混乱もあったが、概ね平和な日常だった。
そして、昨日のナデシコのウエストが元に戻った宣言により、本日を揚げ物解禁日とする!
「二人とも何を作ってるのー?」
今日は王都で二度目の休養日、朝食を終えて朝から台所でバタバタしてる俺とナデシコにネリーが話しかけてきた。
「『おからドーナッツ』よ」
「『からあげ』の時の油を使いたくてな」
「それって、二人の世界のご飯?」
ちなみに、王都では高級品だが冷蔵庫が普及してたりする。油もそこで保存していた。
もちろんユディット先生開発の魔法技術で動く物。開発者に売り上げの一部が還元される仕組み、著作権料の概念も存在するこの世界では、ユディット先生は世界有数のお金持ちなんだとか。
その資金で、自分以外の研究開発にも、じゃんじゃん投資してるらしい。
「うーん、おやつかしら?」
「油物は食べたいけど、身体にいいものも取りたいという二律背反の産物だな」
「壮大な話?」
いや、健康志向の話だ。
「もうすぐ出来上がるから、お城の人たちにも持っていけば?」
「つーか、そのつもりで結構な量を揚げてる」
「揚げたても食べていい?」
「「もちろん」」
「わーい!」
結局、ネリーも調理に参戦して、ドーナツショップ化した貸家にはしばらくの間、油のコーラスが響いた。
ネリーが来たことで余裕も生まれ、原料も同じなので、焼きドーナッツも作った。
おからと豆乳はすでに作って合った物を使用、作成作業は単純なので昼前には調理は完了した。
「あれ?パウンドケーキの時みたいに甘くないんだね。でも、素朴な味で好きかも」
味見がてら、おからドーナッツを食べたネリーが一言。俺達も食べる。うん、素朴だ。
チョココーティングとかしたいが、チョコはおろかカカオも見たことが無い。
「フッ、砂糖でブン殴れば旨いに決まってるからな…」
「力押しだけでは、芸がないってね…」
「本音は?」
「もうすぐ水着になるから、砂糖控えめなのよ」
「ナデシコ用に作ったおからと豆乳の処分だな。つい張り切って作りすぎた。手作りだから日持ちしねぇの」
「なるほどー」
エルフにはウソが通じないらしいので、素直に話す俺とナデシコだった。
「パンに近いね。こっちの方がしっとりしてるけど。分厚い柔らかクッキー?」
今度は焼きドーナツを食べてネリーが一言。
「さっきの『おからドーナッツ』を揚げずに焼いたもの。『焼きドーナツ』だな」
「砂糖や油を派手に使わないと、あんまり差別化は出来ないみたいね」
ひょっとして、俺達が王都で出した俺達の世界の料理というのは、『その発想はあったけどやらなかった』的な立ち位置なのかもな。
砂糖、油、バター、どれも高級品なので、贅沢に使う発想がこれまでになかったのかもしれない。
「でも、おいしいよ?焼きたてだから温かくて柔らかいし、なによりみんなで作ったからね!」
「ああ、そうだな」
「ありがとね。ネリー」
そう言って笑うネリーは料理の神髄、愛情が最大のスパイスの体現者なのかも知れない。
実際、笑って食べる飯に勝るものはないし、ネリーはご飯時はいつも笑顔だ。伊達に三児の母じゃ無いらしい。
ネリーと俺達はおいしい昼前の一時を過ごしたのだった。
作ったドーナッツ達は三つに分けた。
一つは、『エサルカ城』の分、ネリーに持たせる分だ。これにはレシピも同梱する。ルスィスさん宛てだ。
次に、『若葉組』の分、明日の教室に持って行く分だな。もちろん、教師陣の分を含む。
最後に、今日俺とナデシコが持参するお土産の分。
「そう言えば、今日行くんでしょ?」
「そうよ。この前の休養日は向こうが忙しかったみたいだから、今日約束したの」
「あそこまで大きな商家だとは予想外だったな」
「出来たのは最近だよ?」
「エルフ感覚で、でしょ?」
「そだよ」
悪びれもせずネリーは答える。そう、俺達が行くのは王都でも有数の商家。
「デライラちゃんによろしくね」
「ええ、伝えるわ」
「……伝えていいのか、女王陛下からの『よろしく』だぞ?」
「そうだったわ…」
ラケルからロニア行きの道中に知り合った、老婦人のデライラさんの所にお邪魔する予定だ。
「じゃ、『小動物』からって言えば伝わる?」
「ははは、『小動物』?なんの話だい?」
ネリーのことをそう表現したことを、しっかり覚えられていたらしい。
「今晩、ヤマトくんの料理を食べれば忘れるかもー」
「お任せください!」
「……口は災いの元ね」
ナデシコもネリーを『バカ野郎』呼びしてたよな?そこをつつくと俺が『この野郎』呼びしたのも連鎖するから言わないが。
まぁ、本人も気にした様子もなかったし、冗談の一つ、茶番だろう。ただ、念のため、腕にはよりをかけることにしよう。




