夢?それとも・・・
3学期になると、学校中がピリピリして来た。
私たちのクラスでも、毎日のように空席が目立つ。
私立、公立の大学受験、専門学校の受験もあり生徒が不在になるのだ。
授業は結構自習が多く、私のような数人の就職組はもうほとんどお遊びに明け暮れていた。
真由美が描くマンガを、隣の席から覗き込み、その真由美から時々飲み物を買いに行かされる。つまり、使いっ走りてこと。
ローカを歩き学食に置いてある自動販売機、最近のお気に入りのホットココアを買うと、熱々のアルミ缶を掌の上で躍らせながら教室に戻る。
「ああ、熱かった。」
「あ、ありがとう。いつも悪いわね。」
「ふん、思ってもないくせに。どうせ、当然だなんて思ってんでしょう?」
「ん?どうしたの、珍しくご機嫌斜め?何かあった?」
「なーんにも。それより真由美、卒業式まで、後少し。それなのに、こんなにのんびりしてて、いいのかなぁ?」
「私は忙しいわよ。誰かさんがイヤだって言いそうなところ、全部やり直してるんだからね。サヤカのワガママに付き合ってあげてる事、忘れないでね。」
「ケヘッ、マズッ!とんだ墓穴だった。」
お昼休みになると、かおりやアンコたちも集まって、四人で学食。
3年生が少ない分、2年生の生徒が増えたように思う。
ここ数日で、近くのテーブルが男子生徒で占められているのは、思い過ごし?
「ねえサヤカ、あの子達の視線、あんたに集まってるわよ。」
かおりが顔を近付けて、私に言ってくると、アンコも
「うん、私も気付いた。さすが、今まで遠慮してたってとこかな?」
「何言ってんの、思い過ごしよ。私だけじゃなく、ここに4人も美女がいるからでしょう?ウフフフ・・・」
アンコは家業を継ぐため、日本の大学じゃなく、海外の方へ数年間行くから受験は関係なし。
かおりは、真由美が本格的に漫画家を目指すので、そのアシスタントになる。
しばらくはアルバイトでもして生活費を稼ぐ、そして、真由美が売れ出せば専任になることを決めた。
一応、私はアイドルを目指して進学しないと2人は信じきっている。
担任の先生からは、何度も進路指導に呼ばれ、お母さんと困惑した。
「優也さん、卒業式はきちんと出席するのよ。スケジュールは開けたから。」
『はい。もう卒業かぁ、アッという間の3年間でしたね。』
「そうね、この3年間で大きく変わったでしょう?今じゃ、誰でも知ってる俳優さんね。そうだ、そろそろ歌手デビューしようか?もういいでしょう?」
『えっ、まだ諦めてなかったんですか?』
「当然でしょう。本当は、あの頃すぐにデビューする予定だったのに、あんなに抵抗するんだもん。」
『さすがに無理だと思ったからですよ。役者の駆け出しの分際で、歌手デビューなんて・・・芸能界を舐め過ぎだと叱られますよ。』
「で、今なら?」
『きっかけが無いでしょう?それに、レッスンだって受けたこと無いから、やっぱり無理だと思いますよ。』
「ふう〜ん、きっかけがあれば・・・ね。」
『ところで、アレはどうなったんですか?』
「アレ?ああ、予定通りよ。少しだけ内容は変更するみたいだけど、もう人選に入ってるわ。あ、そうだ、誰か知り合いで推薦したい人、いた?」
『そうだなぁ、あの3人組がいいかな?あ、そう言えば、クラスに一人いたなぁ。』
「なんだいるんじゃない。3人組って、あの子達でしょう?セリフがないチョイ役ならオッケーだと思う。早速話しておくわね。で、クラスの子って、どこの事務所か、それと、名前、オファーしてみるから。」
