115.交流戦総括。初めての宿題。
勝負が付いたところで、俺達はユディト先生に集められた。
「……さて、まずはお疲れ様、皆。…キミ達が行っていた賭け、についてはワタシは、言及しない、よ。…好きに精算なり、今後の交流に役に立てるといい」
そう言えば、呼び名を賭けてたんだったが。俺達が負けたら、在校生組を『先輩』呼びで、在校生組が負けたら兄呼び……いや、なんか一人フライングしてるが、そんな賭けだった。
「……ちなみに、ワタシは引き分けになるように、調整していた。…あくまでも、交流が目的だからね。…しかし、キミ達、一度もワタシの、ハンデを守らなかった、ね」
「「「……あ」」」
分かり辛いが、ユディト先生は若干ジト目だ。第二試合については、恐らく種目ごと変えている。
「……まあ、いい。…おかげで、面白いものが見れた、よ。…それでは、まずはライリーくん、イザベラくん」
「「はい!」」
「……キミ達が挑んだのは、魔力、技量共に、上の存在だ。…届くかどうか、分からない、果てのない道に見えるだろう、ね。…しかし、学び続ける限り、歩み続ける限り、いつか届きうる。…相手に学ぶのもいいだろう。…道に迷った時は、ワタシが相談にのろう。…よく頑張った、ね」
「「はい!」」
二人の前に立った、ユディト先生は微笑んでみせた。
「……次に、メグくん」
「ええ、なにかありまして?」
「……キミは勝利した。…そして、一つの壁を越えたね、おめでとう。…あの、中心に当てた感触を、覚えておくといい、よ」
「…少々やり過ぎましたので、お叱りを受けるかと……」
メグは、気まずげに顔を反らした。あのささやき戦法や、開幕4連続でプレッシャーをかけたことだろうか?
「なに言ってるのよ。挑発には乗る方が悪いし、相手に思うようにさせないのは立派な戦術でしょ?」
意外にもフォローしたのはナデシコだった。
「ナデシコさん…」
「今日の所は、チームで勝てたけど、個人ではメグに負けたわ。いつかリベンジするから覚えてなさいよね!」
「ええ!受けて立ちますわ、ナデシコお姉様」
その時、俺達から見ると初めて、メグの表情が年相応な少女の笑みになった気がした。
「……最後に、ヤマトくん、ナデシコくん」
「「はい!」」
「……キミ達にとって、今日の試合はどうだった、かな?」
「楽しかったわ。制限の中で、どう全力を尽くすのか学べたし、条件次第や気持ちの問題で負けることも学べたわ」
「面白かったよ。一つの武器で戦って来たから、相手や他の武器への理解も必要だって分かった。俺も気持ちを緩めて、武器を壊されたからな」
「……そうか、なによりだ。…いい試合だったから、一つ、キミ達が知りたい事のヒントをあげよう」
思わず、ナデシコと揃って息をのんだ。
それは、ユディト先生が知ってる、俺達の世界への帰還の手掛かりに他ならないだろう。
「…ワタシが、話すのを躊躇っているのは、キミ達の生い立ちや事情からではない。…キミ達が、まだまだ未熟、そう思ったからだ、よ。…故に、熟達次第では、教えよう。…励み、学び、ワタシを納得させたまえ。…それまでは、キミ達はワタシの生徒だ。…いい、ね?」
「上等よ!」「上等だ!」
元々、ここで3年間も足止めは食らう予定はない。
魔法を学び、遊んで、強くなる。そして、帰り道を突き止める。俺達に大人しくしてる時間はない。ガキらしくいこう。
「そろそろ、午前は終わりですね。今日はここで解散としましょうか。学園長、なにかありますか?」
「……さて、実はエマにも話したことは無かったが、ワタシは自分のクラスを受け持った時に、叶えたい夢があった」
「え、初耳です…」
夢とは大袈裟だな。先ほどまで、締めに入る為、皆の前に立ったエマ先生も驚愕の表情だ。
「……一度でいいから、生徒に宿題を出し、『えぇーっ!』と言われたい」
「思ったより俗っぽい!?」
「……教師と生徒の温かな交流、というものに憧れたのだ、よ」
「絶対もっと他にありますって!」
「……その意見は後で聞こう」
「強行する気だ、この人…」
コントが始まったのだろうか。ユディト先生は、ともかく聞く耳を持たないらしい。
「……では、いつまでも『特別クラス』では味気ないので、ね。明日までに、このクラスの新たな名称を考えて貰おう。…これが宿題だ。…わかったか、ね?」
「「「えぇーっ!」」」「えぇーっ!…ですね」「えぇーっ!…ですわ」
「……ありがとう、キミ達がワタシの生徒で良かった」
「絶対、今言うセリフじゃない…」
クラス一丸となった姿に、ユディト先生は感動、エマ先生は呆れ気味だった。




