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沙也加と僕  作者: ユキから
26/33

彼女はアイドル

ようやく「高校生夫婦」がクランクアップして、少しの間の休暇が出来た。

同じように、サクラも2日間だけお休みをとれると言ってきた。


無理強いをするでもない言い方で、「トモ君、お疲れだからのんびりするんでしょう?」


その問い掛けに答えを用意していなかった僕は、つい、黙ってしまった。

そう、すぐにサクラの予定を聞けば、こんな感じにややこしくなっていなかっただろう。


数秒後、電話の向こうの声が甲高い声に変わった。その上、ボリュームが何倍にもアップして

「いい加減にしてよね。あんた、何年も放っておいて、ようやく目の前に現れたっていうのに、何、デートにも誘わないっていうの?んー?あんた、それでも オ・ト・コ!!」


「ホントよ、あんた、最低!沙也加がおとなしくしているのはね、理由があるのよ。本音はね、今すぐ会いたいのよ。そんなことも分からないって言うの?」


真由美さんとかおりさんが、交互に、まるで怒鳴り散らすように。もちろん、僕は口を挟む間もない。

ようやく受話器の向こうでサクラが止めに入り、静かになった。


「もしもし・・・」

サクラの声が聞こえたが、最初より元気がないことはすぐに分かった。

『あ、あのさぁ、実は誘おうと思ってたんだけど、先に怒られちゃった!遅かったみたいだね。ごめん。』

「エッ、ホント?」

『うん。でもさぁ、どう切り出せばいいのか迷ってた。バカだよなぁ。』

「ん〜ん、そんなことないよ。で、誘ってくれるの?」

『ああ、どっか行きたいところある?って、あまり知らないんだけど。』

「私も特に行きたい所って、ないよね。あ、でも、トモ君と一緒ならどこでもいいよ。マックでも。」

『マ、マック?あはは〜、よく言うよ。ん?あ、マックっていいかも。』

「エッ?ヤーだ、冗談よ。もう少しランク上げてくれない?」


僕は一つ思い付いた。急に行きたくなったのがマックだとは、自分でも想像していなかった。


『いや、マックに決めた。明日、朝早くてもいい?』

「う、うん。何時?」

『そうだな、朝7時でもいいかな?えーと、待ち合わせは、渋谷のハチ公前。』

「前に待ち合わせたとこでいいの?」

『うん。来れる?』

「大丈夫。でも、そんなに早くてもマック、開いてる?」

『おう、きっと気に入ると思う。あ、但し、サクラ一人で来るんだよ。』

「当り前でしょう。大切な人とのデートだよ、精一杯オシャレして行くよ。」


そう言って電話を切った。

一応、ユイさんに連絡をして、2日間の行き先を告げておいた。

「なるほど、いいんじゃない。そっか、何年ぶり?いつか、私も行きたいなぁ。」

『仕事があればね。』


「ねぇ、マックって何よ?」

電話を切ると、すぐに真由美が怪訝な顔をして聞いてきた。

「ん?それより、誘いたかったんだってトモ君。えへ、やっぱりね〜。マックでもどこでもいいよ、ねぇ、それより、どこまでしちゃう?」

「あ、って、何を考えてるの?そんなこと聞かなくたって、どうせいつでもオッケーなんでしょう?」

「そうよ、あんた、バカ?はいはい、私たちには興味のない話。」

真由美とかおりは、二人で目の前から消えた。



初夏とはいえ、ここんところ毎日気温が高く、暑い日が続いている。

私は、夏らしい格好をしようと決め、夕べから用意していたミニスカートと、白いブラウス。

日焼け止めを塗り、薄いレモンイエローのカットソーを着て。


家を出るとき、かおりから言われた。

「本当にマックだけだったとしても、当り散らさないでね。」

すると、真由美は

「多分無いけど、お泊まりになっても連絡いらないからね。私たち、今夜は外食するんだ。」

二人とも剣のある言葉で送り出してくれた。

でも、今朝は何を言われても気にならなかった。

もう心は起きた時からハチ公前に到着していたのだ。


東京の平日、電車が混み合っているだろうと思っていたが、さすがに6時台だからだろうが、ギュウギュウ詰めという程でもなく、無事に待ち合わせ場所のハチ公前に5分前に到着した。


