続く回り道
想像以上の人の数、うかうかしていると真由美に置いていかれそうで、でも、さっきから何人の人にぶつかりそうになったか。
東京で生きていくためには、取り敢えずこの人混みに慣れることから?
マルキューが意外に駅から近くて助かった。
ここは、想像していたより一つ一つのお店のスペースが狭い。
店員さんの奇抜なファッションを楽しみながら、上の階へ上がって行く。
「ね〜サヤカ、どういうのがいいの?」
「あ、うん、そうだね?」
「ん?決めてないの?どうした、思いっきりアイドルでしょう、私が選んであげようか?」
「あ、うん、どんなのがいいか迷っちゃって。めっちゃあるんだもん。」
「な〜に、田舎者丸出しだよ?」
「し、仕方ないじゃん、田舎者だもん。エヘヘ、なんと、人混みに酔っちゃいました〜。」
「今からそんなことでどうするの?明日はこんなもじゃないよ。いい、横アリに4万人だよ?あのね、映画館のように黙って大人しく座って観戦なんてないわよ。みんなが立ち上がって一緒に踊るのよ。酔ってるヒマなんて全然。」
「分かってるって。アリーナ中に響き渡る音だよね、楽しみ〜!」
「ここで酔ってると、ぶっ倒れちゃうんじゃない?将来、自分がステージに立って歌うんでしょう?さあ、チャッチャと決めて買いましょう。」
「はあ〜い。あ、この赤はどう?」
「早速きたね、いいんじゃない。サヤカに合うよ。」
「じゃあスカートは?」
「少し長めにしてみたら?フレア付きでとか?」
「ミニよりヒザが隠れるくらいはどう?」
「そうね、案外いけるかも。色は白でしょうね。」
「うん、そう思った。」
「ついでに、赤のミニに白のタンクトップも買ったら?」
「おう〜、上下を逆さまにしてって、ウフフ、面白いわね、そうする。」
試着室で着替えて鏡を見た。
うーん、我ながらイケてるように思えるくらい似合ってる。
「いいなぁ、サヤカってホント可愛いよね。その赤と白のコントラストがとてもいいよ。羨ましいわ〜!」
「エヘヘ、ホント?なんかさあ、自分じゃないみたいなんだけど、合ってる?」
「ピッタリだよ、その格好で歩けば、みんなに振り返られるよ。アイドルで通用するね、すぐにでも。」
その後、私たちはお昼を食べに場所を移動して、代官山に向かった。
真由美がイタリアンのお店に行きたいと言ったから。
そのお店は、お客さんのほとんどが若い女性ばかりで混み合っていた。
私たちは、丁度空いていた窓際のテーブルに付き、早速メニューを開いた。
カニクリームパスタを食べようと思い、顔を上げた時、真由美が窓の外にいる女性に軽く手を上げて立ち上がった。
「サヤカ、ちょっと待ってて。」
そう言うと、慌ててお店を出て行った。
ガラス越しに見ていると、手を上げた女性の所に到着し、何か封筒の様なものを受け取り、中身を確認している。
そして、何か笑いながら話している。
すぐに手を振り、その人と別れたように見えた。
その女性は、私の方をチラッと見て、軽く会釈をして立ち去った。
ん?どこかで会った?と、思ったが、他人の空似だろうと思う。東京で知っている人などいるはずもないし、もし知っていればお店の中に入ってくるだろう。
「ごめんね、注文、決まった?」
「うん、カニクリームパスタ。」
「あ、美味しそう、私も一緒のにしよう。」
店員さんを呼び、注文した。
「いいの、今の人、友達でしょう?」
「あ、うん。明日のチケット、取ってくれた子だよ、持ってきてくれたの。ホラッ!」
と言って、封筒をテーブルの上に置いた。
「見てもいいの?」
「もちろん。」
「あれっ、特別招待券?」
「そうだよ、つまりタダ。だから、2階席の後ろで我慢してって。」
「あ、うん、それで十分だよ。元々、見れるなんて思ってなかったし、ホント、ラッキーだと思ってるよ。」
「実は、私も。秘密をバラすとね、あのグループのオーディション、以前落ちたんだよね。エヘヘ・・・あ、学校では秘密だよ。」
