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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第二節 学びは交響曲

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112.一般生徒。特別クラスのはじまりの日。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マーガレット。12歳。教会時代の成績は優秀。その魔力の大きさが、とある貴族に目にとまり、ユディットとの面談にこぎ着けた。……ということになっている。


「……久しぶりだ、ね。…マルグリット・ミッドガルド。…と言っても、前は5歳だったかな。…その時に、魔力適正の検査をした以来だけど、ね」


マルグリット・ミッドガルド。12歳。人間側の王家、ミッドガルド家の次女の名前である。

公式の記録では、大病を患い、中等部への入学を延期し、現在も療養中とされている。


「まぁ、わたくしはマーガレット。メグ、とお呼びくださいな。……ただ、ここでは、という言葉は付け加えさせて頂きますわ」

その少女は、一切の動揺を見せない。

「……キミ達とは、500年近い付き合いだが、相変わらず、魔力では、キミ達のウソは分からない、な。…まぁ、すでに原因は特定してるのだが…」


エルフ特有の感覚、魔力の『淀み』。それは、魔物やその者が望まぬ状態でいることを検知する。

故に、ウソをついてる者の魔力は『淀む』。これが、エルフがウソを見破ると言われる根拠、その一である。

しかし、例えば、そのウソを本当の事と思い込んだ者には当然反応しない。

後は、信念を持って、自己のウソを正当化しているものなどにも。


ただ、人とよく関わるエルフにとっては、経験から分かるものもある。なにせ、寿命が10倍以上だ。

これが、エルフがウソを見破ると言われる根拠、その二である。


「……そうそう、確かに、ワタシはエマ……女性と同棲を始めたが、女性なら誰でも好き、というわけではない。…だから、王都のイベントで、貴族の子女がワタシに、迫るのを止めてくれない、か?…エルフ王家を抜け、『七星将星』の肩書きを持つ、ワタシをそちらに取り込みたい、という意図があることは分かっているが、迷惑だ」

「いえ、あれは王家の意向ではありませんの。皆さんの『私もチャンスあるかも』という、可愛い乙女心ですわ」

「……頭痛が、する、な」


今度はウソじゃないと分かった分、ユディットは頭を抱えたくなった。


マルグリット、いやメグは、ウソを見抜かれる前提で動いている。王家の肩書きを背負って、魔法学園に通えば、一代派閥を持つことを意味する。それは、将来の役に立つだろう。

しかし、ユディットの教え子としての立場を天秤にかけた時、それはあまりに軽い。それほどまでに、王都でのユディットの影響力は強い。当の本人は、嫌がっているのだが。


「……さて、無駄話もここまで、だ。…キミの素質については、言うまでもない、だろう。…単刀直入に言おう。我が学園の特別クラスに入る気はあるかい?…そして、キミが望むなら、特別扱いは、しないでおこう」


メグは頷く。本来なら、王家仕込みの返礼をする所だが、一般生徒はそんなことをしないだろう、と判断した。

欲しいのは、王家の子に対する教育ではない。実力で勝ち取った特別クラス最優秀生の座だ。



ミッドガルド王家の継承権は、兄弟姉妹間の実力で決まる。現王は男だが、女王も過去に居た。

その実力は、様々な視点や観点から計られるものであるが、その比重を占める者が二つ。

多くの貴族や市民に指示されることが第一。第二に、本人の魔力量や資質。


そして、マルグリット・ミッドガルドの第二の資質、魔力量では歴代でも最高とされている。

ちなみに、そのお墨付きを与えたのは、ユディットだ。5歳の魔力適正の検査際に、ユディットの何気なく漏らした一言が少女の運命を加速させたと言ってもいい。


当然、期待を受けた。だが、少女はその期待を苦にも思わなかった。

厳しい教育はやり応えのある娯楽程度だったし、貴族間の付き合いも楽しんですらいた。


15歳、高等部相当になれば、専門的な学問の修得と共に、社交の場にも参加するようになる。


その時、初代特別クラス出身、というカードは是非、手に入れておきたかった。

そして、そのクラス出身者とのコネクション、繋がりもきっと役に立つ。

全ては、机上で完結した結論だが、マルグリット・ミッドガルドは、この手の計算を外したことが無かった。


故に、ただの一般生徒のマーガレット、メグはそのクラスに大いに苦戦することになる。正確にはそのクラスメイトに。


初日は軽い自己紹介と学内の案内のみ、ユディットはある程度基礎を終わらせてから、というのは正直落胆したが、仕方ないとも思った。放課後になったので、早速級友と交流を持とうと思った。


「は?お友達?なに眠いこと言ってるのよ、アンタ達は敵よ!この学園で最初のね!」

「お友達、ですか。すいません、剣を嗜まない方と、どのように付き合えばいいか分からないので、失礼します」


早々に教室から、出て行ってしまった。交流計画は初日から暗礁に乗り上げた。

今までの付き合いでは、定番に近かった『お友達になりましょう』に対する反応が上記の通りである。


「二人ともやはり、個性的ですね…。…『絵に描いたような直情型』『どこかズレた剣士』…学園長のメモ通りだなぁ……」


その様子を見た副担任のエマも困惑気味に零していた。メグから見た彼女は、普通の教師である。

とても、ユディットの右腕とは思えない。むしろ、声を掛けられても逃げてしまいそうな、そんな雰囲気であった。


「エマ先生、ちなみにわたくしについてのメモもございますの?」

「え?ああ!なんでもないですよ!ホントに!ホントですって!……あ、明日の準備があるんでした!さよなら~!」


どうやら、隠さないといけないものだったようだ。エマも慌てて去って行った。

その時、一枚の書類が落ちた。何気なく拾う。そこには、マーガレットの名前と提出した教会での成績等の記載があった。


「教育係の方に、書いて頂いた教会換算の成績、なのですが……ん?」


特に知られて困る情報は提出していない。しかし、その書類の端に、書類を作成した人物とは違う筆跡を見つけた。

一度黙読をした、後、見間違いかと思い、見返し、最後に音読することにした。その書かれている内容は……。


「……………………『世間知らずの子供』…ですわね」


奇しくも、異世界に来たばかりのヤマトとナデシコと同じ評価であった。

こうして、特別クラスの初日は、メグに人生初の挫折をはっきりと自覚させて終わった。


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