『あ、強引は必要ないから、それとなくでいいですよ。』
僕が思ったのは、星野まやさん、あれから3年、教室で数回しか会ってないが、高校入学から初めて話し掛けてくれた人だったからだ。
不思議だなぁと思った。
卒業式の前夜、久しぶりにユカ、アリサ、サチの共同名のメールが届いた。
彼女たちも明日、卒業式だと。僕に会って卒業祝いをしたいとの誘いだった。
すぐに了解して、待ち合わせ時間を返信した。
そして、学校に行くと、たった1人の友達星野さんがやって来た。
「卒業、おめでとう。」
『いやぁ、星野さんこそおめでとう。』
「あのね、今度、テレビドラマに出演出来るんだよ。」
『オッ、そりゃすごい。お、おめでとう、よかったじゃん。』
「ん?あれ?高城くんじゃないの?」
『エッ?』
「三条優也さん主演だって聞いたのよ、あなたが推薦してくれたんでしょう?」
『あ、いや!』
「んもう、高城くんが三条優也さんだってことぐらい、とっくに気付いてるわよ。でないと、今回のお話、辻褄が合わないのよね。突然、突然よ、こんなすごいオファーが飛び込んできたの。事務所中、大変な騒ぎ。私なんか、全然実績のない無名タレントだよ、そんな私を指名する?」
『あ、いや、誰かが見初めたんじゃ?』
「ふう〜ん、まだ、しらばっくれるのね?あ、私の想像通りだったら、現場で分かることね。ま、一応、ありがとう。」
完全にはバレていないようだ。その日が来るまで秘密にしようと、惚けておいた。
自宅マンション近くのカフェ、約束の時間通りに入って行くと、すでに3人組は制服のまま座っていた。
『お待たせ、卒業おめでとう。』
「時間通りですよ、ユウこそ卒業おめでとう。」
台本のセリフのように、3人の声が揃っていたので、驚いていると
「えへへ〜、ちょっとセリフを真似してみました。」
サチさんが代表して言うと、他の2人も満面の笑顔で僕を見てくる。
『3人はこれから?』
「ユカとアリサは女子大、私は看護学校に行くんです。」
『そうなんだ、じゃあ3人とも、まだまだ勉強するんだね、尊敬するなぁ。』
「そんなことないですよ、ユウのように多くの人を感動させる仕事の方が、大変でしょうけど、いいじゃないですか。」
『感動させられるかな?そうなれればいいけど。』
高校3年間の思い出話に花が咲き、あまり出席出来なかったことを残念に思えた。
そして、別れ際、僕から切り出した。
『ところで、3人に卒業祝いと入学祝いをしようと思うんだけど・・・』
「えーっ、ホントですか?うれしいけど、何くれます?」
「あ、高い物じゃなく、記念になるものでお願いします。」
「そう、思い出になるように、TDLとか?」
『アハハ、そこじゃ混んでるだろう?実は、もうすぐ新しいドラマの撮影が始まるんだ。』
「やったー、それ、見学出来るんですか?」
「すご〜い、一度生で見たかったの。」
『あ、違うんだ、君たちに出演してもらいたいんだ。あ、勘違いしないで欲しいのは、多分、チョイ役。もちろん、セリフなんかは・・・』
「い、いいんです、セリフなんてどうでもいい。出れるだけで、ほ、ホントですか?」
『多分、大丈夫だと思う。コミックマンガの実写版、連続ものだけど少しだけの出演だよ。』
「わぁっ、すごい。」
さすがにかおりとアンコに言わなければならない。
卒業式が終わり、4人でお祝いの食事会を開いた。
ほとんど食べ終わった時を見計らって、私は話し始めた。
