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沙也加と僕  作者: ユキから
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別世界と名残り

クリスマスイブは、約束通りサヤカがうちに来て、大パーティーを開いた。

父さんと母さん、もちろん僕もだけど芸能界入りについては、ずっとサヤカには秘密にしておこうということになっている。

無邪気な笑顔で騒ぐサヤカ、それに歩調を合わせる母さん。

二人で料理を作っていたり、ケーキの生クリームをわざと鼻の頭につけてはしゃいでみたり、これから来る日々の予想を忘れさせてくれた。


夜、すでに10時前になってる。サヤカを家まで送って行く。

「あゝ、メッチャ楽しかった〜。これ、ずっと続けようね、何年か先には、ウフ、私たちの子供も・・・もっと楽しいだろうね?」

『こ、子供?あ、あのさぁ、ちょっと気が早くねぇ?』

「いいじゃん、10代でママになってもいいかなって思ってるよ。何人?トモ君は何人がいい?」

『何人って、そんなこと考えた事もない。サヤカだって、心変わり・・・』

「何?今、なんか言った?」

キッと睨んできた顔は、まさしく鬼の形相、どうやら禁句みたいだ。

『あ、いや、ここら辺で?』

「ダメ〜、今日はうちまで送って。お母さん、ちょっとでいいから、トモ君を見たいって。」

『あ、そっか?でも、こんなに遅い時間でも?』

「いいの、うちもトモ君家みたいにオープンだよ。遠慮することなんて全然ないよ。」


初めての訪問が夜10時って、いいのか?


『こんばんわ。初めまして、山城友哉といいます。』

「ようこそ、サヤカの母です。さあ、上がって。」

『あ、いや、もう遅いので。』

「いいじゃない、お家に電話して少し寄って帰るって言ってちょうだい。」

うーん、サヤカと同じで、有無を言わさない?まあ、悪い気は全然しないけど。


スリッパが出され、リビングに通される。

「まぁ〜、サヤカの言う通り、友哉さんって・・・」

「お母さん、途中で止まってるよ?それじゃ、感想にもなってないよ。」

「あ、そ、そうね、いや、お母さんがもっと若かったら、きっと放っておかない。」

「ヤーだ、お母さんがライバル?信じられない、酷くない?」

「サヤカ、いい人を見つけたわ。よろしくお願いしますね。この子、結構我が儘言うでしょうけど、言い過ぎの時は、パチッと叩いていいですから。」

「ヤダよ〜、トモ君、そんな事しないよ、メッチャ優しいんだから。」


サヤカの家を出て、帰り道を歩いている時、これから必ず起こる出来事を思い出していた。

明日の朝、東京の事務所に打ち合わせの為に行く事になっている。

すでに僕の人生を確定させたことになり、この先サヤカと同じ道を歩けるかどうか、分からなくなるのだ。たとえ僕は心変わりなどしない自信があるが、美少女のサヤカを他の男子が放っておかないだろうと思う。

