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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第三節 若葉の協奏曲

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125.訓練と鍛錬。挑む試練。



「今日の特訓は、威力の調整ですわね。お二人とも、この一週間でなんとか壁を壊さない威力を身につけられたと思いますわ」

「前提からおかしいのは置いとくわ。ただ、すでに狙いや発射速度は一級ってのは、流石ね」

「今日は微調整を行います。というわけで、不要になった木箱をいくつか用意しました」


俺達の前に少し古びた木箱が置かれた。よく見ると端の方には木のささくれが目立つ。それに飛び出した釘、それから大きな亀裂も入っていて使い物にはならないだろう。

このような魔法の練習の際に的になりそうな不要物を学園は、都市の各所から回収しているらしい。持続可能な取り組みというやつだろうか。


「なるほど。まずは対象の理解ね、メグ」

「その通りですわ。今日は板一枚を貫通しつつ木箱を全体を壊さないように、木箱に三回魔法を打ち込む、という特訓ですわ」

「結構難しいわよ?あたしは初めての時、一発で箱を壊したりしたから」

「構造の理解も必要ってことだな」

「はい、兄上。まずはこの木箱の蓋を用意しましたので、練習で撃って見ましょう」

そして、今の自分の魔法そのものへの理解から始めるわけだ。


この若葉組には共通点がある。それは全員が主要な系統である、強化、付与、魔法を使えるという点だ。

即ち、魔法の得意なメグはもちろん、ライリーもイザベラも魔法の取り扱いは俺とナデシコより慣れている。

故に、頼りになる先輩なのだ。


その後、何度か練習をしていざ本番。結果は、というと。

「ま、今日の所は引き分けね」

「壊した箱の山に立ってなきゃ、もっと良かったんだがな」

二人とも、一つ目の箱はあっさり壊し、2つ目でクリアした。


「というか、よかったの?今日この訓練で勝負してたら、あっさりリベンジ出来たじゃない」

「はぁ?お互いに初めての勝負ならまだしも、よく知っている訓練で、初めての相手に勝って何が面白のよ?」

「わたくしは面白かったですわよ?」

初心者狩りを許さないライリーと、勝つことが重要と考えるメグの違いが面白かった。

「わたしは剣で兄上に迫るので、そのおつもりで」

……イザベラは厄介だな。実際、剣術と刀術は違う筈なのに、この一週間でさえ、目に見えた成長を見せている。


その後は、同じ訓練を何度か行ったり、砕けた木箱をなるべく飛び散らせず魔法で集めたりと、全員合同で訓練をした。

教師陣曰く、魔法はある程度自由に楽しみながら使った方が、身に付くのだとか。その実践に関しては、俺達はとても得意だった。


「……さて、そろそろ、片付け時間だ。…終わったら、ヤマトくんとナデシコくんは、こちらに来るように」

パタン、とユディット先生が本を閉じる。その時間感覚は正確だ。授業でも、午前中ぴったりに終えるように話をしている。


「ちょっと!なにやらかしたのよ、兄貴に姉貴」

「課題の提出、いや発表かしら?」

「発表、ですの?」

「まぁな、魔力の鍛錬法を教えて貰ったんだが、それを3分以上やるって課題を出されたんだ」

「3分ですか。魔力の量が増えるほど負担が大きくなると聞きますが、お二人なら大丈夫ではないでしょうか?」

「そうよ。あっさり合格しちゃいなさいよ」

「ええ、お二人の成功に掛けた方が、勝率が高そうですわね」

片付けをしながら、三人に応援された俺達だった。



「……それで、全員で来たと。…その通り、確かに魔力の鍛錬法の経過の確認だったのだが…」

全員集合した俺達を見て、ユディット先生は薄く口角を上げた。微笑ましいものを見たようだった。


「…まぁ、見学は許可しよう。…それでは、二人とも、準備はいいかな」

「「はい!」」

「……よろしい、始めたまえ」


最初は呼吸から始める。何気なく出来るレベルには、俺達の家庭教師、ネリーの域までは行けなかった。それでも、日々成長して来た自覚はある。魔力が手の間に集中する。


「…全く、とんでもない魔力量ね」

「ですが、それだけ制御は難しく、負担も大きいはず…」


そんな声も聞こえる。俺達が魔力鍛錬の中で身につけた集中状態は、何も耳に入らないような没頭状態では無い。

むしろ、周りを感じ、その中心に自分がいるという俯瞰的な集中状態だ。


「安定していますわね…」

「……やはり、家庭教師が、良かったようだね。…久しぶりに、頼って良かった、よ」


世界には魔力が満ちている。こちらに来たときに感じた強い違和感の正体。今ではそれは俺達の身体の中にもある。ならば、無為自然に操る事が出来るはずだ。


「ねぇ、そろそろ3分じゃない?」

「……その通り。…もう少し、という所だが、終えるつもりはないようだ、ね」


これまでの最高記録、3分40秒。課題は記録上ではクリア済みだ。しかし、それは昨日までの話、成長を証明するなら、それより上に行かなければ意味が無い。しかし、恐らく3分を超えた辺りで魔力に重さを感じ始める。ここからは、耐える時間だ。


「兄上、姉上も…あんなに汗をかいて…」

「…常に魔力を一定に出し続ける、ということは、不安定な足場でバランスをとり続ける行為に似ていますわ。加えて、魔力の量が多いと言うことは、大きな荷物を抱えた状態に等しいのですわ」

「始めは良くても、徐々にバランスを崩して、やがて倒れる、ってわけ?」

「……いい例えだ。…今の二人はまさに瀬戸際だ、ね」


もう少し、もう少しだけ、と誤魔化してきたが、限界は不意に訪れた。

魔力が霧散する。それと同時に、身体を支える力も一瞬抜けたが、なんとか踏ん張った。


「はぁ…はぁ……き、記録はどうだ…?」

「はー…ふぅ…後、どっちが、勝ったの…?」


どうやら、ナデシコも今終わったようだな。落ち着いて、見渡せば心配そうな三人と、冷静なユディット先生。


「……ぴたり『4分』同時だったよ。…つまり、引き分けだ、ね」


こうして、俺達は課題をクリアしたのだった。

報酬は無い、それでも達成感はじわじわと湧いてきた。目標タイムに届いた競技者もこのような気持ちになるのだろうか?


「あー!もう!次は勝つ!覚えてなさい!ヤマト!」

「ハッ!負けねぇよ。ナデシコ」

口ではそう居つつも、その対抗心には正直、負けてしまいそうな俺だった。


拭った汗をそのままに、二人でハイタッチを交わす。

乾いた音が、演習所に響いた。それはまるで陸上のスタートの音のようだったが、俺達にとっては一つのゴールテープだった。



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