『おはよう。お、さすが、綺麗だ。あ、早過ぎたかな?』

「おはよう。全然。トモ君、変装とかしないの?」

『なんで?』

「有名人でしょうが、騒がれると思うけど?」

『大丈夫だよ、ここまで来る電車の中、静かだったから、有名人じゃないんじゃない?』

「ウソだよね〜。で、どこのマック?お腹すいたんだけど。」

『あ、お腹すいたの?そっか、朝ごはん食べてないんだ?』

「うん。トモ君は食べたの?だって、マックでしょう?」


どこで教えようか考えて来た都合、ここで安易な返事が出来ないので

『チョッと遠くだけどいいかな?取り敢えずここから移動するんだけど、タクシーにしてもいい?』

「うん、いいけど、電車は?」

『もう混み合って大変だよ。道が混んでる方が我慢出来るんじゃない?誰にも押されないからさ〜。』

「成る程、一理ある。」


タクシーに乗ると

『東京駅までお願いします。』

それを聞いたサクラ。

「まさか、新幹線に乗ってどっかへ連れてってくれるとか?」

『あはは、東京駅で朝ごはんってどう?』

「斬新な発想でありかも。」


予想外に早く到着した。運転手さんの機転が良かったのだろう、ほとんど停滞なく到着することが出来た。

運転手さんに丁寧にお礼を言い降りようとしたら、僕のことを知っていたらしくサインを求められ、応じた。


東京駅のコンコースは、朝7時台とはいえ、かなり多くの人がいた。

取り敢えず切符を買うため、サクラを待たせてグリーン席を購入しに行った。


『お待たせ、さて、朝ごはんは何がいい?』

「軽いものでいいよ、何だったら電車の中でもいいし。」

『そっか、じゃあサンドイッチとかにする?』

「いいよ。それより、そろそろどこに行くか教えてくれない?」

『ん〜もう少し。すぐにわかるからさ〜。』

「ねぇ、少し分かったみたい。ひょっとして?」

『バレた?多分、正解だ。ということで、お土産を買って行こうか?』

「エッ、本当に?カマかけたんだけど。」

『だって、今後のことがあるじゃん。沙也加のご両親に安心してもらわないと。うちの親も。』

「何年ぶり?3年以上帰ってないんでしょう?」

『そうだよね、なんか付き合わせて申し訳ない。』

「いいのよ、でも、ドキドキする。だって、まさか二人でこんなに早く帰れると思ってなかった。」

『僕もさ。それに、これからだとなかなか簡単に帰れないだろうし。』

「そうなの?」

『サクラがアイドルとして活躍すると、簡単には行かない。それこそ大騒動になってしまうよ。』

「そうなるかなぁ?」

『すぐだよ。』


お昼前、懐かしい駅に着いた。

「どう、変わった?」

『そうだなぁ、あまり変わってないように思うけど、どうだろう?』

「アハッ、噂のマックだよ。どう、変わった?」

『おっ、さあ入ろうか。』

「エッ?入るの?」

『そうだよ、だって、マックに行くって夕べから決めたじゃん。』

「ンフ、そういうことね。なんか、楽しい。」


自動ドアが開く。

いきなり「いらっしゃいませ〜!」と、女性店員さんの大声が聞こえてくる。

レジの前に行き、サクラに

『何にする?』

「トモ君は?あ、せっかくだから昔に戻らない?」

『おお、そうだな。と言う事は、マックセット、飲み物は僕はコーラ、サクラは?』

「一緒にする。」


そして、思い出した、トレーの上にバーガーとポテトフライ、コーラを乗せていつも座っていた2階の席に向かう。

『朝ごはんがサンドイッチで、お昼がハンバーガー。なんか申し訳ないな。』

「そんなことないよ。あ、ここの席っていつも健くんとの?」

『そうだよ。あいつ、ここでいっつも文句言ってた。』

「ンフ、何の文句?」

『ポテト。量が少ないって、ひどい時は何本か数えてた。』

「どうだったの、結果は?」

『少なかった。あはは、理由が知りたい?』

「うん。」

『ユイさんの仕業だった。スカウトに来ててさ、ここでバイトしてたんだ。』

「ふーん、じゃあ確信犯だったのね。トモ君、変に思わなかったの?例えば、気があるんじゃないかとか?」

『あ、い、いや、だって、あの頃の僕は、片思いの子がいたし・・ここで、いつも健一に推されてたし。』

「怪しい〜。その慌てぶりからすると、少しは?」

『ち、違うって。僕は野崎沙也加ってめっちゃ可愛い子にずっと夢中だった。うん、夢中。』

「や、ヤダ、声が大きい。ま、そういう事にしときましょう。」

『ん?アレッ、嬉しくないの?久しぶりに本音を言ったのに?』

「えへ、嬉しいよ。でも、当然のことだからね。」

『うわぁ、すごい自信。』


サクラをようく見ると、顔中が真っ赤になって、口を閉じて素知らぬふりを決め込んでいるが、やはり嬉しさを隠しきれない様子。そして、目尻にかけて笑いジワがはっきり浮かんできた。

