表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第二節 学びは交響曲

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/139

105.冒険者の娘。ライリー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ライリーの父、元A級冒険者にして、現警備職の男は運のいい男だった。

仲間に恵まれ、大きな怪我もなく、A級に上がれ、ロニアで多くの依頼をこなし、貴族の役人にも気に入られ、騎士爵も勧められたが、きっぱり断り、今の職を手に入れた。

警備の仕事についてすぐ、冒険者時代に護衛した商家の次女と再会し、交際を経て結婚した。義兄夫婦、義両親、実両親の仲も良好。順風満帆、絵に描いたような元冒険者としての成功譚。


しかし、男が昔の仲間や、同僚に語るのは13年前からずっと娘の自慢話である。


うちの娘が可愛い、の枕詞から始まるその自慢話は、酒が入ればより悪化する。

誰もが呆れながら聞くその内容に、2年程前から、疑わしい内容が混じるようになった。


「ホントにうちの娘は凄い!なんせ、あの歳で俺から一本取ってくるんだぜ!強化なんか、その辺の冒険者なんか目じゃないね!あんまり調子に乗らないように、B級くらいだな、って言うけど、やっぱり褒めたりないよな!」


親の欲目、ここに極まり。元一流の冒険者でも、自分の子供には盲目になる。

絵に描いたような元冒険者の悪い酒癖だった。周りからすれば。


伝説的存在、ユディットの特別クラスへの編入が決まる、一年前の酒宴の席での出来事であった。



ライリーは、自分の才能について、非凡であることをよく理解していた。自負もあった。尊敬する父は、いずれ越えられる壁であり、街を行き交う冒険者を見ても、時には自分の方が強い、とさえ思った。

幼い頃から聞かされた黒竜討伐の『七天将星』のおとぎ話、いずれ自分の居場所はそこにあると無邪気に思っていた。ユディットとの面談、その日まで。


「…キミがライリーくんだね。…教会時代の筆記成績はそこそこ。魔力も申し分なく、強化の適正も高い。…単刀直入に言おう。我が学園の特別クラスに入る気はあるかい?…もし、望むなら、ワタシの教え子として、鍛えてあげよう…」


対面した時に分かった、絶望的な力の差。感じたのは本能的恐怖。今までの自分の思い上がり。自負は砕け散り、頭は自分の足下を確認するように下がった。それでも、顔を上げ、見据え、頷くことは出来た。


「……ほう、思ったより、才能がある、ね。…勉学も、頑張るといい、意外と無駄にならないものだ、よ?」


そして、出会った。自分と同程度、あるいは上に居るかも知れない、同世代の二人。

二人とは不思議と気が合ったし、自分と同じ学び取る意志を感じた。一ヶ月、充実していた。


そして、今朝、正体不明の二人が現れた。

教室で感じたのは、恐らく自分より、上の力を持っている程度。

この一ヶ月をぶつけるに丁度いい相手だと思った。


「……っ!分かったわよ!……そのハンデ、貰うわ…!」

ナデシコからの威圧は、まだ自分が頂きへの道を一歩程度しか、歩めていないと教えられた。

自身の見通しは甘く、飲んだハンデは苦汁そのものだった。

それは、ライリーをまた一歩、進ませた。


「よし!」

そして、ハンデ有とは言え、掴んだ一勝。ライリー、今まさに成長期、ど真ん中。

実感と共に、目の前のナデシコを見た。


「………え…」

小さな、呟きは誰にも届かなかっただろう。目線の先のその人物は、今の逆境を無邪気に楽しんでいた。



続く勝負、放たれた石は4つ。互いに、2つずつ取り7対8。前半戦終了、ライリーのリード、揺るがず。

あまり間を置かず、3つの石は上昇気流で打ち上げられた。



「(……これで、確定かな)」

空に放たれた三つの石の軌道を見ながら、ナデシコは内心で、二つのことを結論を付けた。

即ち、偶数個の時は左右に散けさせ、奇数の時は『一つ』は中間地点に落ちる。

先に中間地点の石を取りに行けば、その間に自分側に落ちる石は拾われるだろう距離。


「(……必勝法、有)」

チート。即ち、ツバサで翔る。2割程度でも、余裕綽々の勝利確定。欠点、クソダサい。早々に却下。


「(……正攻法、有)」

苦手な魔力の節約と制御を完璧にこなし、中間地点に先に到着、予測される攻撃を防御し、石を拾う。欠点、高難易度。利点、楽しそう。超採用。

ナデシコがその結論を出した直後、石は頂点へ到達、落下を開始。


駆け出す二つの風、それはライリーとナデシコ。その初速、同速。


「(……切り替えの手本、ライリーのおかげね。あとは、2割を超えないように……違う!2割の全力を出せ!)」

弱気な思考を放棄した。


ナデシコ、制限違反無し、本日最高速度を記録。一つ目の石、落下と同時に確保。


3つ目の石の落下点にも、ナデシコは先着した。石はまだ空中。

だが、そこで違和感を感じる。


「(……おかしい、予想よりライリーが遠い……動揺?…違う!)」

ライリーの選択、それは助走を付けたショルダータックル。狙いは、ナデシコを後退させての石の確保。


「(……ハッ!最適解!最高ね!ライリー!)」

この場においても、ナデシコは笑う。あざ笑ったのではない。さらに上昇した難易度を楽しんでいた。


「来なさいっ!」

「……っ!」

ライリーの渾身のタックル。接触、ナデシコは大きく後ろに倒れた。そう、ライリーの想定を上回る程に。


この世界の戦いは、対魔物戦に特化している。

一方、ナデシコの世界、現実世界ではひたすらに対人戦を突き詰めている。それは、武器の有無に関わらず、今日まで研鑽、相伝が続いている。


故に、ライリーが受けたのは、未知の感覚。突撃した筈の自分が、宙を舞う。接触した際に、掴まれた服を支点に身体が半回転、仰向けになりながら落ちてくる石が視界に入った。


ナデシコが行ったのは、巴投げ。勢いを殺されたのではない、生かされたのだ。


「背中に魔力を込めなさい!」

「……くはっ!」


ライリーがとっさに反応出来たのは、日頃の鍛錬の成果か。怪我はないだろう。それでも肺の中から空気が逃げ場を求めて息を吐く。のたうち回らなかったのは、なんとか起き上がって、勝利に手を伸ばすため、しかし、遅かった。


「ゲット!……あ、大丈夫?怪我無い?頭は打たないように、投げたけど…ライリー?」

勝利を手にしたその人物は、こちらを気遣っていた。

ライリーに答える余裕は無かった。だから、精一杯強がりで、笑った。

心配そうにしていたナデシコは安堵したように笑って、二つの石を見せつける。


「さぁ、追いついたわよ!」



9対9、ナデシコが同点に持ち込んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