15才になったばかりの僕にとって、初めての苦悩だ。


東京駅のホーム、新幹線を降りると目の前に、マックの店員さんとは、まるっきり違うイメージのユイさんが、満面の笑顔で迎えてくれた。

「ようこそ〜、お待ちしてました。」

『あ、ユイさん?』

「ウフフ、案外キレイと思ったでしょう?この間まで2才年上だったのに、今は・・5才?ヤーだ、私だけ年取った?」

軽い冗談でも、家を出る時から異常に緊張していた僕にとって、少しホッとした。


電車を乗り継いで到着したのは、これから仕事をする新宝明プロの社屋だった。

エレベーターに乗り、最上階の5階で降りた。

正面に社長室の札が出ている。ユイさんは、ノックをしドアを開けた。


「いらっしゃい。さあ、お掛けなさい。」

あの夜の背広姿の人が、今日はジャケットを着ていた。

優しい顔で迎えてくれたので、ようやく緊張感が解れ始めた。


父さんの仕事の関係で、契約書などの必要書類は僕が持参してきて、それを渡した。

じっくりと確認した社長さんが、スクッと立ち上がって手を差し出して来た。

その手をそっと握りしめると、力一杯握られ

「絶対スターになれるから、頑張って!」

キッパリ言われた時、ジーンときた。


社長室を出、ユイさんの後をついて、3階の部屋へ。

中には、ラフな服装の男性が数人、派手な服装の女性も数名が忙しそうに働いている。

ユイさんは、部屋の真ん中に立つと、大声でみんなに僕を紹介してくれた。

何故か、オーッと言う歓声と拍手が起き、よろしくお願いしますと頭を下げられた。

僕も、名前だけ言い、お願いしますと頭を下げた。


皆さんはいずれ自己紹介するから、今日はこのままで。そして、ユイさんの机の横に座った。

「アッと言う間だったけど、疲れたでしょう?」

『あ、ええ、かなり。』

「そうだよね、今から今後の打ち合わせをするんだけど、ここじゃ落ち着けないわね?隣の喫茶店の方がいい?」

『あ、ええ、その方が。』

「じゃあ行きましょう。」


ビルの外に出て、さっきは気付かなかったがすぐ隣りに喫茶店があった。

そして、奥行きの広い喫茶店の奥の方の席に座った。

「どう、東京の初日は?」

『人が多いです。それに、賑やかです。』

「昨日の夜は、これの数倍煩かったのよ。クリスマスイブだったからね、今日もその余韻がまだ残ってるね。」

『あ、なるほど、そういうことですね?』


「早速だけど、今日から友哉さんは正式に新宝明所属のタレントさんです。」

ユイさんは、システム手帳を開きながら、説明を始めた。

単純なことも、複雑なことも丁寧に説明してくれるので、すぐに頭に入ってくる。

専属のマネージャーは、ユイさんが引き受けてくれたようで、その点は有難かった。


「ところで、一つ大事なことを確認しておきたいんだけど、正直に答えてね。」

『あ、はいもちろん。』

「ラーメン食べた時、好きな子がいるって言ってたよね?」

『エッ、ええ。』

「お付き合いしてるの?」

『あ、まぁ。最近ですけど。』

「そっか?・・・何か考えないとね?」

『マズイんですか?』

「そうね、うちの社運をかけてあなたを売り出すのよ、その新人に女性がいる・・・あ、悪い事だと言ってるんじゃないのよ。ウーン?」

考え込んでしまったユイさんを、僕はすがるように見ていた。


「ねえ、その子って可愛い人?」

『ええ、多分、僕が知っている女性の中では最高です。』

「ふぅーん、あの街にいたっけ?」

『います。』

「私、何カ月も居たんだけど、アイドル系の子は・・ん?あ、ちよっと待って。」

ユイさんは、言いかけた話を止め、システム手帳を急いでめくっている。

それから、今度はバッグの中を漁っている。


何やら、小さな紙を取り出し

「まさかとは思うけど、この子じゃないよね?」

表を向けて手渡されたのは、写真。遠くからのアングルで撮られているから、ようく見ないと誰なのか分からない、が、僕には、それがサヤカだと判った。

『アレッ?どうしてサヤカの写真を?』

「あらっ?まさかのまさか?」

『どういうことですか?それに、これって盗撮ですね?』

「スナップよ、あ、本当に彼女が相手なの?」

『ええ、間違いないです。』


ユイさんが、サヤカの写真を持っていた理由を説明してくれた。

「あそこのマックで観察を始めて、少し経ってからだったわ。確か、女の子二人で入って来たの。ハッとしたわ、だから、念の為、一枚撮らせてもらったの。」

『ハッとしたって、もしかして、スカウトですか?』

「ウーン、そこは・・・ま、いいか?」

自問自答していたのか、ユイさんが声を小さくして


「一応、スカウト対象にしてあるの。ただ、今のうちの戦略はアイドル女子じゃなくて、男性スターを輩出することなの。」

『それで僕ですか?』

「女性アイドルって、今、全盛でしょう?特に、グループばっかり、集団で売り出してるじゃない?うちの会社の予想だと、あのトッブグループ以外は、あと数年持つかどうか?今、この子を売り出すとしても、斜陽の波に乗せられちゃったら大変でしょう?」

