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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章四節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第三節 若葉の協奏曲

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136.豪華な林間学園。代償は突然に。



「先生質問」

「……なにかな、ヤマトくん」

「配る資料間違えてないですか?」

これは旅行のパンフレットではないのか。ツアー名を付けるなら『豪華!湖畔の別荘一泊二日の旅!』あたりだろうだ。


「……図らずも皆が読み上げてくれたから、ね。…森林探索の予定表で間違いは無いはず、さ」

じゃあ、あってるか。……本当に?


「半分くらい遊んでない?」

「……そう、だろうか…初日は森を三時間ほど歩くし、湖水浴は皆がある程度まで泳げるまでやる予定だ。水練、というものだ。…無論、途中休憩はある、よ?」

ほどよいウォーキングとスイミングスクールじゃねぇか。


「この、使用人って人たちは…」

「……エサルカ城から招く予定だ。…王都のエルフは新しい刺激に目がなくて、ね。…抽選になりそうだ」

多いんだ、希望者。


「その、二日目についてですが…」

「……午前のスケッチは周辺地形の把握だ、よ。…午後は、魔物の発生場所は分かっているからね。十分対応出来るか確認して、余裕があれば戦闘するのも悪くないだろう」

慎重すぎる。いや、学校行事としては正しいのか?なんでファンタジー知識がノイズになってんだ。


「怪我人がいない場合、とありますが…」

「……怪我人が出れば、即座に中止だ。…魔物との戦闘でも、怪我をしそうになったなら、ワタシが介入するつもりだ、よ。…無論、万が一の怪我の際には、保護者にも一報を入れよう」

最強の警備員が付いてる旅行だ。アフターケアまでバッチリ。


「ええ、皆さん。言いたいことは分かります。この森林探索、危険などほぼ皆無に見えるでしょう」

エマ先生は、一歩踏み出した。

そうだ、気を抜くのはまだ早い。あくまでも、今までの話はユディット先生基準であり、きっと過酷な道のりが待っているのだろう。


「ですが!つまずき、転べば、怪我をします!」

………それだけ?……こう、観察中でも魔物が襲ってくるとか、油断出来ない危険地帯を通るとかではなく?

「……エマは学生時代、実技実習で転けたのがトラウマでね。…足回りには慎重なの、さ」

「学園長!生徒達にばらさないでください!」

ドジっ子だったのか、エマ先生。


元々、そこまで深刻に考えて居なかったが、魔物と戦う気だった俺は少し力が抜ける思いだった。

隣を見ればナデシコも同様のようだ、さらに横のライリーに至っては…

「一日待てば良かったじゃない…」

と、教室の天井を仰いでいた。ドンマイ。


その後、ユディット先生とエマ先生から概要だけでは無く、詳しい日程や予定の説明が始まった。

聞けば聞くほど、安全対策や、事故防止策は完璧であり、教室の空気は弛緩していた。


「……ワタシは、今回の小旅行、森林探索だが、キミ達にとっていい学びの機会になると思う、よ。…慣れない環境での魔力運用の変化、水中という特殊な状況で身体を動かすことで見えてくるものもあるだろう」

その言葉に緩んだ空気が少し引き締まったようにも感じた。そうだ、無意味な事をする訳がなかった。


「……さて、保護者の同意の前に、キミ達の意見を聞こう。…参加の意志はあるかな?…キミ達が参加を望み、誰かが不安に思うなら、ワタシは言葉を尽くして説明し、場合によっては計画を見直し、不安点を潰し、参加の意思がある者の尊重に努めよう」

俺達は各々頷く。想像とは違ったが、学び取る意志が大切なのかもしれない。


「……いいだろう。…今のように自分の意志を持ちたまえ、ワタシの生徒達よ。…いつの日か、魔法を使わなくなるその日が来ても、学び取る心構えや新たなことを学ぼうとする姿勢はきっと役に立つから、ね?」

その言葉は、俺とナデシコに向けられたもの、と考えるのは早計だろうか。

元の世界に帰れば、魔法の知識は無用の長物になるかも知れない。でも、学びの日々は、無用ではあっても無駄では無い。そんなことを言われた気がした。


「……さぁ、というわけで、今日は身体測定をしようか?」


………?…皆の頭の上に同じ疑問符が浮かんでいる。どうしてそうなった。


「湖水浴の際の水練服なのですが、最近の海洋都市で開発された物を支給しますので、そのサイズ調整の為ですよ」

「……今まで、水練服と言えば湯浴み着とそう変わらないものだったが、今回支給するものは身体に張り付くタイプのものだからね。…身体の大きさではなく、各所の寸法がいるのだ、よ」

水練服、海洋都市、身体に張り付くタイプ、俺が思い出していたのは、そうネリーとの出会い。

その時にネリーが着ていた、この世界とはどうにも合わないもの……つまり水着だ。


「先生、俺、図書館で自習してきます」

「……?ああ、そうだね。…配慮が足りていなかった、すまない」

俺は席を外すべきだろう。知るべきで無いことがこの世にはある。時に好奇心は身を滅ぼすのだ。


「じゃあ、私も……」

「ナデシコさん、どうしたんですか?」

「いや、今日はコンディションが悪いっていうか、本来のものとは違うっていうかー」

昨日、おやつにケーキ、夜にからあげとご飯、朝も元気に食べたナデシコがなんか言ってる。

特に変わらないように見えるが、これは言うと地雷だ。触れてはいけないタブーだ。


「一日!一日だけちょうだい!」

「……皆、手伝ってくれるかな?」

「「「もちろん」です」わ」

「い、いやぁー!!」


俺はそっと、教室の扉を閉じた。


そして思った。今日からしばらくは揚げ物は封印だな、と。



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