「あのね、実は秘密にしてたことがあって、今から話すね。」
すると、それだけでかおりが昔を思い出したのか、拗ねたように言う。
「あ、又だ。サヤカってさあ、ホント、秘密が多いよね。どうして隠すかなぁ?」
「怒らないでよ、今回のはトモ君の時とは違うんだから。かおりが言いたいのはそれでしょう?」
「そうよ、あの時のこと、絶対忘れないからね。」
「根に持ってるんだ?あ、今回のは、真由美は知ってるの、って言うか、真由美が・・・」
「どう言う事?真由美が知ってるのに、小学校の時からの友達を?」
「あ、ごめん。それより、聞いて。あのね、私の夢、叶ったの。」
不機嫌な顔で聞いていたかおりが止まった。
そして、黙って聞いていたアンコが
「ん?サヤカの夢って、まさか、アイドル?」
今度は真由美が口を挟む。
「そうだよ、サヤカ、もうすぐデビューするの。応援してあげてね。」
私、真由美の言葉を聞きながら、怒っているかおりに向かって、ちょこっと頭を下げた。
「エッ、すごい、さ、サヤカ、ホントなの?ねぇ、いつ?」
「去年の年末。あ、真由美のおかげだよ。」
「どう言う事?」
「あ、ごめん、実は私、ずっと前から今度サヤカが入る事務所の社員だったの。」
「ゲッ、どう言う事?じゃあ、今までずっと騙してたの?」
「騙してたんじゃなくて、黙ってただけよ。かおり、ちょっと冷静になれない?」
「だって、真由美のアシスタントになるのよ、私。」
「そうよ、ねぇかおり、あなたもいっそ、うちの会社に入る?もちろん、事務職だけど。私のアシスタントはやってもらうから、そういった・・・」
「あ、ありがとう。アルバイトしなくて済むなら、助かる。あ、それより、サヤカ、冷静になるから教えて。」
「実は、・・・」
今からのスケジュールや、CM、デビュー曲、真由美原作のドラマ出演の事など、詳しく説明した。
「よかった、よかったねサヤカ。正直、思いっきり叫びたいくらい嬉しい。」
「ああ、だったら海外留学なんかしなきゃよかった。ね、誰か録画して送ってよね。」
かおりとアンコが自分の事のように喜んでくれて安心した。
そして、翌日、早速真由美と共に東京に向かって出発したのです。
お母さんが、どういうところに住むのか、どうしても見ておきたいと一緒に着いてきた。
お母さんったら、まるで修学旅行に行く女生徒みたい。そんなにいる?ってくらいのお菓子を買い込み、電車に乗るや否やそれらをどんどん広げ、早く食べなさいって、何度も繰り返し言ってくる。
真由美は、お母さんに気を使ったのか、多分、イヤイヤだろうが食べ続けている。
途中、気になって、お母さんに言った。
「そんなに無茶苦茶食べさせないでよ、真由美、圧倒されて断れないじゃん。」
「エッ?あ、そうなの?ごめんなさいね、真由美さん。」
「あ、いいんですよ、このお菓子、めっちゃ好きなんで食べてるんです。」
「真由美、太ってもいいの?」
気を使って食べているのがお見通しなのに、真由美ったら無理してる。
東京に着いて、真由美のお家近くまで行くと、お母さんが夕食の材料を買いたいと言い出し、真由美の案内で近くのあまり大きくないスーパーに入って行った。
真由美が言うには、都内では田舎のように大きなお店というのが少なく、小型店舗が主なお店。但し、今入ってきたここは、スーパーと名乗っているが、売られている食料品はさほど安くなく、それぞれの質が高級で美味しいんだと。
お母さんは、私たちに夕食のリクエストを聞き、いろいろと食材を買い込んでいた。