『あ、成る程。確かに、飽和状態になれば、後は崩壊ですね。』

「そう言うこと。この子をスカウトするとして、数年持つのが正解かな?」


それらも含めてサヤカとの事を、どうするか考えてくれるらしい。もしかして、別れろと言われるかも知れないと思ったことは、いい方に回避出来そうだ。


昼食後も打ち合わせが続いて、ようやく初日の仕事(?)が終わる。

「今から、暫くの間の宿泊先に案内するわね、食事はその後でいいでしょう?」

『ええ、』


会社から20分程歩いたところに、まだ出来て新しいビジネスホテルがあり、そこに宿泊するらしい。

荷物を部屋に運び、食事に出掛けた。

食事をしながら、ユイさんにサヤカの事を色々聞かれた。

「で、もうしたの?」

『何をですか?』

「あら、惚ける気?チュウとか、最後までとかは?」

『チ、チュウ?し、してませんよ、まさか?』

「まだなの?」

『まだっていうより、あ、まだ中学生ですよ。』

「中学生だって、やっちゃいけないことないでしょう?ふぅーん、まだなんだ?」


この話題に今のところ意味はない。

食事が終わりかけた時、ユイさんの携帯が振動し始めた。

席を外して聞きに行ったユイさんが戻って来た。

「あのね、悪いけど急用が入ってこれから会社に戻らなきゃなんなくなったの。」

『あ、はい。じゃあ、僕も帰ります。』

席を立って、ユイさんのあとを追う。


ホテルの部屋に落ち着いた時、サヤカからメールが届いた。

メールには、かおりと過ごしたクリスマスの話題がほとんどで、その中で、僕とのことをかなり怪しまれているらしい。

けど、どうにか惚け通したので、まだまだ秘密にしていようと書いてある。

それに対する返事を書いていると、やはり正直に言うことの出来ないジレンマを感じ、度々、手が止まってしまうのだった。

予定では大晦日に一旦帰り、3日には、又、東京に帰って来るスケジュールだ。

サヤカへの返信に、初詣を楽しみにしていると書いておいた。


翌朝、ユイさんに言われていた出社時間より、少し早めにホテルを出た。

会社の前まで来ると、さすがに早過ぎるので、隣の喫茶店に入って時間を潰すことにした。

中には、出勤前のサラリーマンらしい先客が、何人もいた。

多分、今までお客さんが座っていたと思われる窓際の席に着く。

周りには、僕のような子どもは勿論いないから、注文を聞きに来てくれた店員さんも少し戸惑っているのが分かる。


外の寒さから、あまり慣れていないがカフェオレを注文した。


すぐに運ばれて来たカフェオレを、僕の前に置きながら、店員さんが声を掛けてきた。

「新宝明プロの方ですか?」

その声の方を見上げると、笑顔のステキな女性だった。

『あ、ええ。』

「あまり見かけませんね?」

『あ、昨日からですから。』

「あら、じゃあ新人さんってところかしら?」

『ん?あ、まだまだ何も。分かりません。』


立ち去ろうとしない店員さん、と、そこへ

「コラコラ、うちの新人に毒を盛ってないでしょうね?」

ユイさんが入って来た。

「あら、相変わらず失礼ね?あ、もしかしてユイッチが担当?」

「そうよ、半年もかけたんだからね、変なことしないでよ!」

「変な事?は、しないけど、いい事は、しちゃおうかな?」

「コラーッ!アハハ、サユリ、久し振りね、昨日、いなかったよ。」

「昨日はお休み、そんなことより、中々ね。」

「エヘン、だよ。凄い?」

「あ、うん。凄い、認めるわ。ねえ、相手役に私を推薦して?」

「アハハ、無茶振りしないでよ、いつも言ってるでしょ、サユリくらいのレベルは

五万といるって。まあ、諦めることね、それより、コーヒー。」

「ハイハイ、冷たい人には、冷たいコーヒーね。」

「バ、バカねえ、外、メッチャ冷え込んでるのよ。」


「余計な事を言いすぎたかな?」

『おはようございます。ユイさん、いつもここで?』

「いつもってことじやないわ、たまたま友哉さんが見えたから。横に悪女が立ってるし。」

『悪女ですか?仲良しなんですね。』

「まあね、養成所の同期。小宮山サユリって言うの。アイドル志望だったけど、どう見ても」

「どう見てもブス、誰がブスよ?」

コーヒーを運んで来るなり、ユイさんに絡んで来ている。

