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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第三節 若葉の協奏曲

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130.お味はいかがですか。エルフさん。



「熱いから、よく冷まして召し上がれ」

それぞれに串を刺し、皆の前に並べる。


俺の味見は、先ほど中身を確認したもので済ませる。

うん、いいと思う。二度揚げは手間だが、この衣のサクサク具合には変えられない。有名店、とは行かないまでも、美味しい家庭のからあげだ。材料を準備してくれたネリーには感謝しなければ。


「いいじゃない!久しぶりの味だわ!いい味付けだし、いい揚げ加減よ、ヤマト!」

一口食べたナデシコも自分でやった味付けを自画自賛、そしてこちらに親指を立ててきた。俺もそれに、同じポーズを返す。


「はふはふ…!うん、美味しいね!フルリスちゃんが揉んでくれたお肉かな?お肉によく味が染みてるよ!」

「まぁ、お母様の作ってくれた衣あればこそです」

「みんなのおかげだね!」

「ええ、本当に」

熱さに苦戦していたネリーと、優雅に食べていたフルリス様。こうしていると、仲良し姉妹だ。


「素晴らしい」

聞き慣れない声だった。いや、先ほど聞いた声だ。そう、ちょっと厳しめの目つきのメイドさん。


「まずは香り。ラケルにて最近発明された大豆を使用した『醤油』の香ばしさと、ロニアの香味野菜の香りが鳥のもも身の油に溶け、実に食欲をそそります。

 次に食感。二度揚げ、でしたか。これにより肉は柔らかいままに衣が硬質化、歯を入れれば心地よい音と共に衣が割れ、肉が弾力をもって押し返します。堅さと柔らかさの対比は美しくすらある。

 無論、味も語らねばならないでしょう。肉の味わいは『醤油』の塩味、鶏肉の旨み、それらを香味野菜の風味が繋げている。

 衣は咀嚼の度に、変化をしています。始めは、油で上がられた小麦の軽さ、それらが噛む度に肉汁を吸い味を纏っていく。そう、まさに、真の完成は口の中で行われる!

 『からあげ』、大変美味でごさいました……はっ!」

何かに気付いたような声とともに、その詠唱は止まった。


「…それは、どういたしまして」

「でいいのかしら?」

驚きの表情のナデシコと顔を見合わせる、きっと俺も似たような表情だ。いや、……めっちゃ喋るじゃん。

メイドさんの身体は震えている。そして、フルリス様に深々と頭を下げた。


「申し訳ありません。フルリス陛下、一時でも側仕の任を忘れ、私情を優先させるなど、あってはならないことでした」

私情とは、食レポのことだろうか。しかし、あの長台詞、誰かを思い出すな。


「いいのですよ。ルスィス。むしろ貴女は、堅すぎると思っていたのです。そうですね。この機会に、お二人に自己紹介をしなさい」

「はっ…!」

にこやかなフルリス様に対し、メイドさん、改めルスィスさんはどこまでも堅かった。そして、軍隊を思わせる、早い方向転換で俺達に向き直る。


「改めて、私はルスィス。フルリス陛下には側仕として、そばに置いて頂いています。身の回りの雑務から、身辺警護まで任せて頂いています。業務上、お二人には不躾な視線を送ることもありましたが、不快にさせてしまっていたのなら、大変申し訳ありませんでした」

「別に気にしてないわ。ナデシコよ」

「ご丁寧にどうも。ヤマトです」

鋭い視線だと思ったら、警戒されていたらしい。無理も無い。俺達の旅の経緯など眉唾もいいとこだ。ネリーを始め、エルフ王家の皆さんとよく顔を合わせる風来坊を、護衛が警戒するなという方が無理だろう。


もしかして、この前のパウンドケーキのレシピを聞きに来た時も、何か企んでないか、と思われたのだろうか?悔しそうに見えたのは勘違い?


「ルスィスは料理が趣味なのですよ。この前のクッキーも、ルスィスの作です」

「今までにないレシピの数々。お二人には敵いません。学ばせて頂きます」

あ、違った。本当に悔しがってたみたいだ。逆に今は、まるで一戦を終えたようにすっきりした顔をしている。

ルスィスさんに勝手に脳内バトルを挑まれて、いつの間にか俺達が勝利してたらしい。


「あ、ちなみにラケルのシェーヌくんのお姉さんだよ?」

「「へぇー……えぇ!?」」

ネリーからとんでもない補足が入った。


シェーヌ。ラケルでアーテナイに仕えるエルフ。俺達も世話になったり、シェーヌからの仕事を受けたりした。ここロニアが故郷で、親父さんのアイヒェさんもここに暮らしているらしい。

もっとも、俺達とアイヒェさんとは、軽く顔を合わせただけだが。

そう言えば、シェーヌが会ったら頼ってみろ、なんて言ってたけ。


「って、事はアイヒェさんの娘さん?」

ナデシコも驚きながら確認している。

「父と弟をご存じでしたか。ええ、その通りです。…二人には、最近は会っていませんが…」

少し言い辛そうにしている。家庭の事情だ、深く突っ込んではいけないな。

改めて、顔立ちを見れば、切れ長な目元などに、シェーヌと似た面影がある。身長は、ロイヤル親子以上、ナデシコ以下だ。女性としては平均的だろう。


「私の話はもういいでしょう。これからも、フルリス陛下の側仕として侍りますが、警戒中はあまり話しかけないで頂ければ助かります」

「ルスィスちゃん、かたーい!」

「コルネリア陛下、お戯れを…!」

「か、かたーい…」

「フルリス陛下まで…!?」

分かったのは、姉弟揃って弄られキャラであるらしい事。フルリス様も慣れない言葉使いで弄ってる。


「まぁ、分かったけどさ。調理工程を知って体験しておくことで、こうなんかいい感じに護衛の役に立っちゃったりも、するんじゃない?だから、次、からあげを揚げる係はルスィスちゃんを任命します!」

ナデシコのフリが雑。いや、それより、ちゃん付けで通すのか?


「……なるほど、一理ありますか…」

いや、ねえよ?

余裕が無いのか、それとも揚げてみたかったのか。ともかく、残りの肉は次々揚げられていった。


「ねぇ、フルリスちゃん。この『からあげ』浮いてきたよ?」

「そうですね。引き上げ時かもしれません」

その後も、親子の共同作業もありつつ、順番に皆で揚げていった。


なお、途中で油はねから、親子をかばい、名誉の傷を負った勇敢な側仕の話は、本人の名誉のため、秘するものとする。

とっさに出た声が、意外と可愛らしかった事と、涙目は俺達の記憶にだけ記し、記録には残さないようにしよう。



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