「プハー・・ああ〜もうダメ。嬉しくって我慢出来ない。ありがとう、トモ君。」

『オッ、沙也加ってさ〜、すっごく可愛くなったね。この3年間、僕の想像って、やっぱりあの頃だろ、それがこの変わりように、本当に驚いた。』

「えへへ〜、どう、ドラマ並みにすぐに結婚したくなった?」

『ああ、なった。』

「・・・えっ、ジョ、冗談?本気にするよ。」

『すぐは難しいかも知れないけど、なぁ、初恋の人と結婚するって、アリ?』

「アリ、アリ、アリ、アリよ。アリに決まってるでしょう。」

『あははは、アリが多い。じゃあ決まりってことで、コーラで乾杯しようか?』

「う、うん。」


少し冷たくなったバーガーを食べていると、それまで空席だらけだった周りの席に女子高生の制服を着た人たちが増えていた。

『人が増えて来たよ。長居し過ぎだと迷惑だな。』

「あの制服、宝明学園よ、私の後輩ってとこ?」

『そっか、じゃあ知り合いがいるかもな?』


と話していると、近くのテーブルにいた二人が声をかけてきた。

「あのうすいません、野生児に出ていた三条さんですか?」

おっと、突然ズバリと言われてしまった。沙也加の方を見ると、頷くように合図を送ってきた。

『ええ、三条です。』

すると、「キヤーッ!」という悲鳴に近い声がした。


そこから始まった撮影会、周りにいた他の人たちも入れ替わり立ち替わり、スマホのカメラを向けて写しまくってきた。

『ねぇ君たち、何年生?』

「ここにいるのはみんな1年生です。今日、1年生だけ午前中で授業が終わったんです。」


沙也加に気付かないのが納得出来た。


それまでカメラを向けられていなかった沙也加に、数人が目を向け、その美貌に気がついたのだろう、急に写し始めた。

すると、沙也加がその子たちに言った。

「あなた達、写メはいいけどSNSで拡散するのは止めてよね。私、宝明の卒業生だからね。」


そのひと声に、みんなが頷いて、理解を示してくれたようだった。


ようやくお店を出て、家に向かうことにした。

『沙也加の家からにしようか?』

「うん、多分お母さんがいると思うけど。」


家の近くになった時、僕は思いついた。

『あのさ〜、インターホンは僕が押すから、沙也加は隠れてる?』

「うん、あ、お母さんトモ君のこと、分かるかな?」

『そっか、じゃあ沙也加に会いに来たことにしようか?イタズラ過ぎる?』

「いいんじゃない。私、頃合いを見計らって登場するね。えへへ、お母さん、腰抜かすかもね。」


そして、玄関の前に立った。

少し緊張してきたので、大きく深呼吸をして沙也加を見ると、ニコニコして後ろに下がった。

インターホンのボタンを押すと、返事がない。

しばらくして、玄関の近くから「はーい」と聞こえ、ドアの鍵を開ける音が聞こえてきた。

えっ、こっちが誰かを確認せずにドアが開く?と思う間もなく、ドアが開いた。

そして、久しぶりに見る沙也加のお母さん、綺麗な女性が顔を出し、当然のことだろう

「はい、あ、どちら様?」

『あ、こ、こんにちは。沙也加さんにお会いしたくて、あ、同級生なんです。』

「あら、同級生、沙也加は東京の方に行って、今はいないんですよ。失礼ですけど、お名前は?」

『あ、山城と言います。山城友哉。』

「エッ、山城?あなた、山城さんって、三条さん?エッ?どういう・・・」

お母さんのうろたえる姿を見て申し訳ないと思った時、タイミング良く沙也加が出て来た。


「お母さん、ただいま。驚いた?」

「ま、沙也加ったら。驚いたわよ、えっ、トモ君と一緒に?」

『すみません、こんなイタズラを思いついたもんで。』

「あはは、やーだ、入って。」


リビングに通され、ソファに腰を下ろしたところへ早速アイスコーヒーを入れてくれた。

「よく来てくれたわ、でも、今日はお休みなの?すっかり男らしさが増し、気がつかなくてごめんなさい。」

「そう、撮影が昨日で終わったのよ。」

「そうなの、いつまで居られるの?」

「私は明日帰る。トモ君は?」

『僕も一緒に帰るよ。こっちにいても、もう友達もいないし。何せ、ああいうことしたからさ。』

「そうだね、じゃあ一緒に帰ったげる。」

「これ、何ていう言い方をするの、あなたは。嬉しいくせに。」