「お笑いでも通用しないね、ツッコミ力が弱い。今のを言いながら、パンツ見せる!それぐらいの迫力が欲しいわね。」

「パンツ見せるか?あ、今日は白、ちょっと地味?」

「いやいや、白が一番だよ、ねえ、友哉さん?」

『エッ?そこでボク?』

「ほら、今の間、完璧じやない?サユリには無理ね。」


もう少し二人の様子を見ていたかったけど、新しいお客さんが入って来たことでお仕舞い。


「後で言うけど、あなた、芸名を使うことに決まったよ。それから、今日の午後から早速CM撮りが入ったよ。」

『エーッ?そんな、何も出来ないですよ。』

「大丈夫、セリフはないから。必要なのはそのカッコいい顔だけよ。」

『顔?』


事務所に入って行くと、まだ男性二人しか出社していなかった。

ユイさんが引き出しの中から書類を取り出し、打ち合わせ用のブースへ連れて行ってくれた。

「タレントさん達の席を用意していないから、会社に来た時はここを利用して。自由に使ってくれていいよ。ま、本格的に仕事が入るようになれば、1年に1回くらいかな?」

『そうなんですか?打ち合わせとかは?』

「あ、ちょっと待ってて。」


すぐに戻って来て、僕の前にスマホが置かれた。

「これ、今日から使って。打ち合わせはすべてこれで。当面、GPSを作動させるから、行き先なんかも適確に指示できるわ。勿論、変な所へ行かないように監視もね。」

『変な所へなんて行きませんよ。』

「あなたから行かなくても、誘惑されるのよ、この世界は。あ、それから、さっき言った芸名だけど」

そう言いながら、一枚の紙を広げろてこっちに見せてくれた。

その紙には

山城 友哉 → 三条 優也

と、書かれてある。

「いい名前でしょう?私、これからユウ君、ユウヤ、とかって呼ぶね。」

『あ、分かりました。ヘェ〜、サンジョウ ユウヤ か?名前負けしてませんか?』

「してないわ、人気が出そうないい名前ね。この名前で、他のプロフィールは全て秘密。年齢、出身地、家族など、だから、ユウ君は今から謎に包まれるのよ。どう?」

『いいですね。そんなに目立ちたくないですし、友だちなんかには、恥ずかしい。』


三条優也になって数時間後、どこかのスタジオに連れて行かれ、すぐにメイクさんという方に紹介され、鏡の前に座らされる。

メイクさんという名前が、本名とも思えないが、聞くことも出来ないまま、なすがままになっていた。

髪型を変えられ、顔に何か塗られる。眉毛はハサミで整えられ、リップクリームらしいのを唇に。

30分程で終わっただろうか、鏡の中の僕は、名前が変わったように顔もすっかり変わってしまっていた。

ユイさんが僕を見て、笑うでもなく目をパチクリさせていたのは?


CM撮影と言っても、メインは人気絶頂、僕も知ってるアイドルグループの中心人物だということだ。

スタジオに緑色のカーテン?みたいなところに公園にありそうなベンチがポツンと置いてある。

僕は、そのベンチに近づき座る。

たったそれだけの撮影だ。

表情が暗い、座り方を自然に、腕の動きに力が足りない等、何十回も撮り直しになり、ようやくオッケーが出たのは、夜8時になっていた。


「お疲れ様でした。」と、監督さんが言った時、周りの張り詰めていた空気が、一気に和んだのが分かった。

ユイさんに

『皆さんに謝った方がいいですよね?』

「そう?予定よりかなり早く終わったんだけど、今後の事もあるから、ご迷惑をおかけしましたって、一応言っておく?」


その通り、スタッフの皆さんに、大声で言い、頭を下げた。

すると、どこからともなく拍手が送られて来る。

改めて、「お疲れ様でした。」の、声も。


スタジオを後にして、ユイさんと地下鉄に乗る。

「今のうちに地下鉄に乗っておくのも経験よ。」

『地下鉄が移動手段ですよね、東京の地下鉄、覚えるの大変そうです。』

「何言ってるの?簡単に乗れないわよ、パニックになっちゃう。」

あまり理解できなかったので、敢えて質問はしなかった。


その夜、ホテルのバスルーム、鏡の中の自分を見ると、眉毛がキレイに変わっているのと、髪の毛が少しだけカットされたように見えるが、全体はいつもの僕だったので、ある意味、ホッとした。

