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【学園編開幕】異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~【現:二章三節】  作者: 沢クリム
『緑ノ章 愛歌のロニア』 第一節 出会いは狂騒曲

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94.幸せを語る絵。女王のお仕事。



あの名乗りの後、他のエルフ達は俺達とネリーを見比べ、妙に納得のいった表情をしていた。どういう意味だろうか。

類は友を呼ぶ、この言葉はこちらの世界にもあるのかも知れない。


その後、場は解散となった。

フルリス女王はネリーをお茶会に誘い。俺とナデシコは、それ同行を許可される形で招待された。フルリス女王が直接、一介の『旅芸人』を誘う形には出来なかったのだろう。

そう、旅芸人。また肩書きが増えた俺達だった。



「改めて、ヤマト殿、ナデシコ様、この度は我が母、コルネリア・ユグドラシルがお世話になりまし」

「はいコレ、フルリスちゃんが小さい頃に書いてた絵だよ~」

「お母様!?」

お茶会の会場は庭園だった。世界樹の木陰のこの庭園に置かれた机と椅子には、俺とナデシコ、ユグドラシル親子の4人しかいない。ネリーも聞き慣れた言葉使いだ。

そして、携帯していた下げ鞄から、まるでフォトフレームのようなものに紙が挟まれた、それを取り出したネリーは俺達に寄越す。旅の間も携帯していたのか。


「へぇ、上手ね」

「ナデシコ、そこは敬語の方がいいんじゃないか?」

「大変よろしゅうございますなぁ」

「何故に京言葉?」

俺達も若干、気が緩んでいる。眼の前に置かれた、香しいお茶と焼き菓子がそうさせるのだろう。

このティーセットは、メイド服のエルフさんが運んできてくれた。ナデシコと俺は興奮しきりだったのは言うまでもない。

今も会話の聞こえない所まで下がって控えている。しかし、その長い耳にはうっすらと魔力が集まっているのが、注意すれば分かる。多分、実力者だ。ますますわくわくする俺達だった。

だって、生のコンバットエルフメイドだよ?そりゃ、テンションも上がるさ。


「いえ、お二人の楽な言葉遣いで構いませんよ?ここは私的な場所ですので。私はこの言葉使いが素なので、お気になさらず。」

「そうなの?じゃ、いつも通りで。改めて、ナデシコよ。よろしく、フルリス様」

「俺はヤマトだ。旅芸人、アーテナイの弟子、さすらいの料理人、人形達の産みの親とか、好きに呼んでくれ」

「お二人は、お忙しいのですね。………あの、そろそろ絵を返して頂けると…」

「「もうちょい待って」」

絵はなかなか味のあるものだ。手足は棒だし、主要パーツは丸だ。男女の区別が付く程度だが、人影は5つ、男2女3。

ネリーから3人の子供がいるとの発言があったし、家族写真のようなものか。

ネリーは右端だろう。小さい身長で、顔の下に丸が二つある。すると、左端の男がエサルカさんか。

ネリーの話の直後だからか、この絵がとても尊いものに感じてしまう。


この、皆が手を繋ぎ、笑顔の一枚の絵が。



「ん?アーテナイちゃんの弟子?………あ、絵はわたしに返してね?旅の大事なお供なんだから」

ネリーは、一瞬首を傾げたものの。すぐに、手を差し出してきた。

「はい、ネリー。見せてくれて、ありがとう」

「ああ。いい物が見れた。感謝する」

ナデシコは絵をネリーへ手渡した。フルリス様は一瞬手を伸ばしたものの、掴み損ねていた。

ネリーは手元のそれを、愛しげに見つめた後、大事そうに下げ鞄に納めた。

「……また、取り返せませんでした…」

謁見の間では、優しくも厳格な女王といった感じだったが、ネリーに振り回されている今の状態が素なのだろう。力なくお茶を口にしているが、それは自然体に見えた。


「…旅のお供、ということは、いつも旅してるのか?」

ふと、気になった。この『エサルカ城』に到着してから、ネリーは終始楽しげだ。

フルリス様の事も好きなのだと、態度の端々から伝わる。


「んー、ここ10年くらいのマイブーム?エサルカくんとの思い出巡りだよ!女王は忙しかったのです。フルリスちゃんも、とっても立派な女王になったしね」

「気が長いマイブームね。いや、エルフ感覚だとそうでもないのかしら?」

「フルリス様も忙しい中、出迎えお疲れ様です」

「いえ、入場門から審査を受ける分いつもより大人しいのですよ?」

「普段はどうなのよ」

「いつもはねー。門のみんなに挨拶してから、門を飛び越えてるよ」

ネリー以外の三人で頭を抱えた。


その後、お茶を飲みながら、女王の仕事を教えてもらった。

俺達だから、という訳ではない。この国の一般常識の範囲だそうだ。なんとも、豪華な教師陣だった。


人間側の王家や貴族が、王制の元、行政や都市運営がその役割だとする。

一方、エルフ王家は女王制の元、『世界樹の若木』の管理が役割だ。

『世界樹の若木』は魔物の侵入を防ぐ『防魔林』の親株、のようなものらしい。

管理することで、街道の安全を確保し、株分けで安全地帯を増やす。


女王は毎日、『世界樹の若木』の状態を特別な魔法で探り、必要に応じて魔力を注ぐ。

空き時間はあるが、休日のない、旅行など行ける筈もない業務であった。

『世界樹の苗木』だった頃は、持ち運び可能で、魔物避けにしていたそうだ。

ある意味、ここは世界的防衛機構の本拠地、とも言えるはずなのだが……。



「ナデシコちゃん、甘い物好きなんでしょ?焼き菓子は蜂蜜入りと茶葉入りはどっちが好きだった?」

テーブルの上には、クッキーのようなものがあった。

その味は二種類、ほんのり甘く香りのいい蜂蜜入り、甘さが控えめで茶葉が練り込まれたものだ。

「私はどっちも好きよ。ちなみに、甘味に一家言あるのはヤマト」

「そうでもないぞ。だが、あえて言わせて貰えば、俺は蜂蜜味が好きだ。シンプル故にお茶とよく合う。だが、茶葉入りはその香りで、口の中の風味をお茶に戻す事が出来る。故に、この二つ味が同数用意されているのだと思う。蜂蜜味を摘まみ。お茶を飲む。会話を楽しんでいる途中、口の中の風味を変える為に茶葉入りの焼き菓子を摘まめば、またお茶を飲みたくなる。会話とお茶が進む、見事な組み合わせだ」

「……本当に、『さすらいの料理人』なのですね」

「ちなみに、二つ同時に食べても、また別の味わいがあるぞ。あまり、行儀は良くないが」

「…もぐもぐ……あ、ホントだ!香りと甘さの組み合わせだね!」

「胸元が汚れてるわよ?ネリー」


このように親戚の家に遊びに来たようなノリでいいのだろうか。


メイドさんから、「コイツ、出来る…!」という視線が送られたが、スルーすることにした。








今回掲載分からタイトルを一部変更しています。


旧:異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~


新:異世界快進劇 ヤマトナデシコ ~超人カップルにとって、異世界転移は旅行同然!帰るまでが旅行です~


内容や方針に変更はありません。よろしくお願いします。(作者)

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