家からの荷物に加え、ここでの買い物で両手いっぱいの状況は、かなりきつかったがなんとか真由美のお家に転がり込んだ。
「わぁ〜、肩、凝っちゃったよ〜。」
「サヤカ、大袈裟〜。さあ、今からお家のお掃除よ、とりあえずリビングの拭き掃除からね。」
「ゲッ、休憩なし?」
「きれいにしてからゆっくりするのよ。今まではお客さんだったけど、今日からは同居人だよ。お掃除やお料理、それぞれ分担しなきゃいけないのよ、分かってる?」
「オッ、分かってるよ。私だって女の子よ、家事、お料理、何でも来いね。偉そうに言うけど、真由美こそお料理、出来る?」
「あ、え、簡単よ、もし、忙しかったりすると、ま、コンビニってのもアリだけど。」
「ん?それって、今から煙幕?そんなことだと思った。ここへ何回かお邪魔したけど、全部、外食だったよね。」
「あ、まあね。いいじゃん、来月からはかおりも一緒なんだからサァ、何とかなるわよ。」
「かおりも無理だと思うんだけど・・・あ、少なくともお掃除はしっかりしようね。売れっ子漫画家とアイドルタレントが、ゴミ屋敷ってのだけはシャレになんないわよ。」
修学旅行のような夜を過ごし、翌朝、家に帰るお母さんを見送ってから、私は真由美と一緒に会社に向かう。
会社の入り口を入る時、真由美にボソッとつぶやくように言った。
「いよいよ始まるのね。」
すると、小さな声にもかかわらず聞こえたようで、一旦立ち止まって
「そうだよ、アイドル野崎紗弥加誕生。頑張れ、楽しむんだよ。」
営業部の部屋に入ると、奥の企画室と書かれてあるブースに連れて行かれた。
ここで真由美とは別行動、一人っきりになると、急に心細くなってきた。
少し年上だろう、可愛い女性が1人で待ってくれていた。
「おはようございます、今日から野崎さんのマネージャーを務めることになった塚本ルミです。ルミって呼び捨てにして下さい。」
「あ、呼び捨て?いいんですか?」
「ん?もちろんよ、あ、野崎さんは・・・」
「あ、私はサヤカでお願いします。」
「あなたは、そうはいかないのよ、じゃあ、サヤカさんでいきます。それでは、今後の予定ですけど、今からスタイリストさんによるサイズの計測、その後、ビューティサロンでお肌のチェック。夕方からCM撮り、とりあえず1社だけよ。」
ルミさんが一気に喋ってるので、一つ一つ頭の中で整理しながら詰め込んでいく。でも、いきなりCMの話しには驚かされた。
「あ、あのう、CM撮影があるんですか?」
「そうよ、清涼飲料水のね。」
「いきなりですか?」
「いきなり?そうね、サヤカさんにとっていきなりでも、この話し、ずっと待たせてるのよ。」
「あ、でも、私でなくても?」
「何を言ってるの、サヤカさんを待ってたのよ。あなたって、もう知る人ぞ知る存在よ。CMぐらいで驚かないでね、いい?じゃあ明日の予定も言うわね。明日は、午前中にボイスチェック。問題がなかったら、午後からデビュー曲のレッスン。」
「えっ、明日から?」
「あ、また?あのね、うちの会社で初めてなのよ、来る前から仕事が殺到してる人って。いいこと、もう社内では大スターなのよ、いちいち驚かないでよ。」
「あ、はい。」
本当に驚いている間も無かった。
ルミさんの後を追って、次から次へと動く。
夕方のCM撮影のスタジオに行くと、今朝、サイズチェックをしてくれた女性が待ってくれていた。
そして、メイクルームに連れて行かれ、可愛い服装に着替えさせられ、髪型、薄いメイクと、あっという間に大変身?
