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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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96.求めるのは一つ。全てを賭ける。



「という訳で、ナデシコよ」

「ヤマトだ」

「……先ほどの名乗り?…について、いくつか分からない事が……」

「雰囲気重視よ。特に意味は無いわ」

「お茶に流してくれ」

「……そうか、舞台に詳しい知人にでも聞くとするか……」

暖かな拍手をしているネリーとフルリス様、呆れた表情のメイドさん、なにやら思案にふけるユディット。

俺達に対する態度は3つに分かれ、混沌を極めていた。原因は俺達なのだが。


「……キミ達は、興味深いね。…持ち物、魔力、そのユニークさも、ね」

ユディットは力を抜いたように、フッ、と笑った。その後に、お茶を飲むのだが、一々様になっている。

ユディットの方が、よほど舞台役者のようだ。


「今日は本当に珍しい事ばかり…。お母様とお姉様のお帰りに、ヤマト殿とナデシコ様の来訪、日記に記す出来事に事欠きませんね」

「そうだねー。ユディットちゃんも気まぐれにしか帰らないし」

「……必要に応じて、帰っているつもりなのだが、ね。…現に、年始祭や行事には出席を心がけている、出来るだけ…」

まるで姉妹のようなフルリスさんとネリー。対するユディットは一見、似てないようにも見える。

小柄で、顔立ちも愛らしい二人。女性で俺と同じくらいの身長、170cmくらいで、顔立ち凜々しいユディット。

二人が日常系の萌え漫画的雰囲気としたら、ユディットは男装令嬢ものでも看板張れるようだ。

後、たわわとスレンダー、いやコレは違う。

余計な事まで思い浮かんだが、言いたいことは、その間の空気感は家族のそれであったということだ。



「……さぁ、本題に入ろうか。…キミ達の来訪の目的は、ワタシだろう?」

ユディットは、俺達を見据えている。そこに、エルフ親子の間にあった空気はない。

どこまで、知っているんだ。本当に会った記憶は無いが、どこかですれ違っていたのか?

眼の前の人物は、全てを知っているようでもあった。

いきなり現れたことも、それに拍車を駆けている。


「そうなの?二人とも?」

「そう言えば、『アーテナイ様の友』とお姉様が…。それから、お二人も『弟子』と…。まさか、比喩でもなく、本当に…?」

ネリー、フルリス様も俺達を見ている。そこにあったのは、純粋な疑問だ。この二人にも俺達の目的を話して居なかった。あれよあれよ、という間に女王陛下とのお茶会だった。

俺達の巻き込まれ体質にも困ったものだ。



「そうね。アーテナイの紹介状もあるけど、まずは私達の言葉で伝えるわ。いいわよね、ヤマト」

「ああ。ここで誤魔化すのも、不誠実だしな」

視界の端でメイドさんをみた、魔力による聴覚強化を解除している。…全く、出来る人だ。



「私達は、こことは別の世界から来たの。知りたいのは、帰り方」

対峙する三人とも、驚愕、いや戸惑いの表情を浮かべた。

以前聞いた話だと、エルフは嘘がなんとなく分かるそうだ。だからこそ、その頂点の三人には、俺達の言葉が真実だと伝わっただろう。


「アーテナイは、ちょっとした勝負の結果、俺達に協力を約束してくれた」

俺は荷物から、書状を取り出す。それは、アーテナイの紹介状。

この世界には、封蝋、シーリングワックスの文化があった。

その文様には、公的文章の証明の役割もある。


「私達が今持ってる手掛かりは二つ。一つは迷宮廃都『クザン』での噂話」

その奥地で、まるで『別世界』のような場所があるのだとか。


「そして、この世界で一番の魔法の第一人者、そう、ユディットさん、貴方だ」

こうして並べると、どちらも不確かで曖昧だ。

でも、縋るしかない。そして、諦めるつもりも毛頭無い。


「私達が払える代償は二つ。異世界の知識、それから私達自身ね。こう見えて、私達は不思議の塊よ。自分でも笑っちゃうくらいね」

魔力ない世界で生まれたのに、この世界基準でも常人離れした魔力を持つ。

ツバサは生える、髪の色は変わる、魔法でない力を使う。世界を越えた所有物を持つ。

どれも、原因不明。向き合えば怖くなるくらいだが、利用出来るなら全部使う事に躊躇いはない。

笑いながら使ってやる。


「俺達の世界の作法で恐縮だが、こう頼むしかない」

ナデシコと二人で立ち上がり、深く深く頭を下げる。

プライドなど安い、二人で帰る事に比べれば、家族に会えないことに比べれば、塵よりちっぽけだ。


「お願いします!何か知ってる事があれば、教えてください!」

「私達に出来ることは、なんでもします。助けてください!」


これ以上のレイズも出来ないオールイン。隠し札もない。


「「「…………」」」

目の前には、三つの沈黙。

ネリーは、息を吸い込み、目を閉じている。

ユディットは、俺達を見ている。

フルリス様は、そんな二人を不安げに交互に見ている。

沈黙を破ったのは、ユディット。



「……恨むぞ、アーテナイ…」

そんな呟きだった。ほんの小さいその呟きの真意を問う前に、ユディットは次の言葉を繋げた。


「……一つ心当たりがある」

思わず、二人で顔を上げた。

ネリーはその言葉に息を漏らし、厳しい視線をユディットへ向けた。

フルリス様は俺達と同じく驚愕の表情を浮かべている。



「……だが『今』のキミ達に、教えることは、出来ない…」



ユディットは、仮面のような無表情で、そう告げた。



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