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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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97.実体のある手掛かり。振り回す者。



「……っ!」

隣から、ナデシコの奥歯を噛みしめる音が聞こえた。だが、食って掛からないだけ、冷静だった。

ナデシコも察しては居るのだろう。


「信じてくれたようで何よりだ。……それで、いつなら、聞かせて貰える?」

ユディットは、『今』と『出来ない』という言葉を選んだ。なにか知っているが、言えない事情、もしくは条件があるのだろう。


言うつもりがないなら、知らないと言えばいい。

俺達から代償を引き出すつもりなら、知ってると言うはずだ。


「……『今』はダメだ。条件も、いずれ、ね。……意外と、冷静だ、ね。…キミ達ほどの年頃の人間に、対して用意した答えとしては、一撃程度、覚悟の上だったのだが…」

無表情の仮面は変わらない。


「しないわ。例え殴って吐かせて、それで帰れても、私達は納得出来ない。なにより、この世界で寄る辺もなかった私達に、こっちの世界で助けてくれた『みんな』に胸を張れないじゃない」

「……キミ達は、いい出会いをしたようだ、ね」

「でも、今からその情報を賭けて勝負って言うなら、遠慮無くぶん殴るわ」

「……アーテナイの影響、かな?」

いいえ、わりと元からです。


「あ、あの…!お話の途中に、ごめんなさい…!その、お二人が、嘘をついていない、というのは、なんとなく分かるのですが……本当に?」

本当に別の世界から来たのか、フルリス様の常識とはあまりに異なったのだろう。たまらず、という感じで割って入ってきた。


故に、ユディットの持つ手掛かりに信憑性が出た。


エルフの感覚でも、驚くべきことらしい。

それに驚いていないのは、この場に俺とナデシコ以外に二人。ユディットとネリーだ。

特にネリーは、ユディットに向けた意味深な視線。


「わたしも二人は嘘も、勘違いもしてないと思うな。先代女王としての直感もそう言っているのです。二人の事は応援するよ。協力も、出来る範囲でするよ。少し秘密があるわたしを、まだお友達だと思ってくれるなら、ね?」

にこやかにお茶を嗜んでいるが、どこか含むことところがありそうだ。


「舐めんじゃないわよ。友達でも秘密の一つや二つ、あるでしょ」

「こっちも勝手に察したりさせて貰うけどな。今度の交渉のテーブルでは、話したくなる材料でも用意するさ。それ以外は、これまで通りでいいだろ?」

「ふふ、ありがとう。二人とも。……ひょっとして、別世界の恋物語も聞けるのかな?」

「文章は持ち込めないのよ、記憶頼りでいいなら話すけど」

「わーい!」

ナデシコの脳内少女漫画コレクションで引き出せる情報なら苦労はないのだが、流石に無理か。


あるのだろう、なにか別の世界の手掛かりが。

今までに無かった手応えだ。雲を掴むような話だった。しかし、今はその雲に実体があり、掴めると分かったようなものだ。だったら、後は空を飛べばいい。その雲まで届くように。



「……フルリス、今の女王がキミだとは、分かっている。…だが、この二人については、ワタシの管轄とさせて貰えないだろうか」

「お姉様直々に…?」

「……そうだ、ね。…後で、説明の時間でも、作ろう」

「…分かりました。七天将星、緑のユディット様にお任せします」

「……承りました。フルリス女王陛下」

ユディットは、その場で跪いた。可憐な女王に傅く伝説の魔法使い、絵になる構図ではあった。

しかし、顔を上げたユディットは薄い微笑み、フルリス様は困ったような苦笑。それは、姉妹の光景だった。仮面の下には、俺達と同じ家族を持つ人間味があるエルフがいた。



「……と、言うわけで、キミ達の身柄は、ワタシが預かる。…拒否権を、行使しても構わない」

物騒な言い回しだった。だが、


「上等よ。というか、『いずれ』が来るまで付きまとうつもりだったから、願ったり叶ったりよ」

「同じくだ。すぐ納得させてやるから見てろ」

背中も尻尾を見せるつもりはない。真っ直ぐ俺達のやり方で、帰り道を掴んで見せる。



「……ところで、二人とも、アーテナイから、ワタシについて何か言われなかったかい?」

ん?なんだろ、心当たりと言えば…


「魔法の知識・技術に関しては世界一?」

「下水道、浄水施設の各都市に設置した功労者?」

「エサルカくん似て凜々しお顔!」

「お姉様はお優しい方だと思います」

ネリーとフルリス様も参戦した。


「……流石に少々照れる、な。…どれも外れだが」

ユディットは眼を反らした。特に顔色は変わらなかったが。そうか、だったら…。


「アーテナイが自分よりマイペースだって言ってたわよ」

「契約書を出して来たら裏面までしっかり見ろ、ってさ」

「ごはんの時間になっても、本を読むの止めなかったよね?」

「多くの方に気を持たせるような態度なのは、いかがなものかと…」


「……耳が痛い、な。……お母様の言っていること以外、身に覚えが………いや、契約書?……アーテナイめ、まだ引きずっているとは……」

ユディットは長い耳を撫でていた。少ししょんぼりしている。いや、前科ありかよ。

そして、メイドさんに対するあの態度は天然なのか…。


「……はぁ…キミ達は、ワタシに、魔法を習うように、言われたのでは?」

ユディットは、ため息交じりに、言葉を吐いた。


「あ……」「そう言えば……」

帰郷への思うが逸り、つい出てこなかったのだった。

魔法を習うならユディットにしろ、だから自分からは教えない。そんなことをアーテナイから言われていた。



「すごいですね、お母様。ユディットお姉様が振り回されてるの、初めてみた気がします」

「そうだね。いつもは、ユディットちゃんが、みんなを振り回す方だもんね」


ネリーとフルリス様は、俺達に関心していた。




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