「えへへ、バラさないでよ。ねぇ、お母さん、トモ君ってかっこいいでしょう?どう思った?」

「三条優也さんって聞いてから、色々探したんだけど、テレビの方、今はあまり出てないですよね。雑誌は立ち読みで、でも見つけられなくてね。」

「で、さっき玄関を開けた時は?」

「あ、あの時、実際、今まで見たこともない人、キラキラ輝いてたから、何事が起きたか?」

『大袈裟過ぎますよ。そこらにいる人と同じです。』

「そんなこと無い。あのね、言わないでおこうと思ってたけど言っちゃうね。トモ君、お母さんの言う通り、キラキラ輝いてるよ。昔のトモ君より全然いいんだもん、なんか、話し掛けるのが・・・照れ臭い。」

『それは、僕だって沙也加じゃないみたいに綺麗になって、気軽に声を掛けられないんだよ。』

「あ、違うよ、私なんて無名の新人じゃん、トモ君は超有名人 の大スターだよ。」

『沙也加だって、すでにSNSで騒がれてるじゃん、すぐにスーパーアイドルだよ、保証する。』

「あら、サヤカもそうなれるといいわね。でも、夢物語ね。」

「そうだね、お母さん、分かってる〜。」


「そう言えばさっき、凄かったの。マックで宝明の女子生徒にあっと言う間に囲まれちゃって、大変だったんだから。」

『でも、すぐにサヤカも写メラッシュだったじゃん。みんな、山野サクラって気付いてなくてアレだよ。次からはパニックになるぞ。』


2時間程で一旦失礼し、今度は僕の実家に帰ることにした。

そして、同じ作戦で家の前に到着、母さんが驚く顔をじっくり見させてもらった。


「沙也加さん、ごめんなさいね。ずっと黙っていたこと、本当に許してね。」

「いいんですよお母さん、もう全て済んだことです。それより、これからは私のことをよろしくお願いします。もうああいうのは無しで、ずっと一緒にいることに決めましたから。」

「エッ、それって・・・こんな息子でもいいの?」

『お、おい、ちょっと待った!何を約束しようとしてるんだ?』

「あら、嫌だっていうの?」

『あ、いや、そうじゃないけど、そういうのって、僕から沙也加に言って、それから両方の親だろ、順番は?』

「ねぇ沙也加さん、よろしくお願いしますね。この子、案外不器用なところあると思うのよね、でもね、決して悪気は無い子だと思うので我慢してやってね。」

『おーい、聞いてないのか?それは、いずれ僕から言うことだって言ってんじゃん。』


母さんと沙也加、それからの二人は、僕を完全に無視して何やら楽しそうに話し込んでいる。

そして、時々聞こえて来る言葉を拾い集めていると、どうやら将来の住居とか、母さんの料理の味付けを教えて欲しいとか。

我慢出来ずに割って入った。


『あのさ〜、ちょっと注意しておきたいんだけど。』

「何、注意って?」

沙也加が怪訝な顔をしてこっちを見た。

『これからアイドルとしてブレークするのに、今、話してることって、早くない?』

すると、母さんが

「アイドルって結婚しちゃいけないの?何とかグループみたいに恋愛禁止?」

「うちは大丈夫です。そういう話は聞いてませんし、私のマネージャーなんか、いつするのか知りたいみたいですよ。トモ君、ユイさんは反対してるの?」

『おっ、反論?確かに、むしろけしかけられてる様な気がしてる。あれって、どういうんだろう?』

「私もおかしいと感じてる。ほら、沙織さんと会うのだって、率先してるんじゃない?」

『今度のアリーナツアーだって、考える余地なしだもんな。』

「私、覚悟してるんだよ。」

『何を?』

「そのステージ上で、沙織さん、私達のことバラすんじゃないかなぁって。」

『エッ?ま、まさか、サクラがアイドルとしての売り出し時だってのに?どうする?』

「どうするって、それで干されたら、トモ君のところへ押し掛け女房になってあげる。ねえ、お母さん?」

「そうね、そうしなさい。アイドルのサヤカさんを見ていたいと思う気持ちもあるけど、やっぱりトモのお嫁さん、仲良く三人くらいの孫を世話したいわ。」

「三人でいいんですか?第一子を二十歳で産むと、20代で五人は産めますよ。少子化に貢献しようとおもってますから、少なくとも7、8人です。」




第27話をお楽しみに

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