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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第二節 学びは交響曲

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117.穏やかな昼食。一方的な出会いの瞬間。



俺とナデシコはユディット研究室の応接間で、ユディット先生本人とその助手エマ先生と食事をとっている。

王都でも食事前の祈りは変わらなかった。音頭をとったのはもちろんユディット先生。

メニューは異世界風コンソメスープ、ラケル産の腸詰めを焼いたもの、焼かれたパンだ。


「鶏ガラは入ってるみたいだな。たしか、コンソメの材料には牛骨も入ってたと思うが……。だけど、これも十分美味い」

「私も美味しいと思うわよ。……あとは見た目だと、透明度が足りないわね、あく取りに卵白は試した?それからろ過も必要だったはずよ」

異世界風コンソメスープは香味野菜と肉の旨みは確かにあった。だが、そのコンソメと呼ぶには惜しいものだったので、つい味の分析に夢中になってしまった。


「……なるほど、参考になる…」

「…今日はスープの研究会ですか?お話はご飯の後にしましょうね?」

「……そうだ、ね。…エマが焼いてくれた腸詰めも、パンも美味しい、よ」

「もう、ユディット様ったら…」

俺達のコメントをユディット先生はメモして、エマ先生に注意されていた。その後エマ先生は、すぐにデレていたが。

ここで、誰が焼いても味はそこまで変わらない、と無粋なツッコミを入れることは出来なかった。


結局、食事は和やかに終わった。スープは俺達の世界を、腸詰めは少し前に旅立ったラケルを、それぞれ思い出させた。


「……話したいこともある。出すべき課題もある。…しかし、まずはキミ達に謝ろう。…すまない。キミ達の出身、事情、共にエマには話している」

「その、どうしても、お二人が気になって、私が聞いたんです。ユディット様を運んで来た事情が知りたくて…」

二人は申し訳なさそうにしている。


「あー、そう言えば、特に何も言わずに帰っちゃったわね。むしろ、ごめんなさい」

「俺達も別に強く口止めしてないしな。そもそも、誰かに話すと正気を疑われる話だし、気にしないでくれ。というか、エマ先生は信じたのか?」

「正直、半信半疑ですよ。別の世界なんて…」

「そうよね」

「だよな」

「.……キミ達が共感してどうする」

仕方ないだろう。もし俺達の世界で別の世界から来た、なんて言われたら半信半疑どころか、全部疑う。

それっぽかったら、ちょっとワクワクすると思うが。



「……エマ、食後のお茶を頼めるかな?」

「はい、ユディット様」

そう言えばこの研究室に入ってから、エマ先生は学園長、ではなくユディット様と呼んでいる。


忘れがちだが、ユディット先生も過去に世界を救ったとされる人物だ。その人物と親しげなエマ先生も十分常識から離れた人物なのでは、と俺はいぶかしんだ。でも、仲間というより、もっと親しいような…。

配られたお茶にそれぞれお礼を言い終わる頃には、その疑問を忘れた。


「……さて、まずは食事前にも少し話した、ラケルでの事について、話そうか」


ラケル閉山祭、それは鉱山『地竜背びれ』の数十年に一度、地殻変動が起こりその坑道が閉じる際に行われる。

ラケルの人々にとってそれは、坑道が閉じると同時に新たな鉱脈が生まれる祝いの祭りだ。

その際には、様々な催し物が開催され、各都市の有力者へ招待状も送られる。


催し物の例をあげると、英雄アーテナイに挑む権利の抽選会、歴史を振り返る演舞、その後にアーテナイと挑戦者の試合、町を挙げての宴会等。

今、例に挙げたのは、俺とナデシコが参加したものになるが、ユディット先生が参加したのは、競売会。


「……競売会の目玉は、ラケルの職人達が作った武器達だ。…しかし、時に魔物の素材が出品される。…買い希望が多い珍しいものなどが、ね。…ワタシの目当てはこちらだ」

そこに、世にも珍しい『魔物になりかけのブラックベア』の毛皮も出品されたそうだ。


「……そもそも、動物が魔物になるという現象自体が、稀だ。…その過程の一品、是非とも研究材料に欲しくてね。…少々値は張ったが、いい買い物だった」

「毎度あり」

「喜んで貰えたようでなによりね」

「……キミ達が持ち込んだものだとは、後で知ったが、ね」

世間は狭いらしい。思ったよりも。


「……次の日、鉱山方面から違和感を感じてね。…閉山祭時期に遠くからでも感じたから、念のためにアーテナイの自宅に知らせに行った。……その時に、キミ達、ヤマトくんとナデシコくんを見掛けたのさ。…驚いたよ、あんなに楽しげに誰かの頭を撫でるアーテナイを見れるとは、ね」


それは、俺達がこの世界に来て三日目の出来事だ。

つまり、一方的とは言え、こちらに来て三日目には、ユディット先生には出会っていたのか。


「……しかし、それ以上に疑問にも思ったさ、あの二人は何者だ、とね。…エマ、二人の魔力量はをキミはどう見る?」

「私ですか?…そうですね。少なくとも量は特別クラスの子供達や、私より上、流石にユディット様よりは少ないかと…」

俺達も同様の見解だ。この一ヶ月、アーテナイとの修行で魔力が少し増えた気がするが、魔力量でユディット先生に勝てる気がしない。


「……では、彼ら魔力が今の5倍ほどに増えたとしたら?」

「それは、いや、まさか…」

「…ワタシに勝る、そうだね?」

「はい…」

教師二人は深刻そうなやりとりをしているが、俺達はピンと来ていない。そして、ユディット先生は俺達に向き直る。


「……ワタシは、他者が持つ潜在的な魔力が分かる。…今のキミ達は、その潜在魔力の一割から二割程度の魔力しか使えていない」


喉が鳴った。そこに高揚感は無く、今朝の言葉が脳裏をよぎった。


『一歩でも間違えば、建物を壊し、人の命を容易く奪い、キミ達が守りたいものすら傷つける可能性がある』という、ユディット先生の言葉だ。





117話です。いいな、と思ってくれたら☆やブックマークをお願いします。(小癪)



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