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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第二節 学びは交響曲

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106.第一試合の終了。衝撃の決着。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「大したもんだ」

「…そちらこそ」

ライリーの機転と意地は見せて貰った。しかし、今の勝負でナデシコはまた何かを掴んだ。

数字の上では同点だが、正直、ライリーが勝つ未来は見えない。

イザベラを横目で見る。平静を装っているが、手は拳を握っている。

そう言えば、とメグに目線を送れば、

「あら、何かありまして?」

「いや、何でもない」

微笑みを返された。自然体にも見える。少なくとも動揺は見えない。

そんなことをしてるうちに、二人は戻ってきた。


「……さて、残り2回。…同点、面白くなってきた、ね?」

「ユディット先生、お願いがあります!」

「……おや?ライリーなにかな?…怪我は、無いように感じるが…」

「はい。いまさらだけど、ハンデ、無くしてください!」

その言葉に、驚いたのは、恐らく全員だ。


「……ほう…」

「ライリー、何言ってるのよ、大丈夫?」

ナデシコなど、頭の辺りをしげしげと見ている。


「大丈夫だっての!知りたくなったのよ、あんたとの差、ってやつを!沈めてみなさいよ、出来るもんならね!」

「へぇ…いい度胸じゃない。私はいいわよ?」

ナデシコは、その言葉を受けて笑う。それを見ても、ライリーは怯まない。


「……当事者同士の合意があるなら、いいだろう。…しかし、急所への攻撃は無し、それは遵守してもらおう…いいかい?」

「分かったわ」

「はい!」

ライリーは返事の後、こちら、いや同級生の二人を見た。


「……二人とも、ゴメン!あたしから賭けに出たけど、勝ち目を薄くすることして…」

「いえ、わたしが取り戻せばいいだけですので、お気になさらず結構です。」

「どうかお好きになさって、わたくしは勝ちますので。思い切り、悔いなく、楽しんでくださいな」

「……ありがと、二人とも」

短いやりとりだったが、少しだけ、この三人の関係が見えた気がした。


「クックック、勝ち目が薄い?まだ、一片の勝ち目があると思われていたとは、私も舐められたものね…」

分かりやすく悪い顔で、ナデシコは無意味に手の平に魔力を集めてそれを握りつぶした。


「…ナデシコさんは、いつもあんな感じなんですか?」

エマ先生は、俺にこっそりと聞いてきた。

「…はい、楽しんでるナデシコが一番厄介なんです」

俺は苦笑しながら答えるしかなかった。


「そこ!近い!」「……同意見、だ」

ナデシコと担任からのクレームに、俺とエマ先生はお互い、一歩距離を空けた。苦労してるな、お互い。


「……では、気を取り直して、いこう。…次は、二つ。…と言っても、あまり関係ないか、な?」

二つの石を左右の手に持ったユディット、その視線の先には、構えを取った二人がいる。

お互い、石では無く、相手を見ている。


ナデシコが、全身に凄まじい魔力を纏わせているのに対して、ライリーは両手に集中。

例えるなら、全身甲冑とグローブの差。そこまで、差は決定的だった。

だが、ライリーは今、笑っている。ナデシコも油断はしていない。


「……では、始めたまえ」

吹く突風が合図になった。石が宙に舞い上がった時と、ナデシコの踏み込みは同時だった。

一瞬、消えたかと思うほどの、深い沈み込み。体躯が小さい筈のライリーの下からのボディブロー。


「ど、どうしたの、まだ、あたし、沈んでない、わよ?」

それを、ライリーは両手で受けて止めて見せた。いや、違う、ナデシコが狙った所に、手を置いていた。


恐らく、もうライリーはナデシコの性格を見切っている。

急所がないから、頭への攻撃を除外。沈ませて取りにいくという宣言から、腹への打撃に一点掛け。加えて怪我を心配していたナデシコから、殴り飛ばす、のではなく、その場でとどめる打撃と判断。

とんだ博打だ。見誤ったら、怪我じゃすまなかったぞ。


しかし、賭けに勝ったにも関わらず、代償を払うハメになったのも、ライリーだ。

すぐに、反撃するつもりだったのだろうが、ナデシコの一撃を受けた代償は安くなかった。

今も、足が小刻みに震えている。力を抜けば、崩れ落ちてしまうのだろう。

なのに、軽口を返しただけでも、驚異的だ。恐らく、ナデシコが手を引けば、そのまま倒れる。


「ライリー、楽しかったわ。またやりましょう?」

ナデシコは、纏っていた魔力をなくす。困惑したのは、俺以外。


「…ハァ!」

ナデシコは動いてないように見える。しかし、ライリーの背から、衝撃が抜けたのがはっきりと見えた。

「ガ、ハ…」

ライリーは、その姿勢のまま、気を失った。地面に崩れ落ちる前に、ナデシコが支える。


「ねぇ、石、拾ってくるから、預かっててくれる?」

ナデシコは、ライリーを抱えて持ってきた。

「……いや、必要ない。…こうなっては、続行不能、だろう。…形式的には、11対9、とでもしておこうか」

ライリーを受け取った、ユディット先生は、地面に置くとライリーに魔力を流し始めた。恐らく、治癒術。

「ライリーさん!?良かった、息してる……」

エマ先生を始め、在校生が駆け寄ってきたが、穏やかに息をしてるライリーを見て、安堵のため息を漏らしていた。


「…一体、何をしたのですか?」

イザベラの目には、批難の色があった。

「随分しびれてたみたいだし、ちょっと押して、気絶させたのよ。中身を壊さないように調整するには、魔力がちょっと邪魔でね」

「……?」

疑問の色の方が、濃くなった。


ナデシコ使ったのは、寸勁すんけい。別名に寸拳、ワンインチパンチとも言う。

超接近距離からの衝撃を伝える打撃、のようなものだ。魔力を使った状態で、放てば、恐らく身体の機能に障害を残したも知れない。魔力を乗せるわけには行かなかったのだ。


「随分、お優しいことで」

わざわざ気絶させなくても、手を引けば、倒れ伏しただろう。

恐らく、気絶させて早めに治療を受けさせる為に、あの一撃を打ったのだろう。

俺の言葉に、ナデシコは機嫌悪そうに、ムスッとしてしまった。


「なに言ってるのよ。自分で倒れたより、私に倒された方が、燃えるタイプでしょ、ライリーって。私の為の投資よ、勘違いしないでよね?」

見事なツンデレ構文。無意識だろうか?


その後、ライリーは無事に目を覚まし、一通り悔しがった後。


「分かったわよ!今は、あたしの負け!……いつか、リベンジするから、覚えてなさいよね!」

「フン!いつでも歓迎するわ!」

見事なツンデレ構文で、再戦を宣言するのだった。ナデシコもそれを受けた。


やっぱり似てるよ、二人とも。



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