128.予期せぬ来訪。揚げてアゲる。
あの後、お茶会はお開きになった。
考え込んでいるメグ、張り切った様子のライリー。自分のお皿に残ったパウンドケーキの小さなかけらを名残惜しそうに見ていたイザベラ。反応は様々だ。
「で、聞くまでも無いけど、一応聞いとく。どうする?」
「魔物退治!」
「まだ出るって決まってねぇよ」
ナデシコのやる気十分。俺も同意見だった。別に魔物と戦いたいわけではない。
「もちろん、それだけじゃ無いわよ。ユディト先生に言われたでしょ、『…キミ達、まだまだ未熟だ。帰り道のヒントは、スーパー強くならないと、教えてあーげない』って。だったら、その未熟じゃない戦い方、見れるかもでしょ?」
わざとらしくウィスパーボイスで、誇張したモノマネを披露するナデシコ。思わず吹き出したが、その反応にナデシコは得意げになった。
しかし、やはり根幹の理由は俺と同じか。
「はは、そうだな。授業でお手本は何度か見せてくれた。だが、どう戦うか、どう魔法を戦いの中で使うか、ってのはまだ分からないからな」
不意に、アーテナイとの修行を思い出した。
アーテナイは魔法を使う際に、武器の射程から外れた時や、牽制、不意打ちに使っていた。あまりに多彩、最初は手も足も出なかった。
そこで、なんとか二人で張り付き、常に攻め続けることで魔法の発動を抑制して、近接戦に持ち込んだ。
今にして思えば、アーテナイは明確に、攻めのターンと受けのターンを交互に組み込み、俺達の様子をうかがいながら戦っていた。
そう、修行だ。戦いではない。それでも、本気の修行だった。
だからこそ、一本取ったとき、アーテナイは俺達より先に喜んでいたようにも見えた。
その感触を思い出し、自然と拳を握る。そんな時、ナデシコに顔を覗き込まれた。
「あ、別の女のこと考えてる」
「当ててみろよ」
「アーテナイでしょ?」
「正解だ」
「だと思った!」
冗談めかしたやりとりを行う。なんてことない、放課後の帰り道だった。夕日はラケルの日々のように輝いて、俺達を照らしていた。
「おっかえりー!そ、し、て、課題合格おめでとう!」
「まぁ、それはおめでたいですね。お二人とも」
「まぁね!家庭教師のおかげよ!……ん?」
「もう伝わってたか、いや、昨日の時点で3分越えてたしな……って」
「「フルリス様がいる!?」」
「はい、お邪魔してます」
町娘風の格好をしているが、間違いなく、フルリス様だ。いや、格好如きじゃそのオーラは消せないって!
「ハッ!ヤマト、囲まれてるわ!」
「……マジだ…」
言われて気付いたが、家の内外に複数の気配がある。ピンチのようだが、台所に居たのは見知ったメイドさんだ。今日も目つきが鋭い。どうやらお城の人たちらしい。
「すいません。皆、心配性で」
「大袈裟だよねー」
「ははは、ノーコメントで」
大袈裟で迷惑だ。なんて言ったら、包丁が飛んでくるかも知れない。
「ちなみにいらっしゃった理由は伺っても、よろしくていらっしゃる?」
ナデシコもテンパってる。メグが聞いたら眉を潜める敬語だ。
「ほら、パウンドケーキだっけ?あれが美味しくて、今日も二人の『地元』料理を作るって言ったら、いいなぁ、ってフルリスちゃんが言ったから、連れてきちゃった!」
連れてきちゃったかー。
ネリーはこれで色々気を使ってくれている。俺達の世界の事を『地元』といったり、家事も結構頼りきりだ。力仕事も魔力で軽々こなすし、俺とナデシコの出る幕が少ないとも言う。
「…ご迷惑でしたか?」
「「滅相もないです!」」
上目使いのフルリス様。顔の印象はほぼ、ネリーと一緒なのに、清楚ささえ感じる。普段の教室が活発な女子ばかりだからだろうか?
「お二人とも、どうか普段通りになさってくださいね?あくまでも、私的な訪問ですから、ね?」
「…じゃ、いっか」
「…そうだな。今更だけど、『地元料理』ってなんだ?ネリー」
お言葉に甘えて、さっさと切り替えることにした。異常な空間にも適応しなかれば、異世界生活など出来ないのだ。メイドさんの目の下がヒクついたが、見て見ぬフリ。
「ふふふ、今日は!『からあげ』を作ります!」
お前マジか。相手王女様だぞ。いや、ネリーも王女様だったわ。
この一週間、食卓を共にするネリーとは、二つの世界の違いや、身近なところだと好物など、様々な話をした。
ちなみに、『からあげ』は俺とナデシコの数多い好物の一つである。むしろ嫌いな物は、ほぼない。
「そう言えば『からあげ』の話をした時、こっちでも作れそうね、なんて話をしたっけ」
「そうだよ!鳥のお肉でしょ、香味野菜に、二人の『お醤油』!それにたっぷりの油!後は…」
「小麦粉にタマゴ、衣の材料だな。…しかし、相変わらず、『こっち』の食材は迫力があるな」
鳥のモモの一枚肉が台所に数枚置かれている。こちらの動物はとにかく大きい、モモ一枚も1キロくらいだろう。通常の三倍はありそうだ。ちなみに赤くない、色はピンクだ。
「分かったわ。もちろん私達も手伝うから、今晩は存分にご馳走を楽しみましょう!」
「うん!一緒に作ろ!」
頷きあう二人、今日もイベントに事かかかないようだ。




