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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第三節 若葉の協奏曲

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134.夢の幕間。個性を見つめ直す。



ナデシコを送った後、今日ばかりは、魔力の鍛錬も休みにして俺は眠ったはずだ。

だからこれは、ある日を境に時々見る夢だ。


手には日本刀を握っている。

俺の手を飛び出し、それはたちまち少女の姿に変わる。

現れるのは、桜色の髪をした少女。黒い羽織には桜の花びら、赤い着物には桜の花。


「はぁぁぁ……、もうちょっと、じゃったのになぁ…」

「どうした?話、聞こうか?」

そして、その少女は体育座りを決め込んでしまった。ため息は深い落胆。呟きは嘆きだった。

とりあえず、隣に座る事にした。夢の中だ、声かけ事案ではないだろう。


「……途中までいい感じ、じゃったのに送り狼も出来ぬとは情けない」

「同じところ住んでるっつーの、知ってるだろ『姫桜』?」

なんだ、いつもの癇癪か。


この『姫桜』は、刀の化身みたいなもので、夢の中でしか会えない。俺は起きたら忘れるが、本人?は刀を通して外を見ているらしい。そして、目下の目標は、俺とナデシコがくっつくことらしい。


「まぁ、良いわ。最近は行ける筈じゃったスクールライフをこの世界でも体験できて、ちょいとこぶ付きではあるが同棲もしておる。お互いの好感度も高まっておるじゃろ」

なので、余計な世話を焼いてくるのが若干うっとうしい。反論も面倒なので、黙っておくに限る。


「さて、最近は魔法にかまけて、お主が最も信頼すべき『刀』がおざなりじゃ!今日はとことん鍛錬に励むぞ!」

「はいはい」

勝手に落ち込んで、勝手に立ち直った『姫桜』に俺は力が抜ける思いだ。


「思い返せば、我らの桜然閃さくらぜんを見て『魔法でいいような…』じゃと…!?今思い返しても腹が立つわい!」

「まぁまぁ…」

確かに本来のものでは無いとは言え、侮られたら腹も立つか。


俺はこの『姫桜』が作り出す夢の中で、いくつかの技を、姫桜風に言うなら奥義を持っている。

それは、思うままに身体が動かせる夢の中特有の技なのだが、刀と身体に魔力を纏うことで、斬撃を届かせる技、『桜然閃さくらぜん』は再現できた。

使えるようになったのは、恩人達の命が掛かった状況だった。再現性があったとしてもあまり訪れて欲しくない。


「という訳で、今日は徹底的に『花筏はないかだ』をやるのじゃ!」

「『花筏はないかだ』?…思いっきり、守勢の技じゃないか」

このキレっぷりから、てっきりもっと攻撃的な技をやるもんだと。


「うむ、無論理由はある。お主達、いわゆる林間学校に行くのじゃろ?」

昼間にユディット先生が言っていたことだろう。

「ああ、そうなるな。魔物が出るかも知れないからか?」

「そうじゃ。コレまでのお主達を思い返してみよ。行く先々で魔物だの魔物もどきだのに出くわしおって……」

「好きで出くわしてねぇっての」

「今度は魔法学園の林間学校じゃぞ!そんなの、ここに居るはずがない魔物に遭遇だの、あるはずが無い迷宮に迷い込む、みたいなイベントが起るに決まっておる!」

「決まってねぇよ」

メタ読みすんな。確かに学園物で林間学校でのトラブルは定番だけども。


「故に、今一番身につけるべきは『花筏』!これしかあるまい!」

「はいはい…」

何を言っても無駄だ。年寄りのわがままだと思って、付き合おう。


起きた俺は夢の事を覚えていない。しかし、僅かばかりだが、夢の経験は無意識下に反映される。

だから、繰り返した技は使えるようなる、かもしれない、多分きっとメイビー。起きている時の俺、任せたぞ。


「……ん?」

「どうしたのじゃ、ヤマト?首など傾げて」

「なぁ、姫桜って何年前作られたんだっけ?」

「……急にどうしたのじゃ?まぁ、よくは覚えておらぬが……戦国と呼ばれる時代にはあったのではないかの?」

つまり、ざっと600年前か……。


「『姫桜』って、ネリーより年下じゃね?」

ネリーの過去話から察すると、黒竜誕生の500年以上前には100歳近かった筈だ。


「………妾の唯一性アイデンティティ長命種エルフのせいでピンチなのじゃ!!」

そこまでのことじゃねぇよ。


「よ、よくよく考えれば、師匠的立ち位置も、二人をくっ付けようとするところも被っておる!」

確かに?

「あと童女のような見た目も!」

そこ重要?


「………………盛るかの」

「自分の胸見て、なに言ってんだ」

なにやら、自分の胸元をペタペタと触りながら、極めて深刻に呟いた『姫桜』。確かに彼我の戦力差は絶望的ですらある。


「てか、変えられるのか?」

「出来ぬな。この姿は妾の魂の形じゃ。お主が夢の中でも現実の姿を保っているように、妾は己の本質である刀とこの姿以外は取れぬわ。もう少し精神的に成長すれば、『姫桜』大人モードも出来るじゃろ、多分きっとメイビーじゃが」

薄々察していたが、『姫桜』は精神的には未熟らしいな。本人曰く、昔は自我も曖昧だったらしいし。


「しかし!ここは夢の中!物ならある程度再現できるわい!」

「ああ、そう言えば、その服も再現だったな」

元ネタはナデシコが小さい頃に着ていた着物だ。


「という訳で、ヤマト」

「なんだ?」

「補正用下着とパットとやらを、今度詳しく見といてくれぬか?」

「…………元の世界に戻れたら、な」

こんなに元の世界の事を思って気が重くなるなんて、思いもしなかった。


この後、めちゃめちゃ修行した。『姫桜』が忘れる可能性に賭けて。



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