鏡に映る自分が、今まで見た事もない可愛い人になっていた。
スタジオに入ると、緑のカーテンのような布が壁一面に広がっている。
撮影の監督さん、ADの方、照明さんにカメラマンさん等、びっくりするくらいの人が、真剣に仕事をしていた。
ここまで何の打ち合わせもなく、ただここにいるだけの私だったので、どうしていいか分からずにいる。
すると、ADさんから呼ばれ、こういう風にするようにと演技指導が入った。
言われたことを何度か繰り返してやってみる。
表情が固いと指摘を受けたり、足の動きを直されたり、姿勢良く見せる事を指導してくれたりしながら2時間近く経った時、休憩が与えられた。
ルミさんから飲み物を渡され、一口飲んだ。
その一口が喉を通るとき、今まで感じたことの無い爽やかさ。
何の飲み物だろうと、容器に目をやった時
「美味しいでしょう。これがCMの飲み物よ。」
「えっ、すご〜い、これですか?」
「声が大きい!どう、この美味しさを教えたくなった?」
「あ、はい。」
休憩が終わった時、監督さんたちと一緒に数人の方が入って来た。
そして、今度は本番ですと声が掛かった。
それまでより眩しいくらいの照明が点いて、カメラマンさんの動きが出てきた。
何パターンかの撮影を、何度となく繰り返して終了の声が掛かった。
すると、本番前に入って来た数人の方が近寄って来て、丁寧に挨拶をされた。
CMスポンサーの会社の人たちだと分かった。
渡された名刺にCEOと肩書きが付いている人に、1年も待たされたと。でも、待ってた甲斐があったと喜んでくれているのが嬉しかった。
帰り道、ルミさんから聞かされたのは意外なことだった。
あのトップアイドルのキャロちんさんが、このCMをきっかけに揺るぎないトップの位置に登りつめたということ。
本当にこの1年、私を待ってくれていたらしい。
家に到着したのが、夜の10時。
「おかえり、何か食べた?」
真由美から質問を受けた時、そう言えば、お昼にサンドイッチを食べたくらいで、他にほとんど食べていなかったことを思い出した。
「だろうと思って、ちゃんと用意してるわよ。」
さすが真由美、優しいなぁと思いキッチンに入ってみると
「ん?これ?」
そこで見たのは、コンビニのおにぎり2個、その横に冷凍のラーメン。
真由美は、そのラーメンの袋を破り電子レンジに入れる。
「すぐに出来るからね。」
「ねえ、どっちも炭水化物じゃん。あのね、一瞬でも真由美って優しいって思ったのに、何か損した〜。」
「いいじゃん、お腹空いてるんでしょう?贅沢言わないの。」
「贅沢は言わないけど、早速、この現実?受け入れられるかなぁ?」
でも、空きっ腹には、思った以上に美味しかった。
「で、どうだった?」
「CM撮影って難しいね。何度もリハーサルして、ずっと立ったまま。5時間以上掛かった。あ、でもスポンサーの社長さんにお会いしたよ。期待してくれてる。」
「第2のキャロちんさん?あ、でも、他にも人気が出たその後の有名人、いるよ。」
「ふう〜ん、私、あの飲み物、好きになりそう。」
「じゃあ今度買って来てね、あ、そうか、スポンサーさんにヨイショすれば、タダで飲み放題だよ。」
「ヤダよ、見え透いたヨイショなんて、私、出来ない。」
翌日、朝から音程を調べられ、挙げ句に声量も試された。
特に何も言われないまま、場所を移動して・・・
いきなり楽譜を渡され、先生の横に立つ。
鼻歌でピアノ伴奏に合わせなさいと言われた。
難しいかと躊躇したが、ピアノの音を聞くと、自分でも不思議なくらい鼻歌が出てきた。
そして、同じ事の繰り返しが続いて、いよいよ歌詞を歌ってみなさいと言われた。
時々、発声が足りないとか、もう少し強く歌いなさいとかの指導が入る。
リズムが明るく、のりのりになる曲だと思いながら、想像以上に楽しめているのだ。
少しの休憩時間が与えられた時、ルミさんに尋ねてみた。
「今、レッスンを受けている曲って、私の?」
「そうよ、サヤカさんのデビュー曲。ついでに言うと、昨日撮ったCMソングでもあるわよ。どう、気に入ったでしょう?」
「ええ、めっちゃ楽しい。いい曲ですね、エヘヘ。」
「歌詞、早く覚えなさいね。」
「あ、もう覚えました。なんか、自分の心境みたいです、バレたのかなって思うくらい。」
「そうなの?さすが、聞きしに勝るってことね、じゃあ、予定を変更して少し早めなきゃね。」
ルミさんが独り言のように口にしたことが、数日後、現実のものになっていた。
レコーディングの日が決まったのです。
あまりにも早い展開に、夢の中の出来事ではないかと、何度も疑ってみた。
そして、その曲に合わせたダンスの振り付けが間も無く出来るから、しっかり身体で覚えなさいと言われた。
今までは、有名なアイドルグループなどのダンスを、自分なりに解釈して踊ってはいたが、これからはオリジナルになると思うと、心の中で身震いしていた。
第20話をお楽しみに




