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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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95.緑風との出会い。何気ない『普通』という言葉。



「ねぇ、ヤマト。私達も何か出しましょうよ」

「お茶請けならラケルのドライフルーツがあっただろ。今、出すよ」

焼き菓子はすっかり数を減らしていた。消費量が二倍になったせいだろう。お茶会の後は、地面の蟻達は大層喜ぶに違いない。

荷物から、ドライフルーツの詰め合わせの袋を取り出した。


「ふふ、ラケルのドライフルーツですか。私も好きですよ。お二人にとって、故郷の味、というわけですね」

メイドさんがいつの間にかそばに控えていた。そのメイドさんに袋を渡すと、お皿に見事に並べてみせた。

「他にラケルの物もあるの?」

「ああ、料理に使う刃物とか調理器具も一通り持ってきた。どれもドワーフ製だ」

刃物、と言った時にメイドさんからの視線を感じた。出さないって。

「後は、『アーテナイさまぬいぐるみ』もあるわよ。はい、試作二号ぬいさま」

ナデシコも荷物からぬいぐるみを出した。

ちなみに初号は、今も商店で看板娘をしているだろう。


『アーテナイさまぬいぐるみ』はデフォルメされたアーテナイのぬいぐるみだ。

ラケルでは、一家に一人、職場にも飾られたりする。売り上げの一部が、開発者である俺達の元に入るので、旅費や生活費にも苦労していない。俺達の異世界での資金源だったりする。

これがなかったら、地道に冒険者をして資金を稼ぐルートもあったかも知れない。

今更だが、そっちの方が王道だったな。すでに王道からサヨナラ売買バイバイしてたみたいだ。



「まぁ、可愛らしいのですね。アーテナイ様とは、何度かご挨拶する機会がありました。つい緊張してしまうのですが、この方ならば大丈夫そうです。はじめまして、二号さま」

ぬいぐるみを受け取った、フルリス様はその頭を撫でながら挨拶した。実年齢はともかく、少女のような純真さだ。

一方、ネリーはそのぬいぐるみとナデシコの鞄を見比べている。二つは、ほぼ同じサイズだ。


「ナデシコちゃん。あのぬいぐるみ、どうやって入ってたの?」

「……残念だったわね。トリックよ」

残念なのはその言い訳だろう。ナデシコよ。


このバックパック、『取り寄せバックパック』は実は一つの進化を遂げていた。この世界の物が入るようになったのだ。

相変わらず、俺達の物以外は入らない等のいくつかの制限があるが、ますますチートアイテムじみてきた。


気付いたのは、アーテナイとの修行でアーテナイに二人で一撃入れた夜。

俺達は、かってにレベルアップ記念だと思っている。

決して、考えても分かんないし便利だからいっか、みたいな投げやりな結論ではない。



「………興味深い、な。…体積的な矛盾、にも関わらず、魔力を消費した様子もない。…詳しく、見せてもらえないか…?」

知らない声が耳元で聞こえた。その人物が居たのは、丁度俺とナデシコの中間地点。

弾かれたように、その場から離れる。椅子が倒れる一瞬内に、ナデシコは構え、俺は腰の『姫桜』へ手を伸ばす。


「………すまない。…驚かせるつもりは、なかったのだが…」

その場に残ったのは、一人の長身の女エルフ。目算で俺より少し背が高い。俺達以外も、今その人物に気付いたようだった。皆、絶句している。ユグドラシル親子も、メイドさんもだ。


「……会うのは2回目、なのだが。…ああ、あれはワタシが一方的に、キミ達を見つけたの、だったか…?」

その人物は、周りに一切配慮した様子はない。

その姿は、光を反射するような白金に近い金髪、髪色と同じ長いまつげ、気だるげな垂れ目は緑。

怪しい人物ではあるが、一目見たら忘れられそうにない美女だ。


「……では、自己紹介から、始めよう」

風が吹いた。魔力を帯びたその風は、目の前の人物から吹いている。抑えていたものを外した、そのような印象を受ける。

事実、それまでは感じられなかった魔力は、確実に俺達より上だ。それも数段。


「……七天将星しちてんしょうせい、緑のユディット。…よろしく、アーテナイの友たち」


その魔力は、まるで夜の森の泉だ。静謐でありながら、底が見えず、覗き込めば飲み込まれるようだった。

七天将星しちてんしょうせい、その名をいたずらに名乗るものはこの世界に居ない。俺達は少しだけ警戒を解くことにした。



「………ユディットお姉様!?」

「…え?ユディットちゃん!?」

一拍遅れて、ネリーとフルリス様の二人も驚いたようだ。ネリーは大きく目を見開き、フルリス様はぬいぐるみを、ギュッと抱きしめた。


その二人にのんきに手を振るユディット。…いや、待て今の発言に聞き捨てならない言葉があったぞ。

「……やぁ、フルリス、久しぶり、だね。…お母様も、お父様との思い出の地巡りから、一時帰宅されたばかりかと思いますが、お邪魔しています」

フルリス様を軽く撫で、ネリーに一礼する。つまり、フルリス様の姉で、ネリーが母で。と言うことは、この人も…。


「……ああ、今キミ達がしている想像は、若干違っている。…ワタシはすでに、王家に籍はない。…家族であることは変わらないが、ね。…まずは、落ち付いて、話をしようじゃないか。……時間は、あるだろう?」

ユディットは、懐から短い杖を出し、振る。俺達が倒した椅子は、宙に浮かび、元あった場所に戻った。



「…キミ、ワタシの椅子とお茶を……おや、もう用意したのかい?…いい子だね」

「は、はい…光栄です…!ユディット様!」

メイドさんは分かりやすく、照れていた。確かに、パンツルックのユディットは、まるで男装の麗人のようだ。物語から出てきた、という形容詞すら負けてしまうかも知れない。

なにせ、このユディットを元にした物語すら、この王都にはあるのだから。

偽物、勘違い、その線はすでにないだろう。ナデシコと目を合わせ、自分の席にもどる。


「それじゃ、名乗らせてもらおうかしら」

たたずまいを直して、ナデシコがユディットに視線を真っ直ぐ向ける。


「え?普通に?」

とは、フルリス様のお言葉。


ナデシコは、無言で立ち上がった。そして、俺にも無言で起立を促した。

やるんだな!?今…!ここで!?

2回目ですよ?週に一回で丁度いいと思うんですけど!?

目線で語りかけるが、ナデシコに譲る気は無いらしい。

ユディットは首を傾げ、一度見た王家のお二人はなんだか楽しげだ。



「なんだかんだと聞かれたら!」

「答えてあげるが世の情け!」


2回目につき、以下略。


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