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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第二節 学びは交響曲

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120.前のめりでいこう。異界の知識の対価。



「き、気を取り直しましょう!ほら、さっきの鍛錬法!この状態ならもっと出来るんじゃ無い?」

「あ、ああそうだな…」

ナデシコにも気を使わせてしまった。しかし、確かにこの状態でクリアできても仕方ないが、感覚を掴むことは出来るかもしれないな。


「じゃ、早速!」

「やるか!」

振り切るように、先ほどの鍛錬法を試す。


そして、俺達は前のめりに倒れた。その衝撃で、髪色も元に戻ってしまった。


「……先ほども言ったように、魔力量が多いほど、精神的疲労の具合は跳ね上がる。……どうやら、制御力は、向上した魔力量に対応出来るほど、強化されてなかったようだね」

「先に言いましょうよ、ユディット様」

地面に伏したまま、その分析を二人で聞いていた。


その後、応接室に戻った俺達は、額に濡れた布を乗せていた。血は出ていないが、打撲を心配したエマ先生がくれたものだ。


「……では次に、始めて発動した時とそれ以降の違いについてだが…」

ユディット先生からの質問は続いていた。

それに答える過程で、必然的にこれまでの道中の様子も話すことになった。もちろん、極めてプライベートな事は話さなかったが。そんな振り返りを兼ねたインタビューも一段落ついた。


「……なるほど、参考になったよ。…ありがとう、ね」

「大変、というか忙しいというか……人生の濃度が濃いですね。お疲れ様です」

「そりゃどうも。エマ先生も飲み物とか色々ありがとね」

「世話になった。…もう夕方か」

外を見れば、日が傾いていた。そう言えば、学園に不要な荷物は朝の先生ハウスに残したままだったな。


「……さて、ここでキミ達に提案、というかお願いだ」

「なにかしら?」

「……キミ達の世界の事に興味があってね。…キミ達の当面の衣食住にかかる費用、全てワタシが面倒みよう。…代わりに、二人それぞれ一日一つ、異世界の事について教えてほしい」


「今日みたいに話をする時間を作るってことか?」

「……それも考えたが、お互い、時間が合うか分からないし、記録にも残したい。…そこで、日誌形式にしようと思っている」

「日誌?」


「…形式は、見開きの1ページを四分割し、

 左上に異世界の事柄や用語の説明。

 左下はワタシの質問。

 右上にはその回答。

 右下にはワタシの総括。といったところで、どうだろう」

「どうだろう、って言われてもね…」

「俺達は、異世界でも学生で、そこまで専門的な知識は持ってないぞ?」

「……キミ達の持っている知識、かつ、記せる範囲で構わない。…そう。例えば、今日の授業で叫んだ『プレイボール』や『ストライク』。…あれは異世界の用語だ、ね?」

「そ、そうね」

どちらかと言えば野球用語だが、異世界の用語ではある。


「……まずは、そう言ったキミ達がとっさの時に使ってしまう用語や、なんなら異世界の創作物の紹介でも構わない。…ワタシが欲しいのは、世界が違う故に生まれた違い。…新たな発想が欲しいの、さ」

「異世界の創作物…。私も気になりますね…」

なるほど、ユディット先生の知的好奇心を満たすためか。俺とナデシコは顔を見合わせて、頷く。

正直、金銭的には困ってないが、新たな知識を得たいという、その心境は理解出来る。

それに断った時、へそを曲げられて学園や王都での活動に支障があっても困るしな。まぁ、そんなことは無いのだろうが、俺達にも理由付けはいる。


「分かったわ。その提案を、受けましょう」

「……そうか、嬉しいよ。…エマ、まだ記入していない、白紙の本はあったかい?」

「はい、今取って来ますね」

その後、エマ先生から渡されたのは、そこそこの厚みのある一冊の本だった。表紙や背表紙にも何も書かれておらず、中身を見ると全て真っ白だ。それが二冊。俺達に一冊ずつ渡された。


「……日誌帳、とでも呼ぼうかな?…一日に一つ、と言ったが、まとめて書いて貰っても構わない。…30項目で1ヶ月、それが目安さ」

夏休みの宿題みたいだ。溜めれば大忙し、早めに終わらせれば余裕がある、みたいなところが。


今更だが、こちらの世界も30日で1ヶ月。1から12の月まであり、『12の月』と『1の月』の間の5日間が新年祭となっている。12の月と5日の祭日で合わせて、365日だ。


「まずはおすすめ作品を30作品選ばないとね」

ナデシコさん、あなたもしかして、レビュー日報を作ろうとしてます?

「だったら、俺は用語でもまとめるか」

初日はとりあえず『野球』でいいだろう。


「……楽しみにしているよ。…では、今朝立ち寄った家の鍵だ。受け取るといい」

「えぇ!?一緒に暮らすんですか!?」

驚いたのはエマ先生だ。それはそう、むしろ先に驚いてくれて助かった。


「……いや、ワタシとエマは、研究室でしばらく生活する」

「初耳!」

「……どちらにも同じような設備はある。…水回り、台所はもちろん、公衆浴場の給湯器を家庭サイズまで縮小したものまで、一通り揃えたいるから心配ない、よ?」

家庭用の給湯器、あるのか。この公衆浴場が一般的な世界で。さすが、その装置の設計者。尊敬する。

しかし、問題はそこじゃないだろう。


「でも、私物とかあるでしょ?」

「……エマが出勤してから全て移動済みだ」

「初耳!」

「男女の学生が一つ屋根の下って、こっちじゃ普通なのか?」

「……寝室は元々、二部屋だ。…客間には信頼出来る家事手伝いもいるから問題ないさ。…無論、ベットのシーツや枕、掛け布団も新品を用意した」

「初耳!」

初耳ボッドと化したエマ先生が可哀想になるくらい、準備を整えていたらしい。さすが、スーパーマイペース。全く尊敬出来ない。


「……だめ、かな?」

「うっ……わ、分かりましたよ!」

「……ありがとう、エマ」

決まり手、おねだり。恐ろしく早い降参。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

こうして、俺達はしばらくの間、一軒家で暮らすことになった。


「ねぇ、ヤマト。私達、先生達がいちゃつくダシにされたんじゃ…」


かもな。



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