ベッドに入って真っ先に考えたのは、どう言うCMが出来るのか?メインのアイドルがどのようにして、それに僕がどう絡むんだろうと。

緊張し過ぎて疲れていたのか、気が付いたのは朝だった。


今日からは余程のことがない限り会社に行く必要はない。

ユイさんから送られて来るスケジュール表を見るだけだ。

そして、スマホを見ると、早速届いていた。

10時に渋谷ハチ公前に来るようにとなって、地下鉄の乗り方、駅からの道順も添付されてあった。

ホテルで朝食を食べ、少し早目に出発した。


地下鉄の駅に着いた時から、人の多さに辟易していた。

やがてこの人の波にも慣れるのだろうが、他人と接触しながら歩くのは苦痛でしかない。

今回は途中で一度だけ乗り換えるみたいで、その駅に到着すると、ほぼ自分の意志で歩いていない。電車のドアを出るのも、エスカレーターに乗るのも、全部、前の人に着いて行くだけ、それでも、乗り換える電車のホームに到着した。


渋谷駅では、今まで以上の人がいる。

背広姿の人もいるが、ほとんどがカジュアルな服装。中には、正視できないレベルの格好で歩いている人もいる。

ビルの中から一旦外に出ようとしたら、どうやら階段を間違えたようで、変なドアのところに出てしまった。冷静に考えて、来た道を戻ることにして、階段を見上げた。

すると、僕を見ている女性がいるんだけど、その表情から、この田舎者と今にも言いそうに見えた。

そういうのって、結構恥ずかしいものだ。

目を下に向け階段を上って行った。


次は慎重に出口を探してようやく外に出ることが出来た。

慌てるから間違えるんだと思い直し、ゆっくりとハチ公を探すと、案外簡単に見つかった。

もっと大きな犬の銅像を想像していたけど、思ったより小さかった。

周囲にも、結構人が集まっているだろうと思っていたが、チラホラとしかいない。

銅像を背にして立って見ると、少し離れた位置に、取り囲むように立っている人たちがいた。

そういう事か、と、感心しながら辺りを見回して見る。

平日の午前中なのに、若い人から、少しいい年齢に見える人まで、かなりな人数だ。


時計の針が10時を指そうとした時、ユイさんがやって来た。

『おはようございます。』

「お待たせした?おはよう。」

『道に迷うのが嫌だから、少し早目にホテルを出たんで。』

「んーと、取り敢えず、スタバに行こうか?」

『スタバ?ああ、うちの田舎には無いところですね?』

「そうね、ま、あっちで言うなら、さしずめマックって感じ?」


スタバにも、かなりな人が入ってる。

どうやら、東京ではどこもかしこも、これ位の人が集まるんだろうなと思った。


ユイさんは、僕に気を使ってくれたのか、ホワイトモカを買ってくれた。

空いている席を探して座る。

「どうだった、夕べは?」

『夕べですか?』

「疲れてバタンキューだったんじやない?」

『そうでもなかったですけど、グッスリ眠ってしまったようです。』

「じゃあ、初めての仕事の感想は?」

『素直に大変な仕事だと思いました。あ、スタッフの方達のことです。』

「おっ、スタッフの事?ま、確かにそうね。でも、三条優也は、これからもっと大変な仕事をすることになるのよ、心の準備、出来てる?」

『あ、それはもう大丈夫です。やるからには真剣に、真面目にやろうと思ってます。』


「それで、今日の予定だけど・・・どうしようか?」

『エッ、決まってないんですか?』

「うん。今日は、そうね、東京を案内しようか?」

『東京見物、いいですね、どこも知らないから。』


東京のガイドブックに載っているところを、最初のページから順番に案内してくれると言う。夕方までと時間を決めて、最初に向かったのは浅草の雷門。

さすがに10時を過ぎての地下鉄は空いていた。


有名な提灯の下を潜り、仲見世と呼ばれている通りを歩く。

僕は、物珍しく、キョロキョロしながら、ユイさんの後ろを着いて行くだけだった。

浅草寺にお参りをして戻る。

ここからは、はとバスツアーに参加して時間まで廻ることになった。


「私も初体験なの。一度、このツアーに参加したいと思ってたのよ。」

何ヶ所か巡った。こういう所を、サヤカと一緒に巡るのもいいなぁと。


『一つ聞いてもいいですか?』

「何?何でも聞いて?」

『あと少しで受験なんですけど、どうしたらいいですか?』

「宝明学園だったよね?受験はしっかり受けて下さい。その後の事は、こちらで上手くやるから。あ、でも、必ず合格してね。」

『仕事に影響しないんですか?』




第5話をお楽しみに



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