「やっぱりね。」
「やっぱり?」
「真由美がアイドル志望って言った時、じゃないかなぁと思ってた。」
「アハハ、そっか、気付いてたんだ?凄かったんだよオーディション、何百人もいて、みんな可愛いんだ。私は太刀打ち出来なかったんだよ、相当な圧でさぁ。」
「そうなんだ?」
少し早めに横アリに到着した。
開場が2時からになっているが、横浜アリーナの近くにはかなりなファンが集まっていた。
もちろん、若い女性が多いのは思っていた通りだが、男性のグループもかなり居る。
みんなが同じ様なバンダナを巻いて、サイリウムとかいうのを手にしていて、結構ハイテンションになっている。
それらの人たちの横を抜け、ユイさんは関係者の入り口に真っ直ぐ向かっている。
その後を追って、僕も急ぎ足になっていた。
当然、入り口にいる警備員さんに止められるだろうと思っていたが、何かを提示しているのが見えたら、あっさりと通してくれた。
『今のは?』
「ん?ああ、いわゆるパスっていうやつ。一応、今日は関係者だもん。」
『ヘェ〜、僕はまた、普通の入場口から入るもんだと思ってました。』
「何言ってるの、今日のコンサートが・・・ま、終わってからのお楽しみね。」
中に入ってまず驚いたのは、ステージの設営。
煌びやかに大掛かりなセットを目にして、僕は圧倒された。
至る所に置いてある照明器具を見て、これがアイドルを一段と華やかにする隠れた秘密兵器だと思う。
ステージ中央には、客席の中程まで突き出たステージもある。
ふと思ったのは、まさか、あんな前には行かないよな?
ドラマの撮影現場でもよく見掛ける大道具さんたちは、設営の様子を最後のチェックに入っているのだろう、ジックリと確認しているところだった。
そして、数分後、その人達が会場からはけると、お客さんが入場し始め、急に賑やかな声が聞こえてきた。
いち早くステージ近くに走り込んで来た人たちは、もうかなり興奮しているようで、辺りを見回しては喜びの歓声を上げている。
ユイさんが、僕の腕を引きステージ横から裏へと連れて行く。
ステージ裏では、彼女たちの衣装を着たメンバーが忙しそうに歩き回っている。
すると、そこへ打ち合わせの為、スタッフの方が現れ通路に置かれている机の前に座らされる。
すぐに打ち合わせが始まり、それによるとコンサートの後半、キャロちんさんかトンピーさんが
「あ、あの人がいるといいなぁ〜」
「え〜っ、無理でしょう?」と言うようなコントの場面。
お客さんがザワつき始めるので、ステージ横から上がって少しだけ待機して下さい。
メンバーの誰かが迎えに行くので引っ張りだされるように中央に出て、あとはキャロちんさん達と適当にアドリブの会話をしてから歌って下さい。
打ち合わせの割には、案外簡単なことで、急に心細く心配になって来た。
昨日買ったばかりの上が赤で、白のスカートを穿いたファッションで行く。
真由美はというと、真っ黄色のティシャツにデニムのホットパンツ。小柄でも足の長さからキレイに見える。やっぱりアイドルを目指していただけの事はあるなぁと感心した。
「ねぇサヤカ、もしかすると私たち、間違われる?」
「ん?何に?」
「決まってるでしょう、アイドルよ?」
「まさか?あ、でも、今日の真由美ならあるかも?」
「まぁね、結構イケてる?って、やっぱりサヤカには勝てないよ。あんたって、何気なく歩いているだけで、いい雰囲気あるわ。」
「そうかなぁ?周りにいっぱいいるよ、キレイで可愛い子。」
「いるっちゃいるけど、その他女の子?って感じ。サヤカは、そうね華やかなライトが似合う子だよ。」
「ライトが似合うって?」
「キラッキラッ!アイドルらしい髪型にして、華やかなメイクだけでキャロちんさんを超えちゃう。私のマンガの中にいる子みたいだね。」
「大袈裟だよ、でも、キャロちんさんって凄いんだろうな?」
横浜アリーナに到着すると、すでに開場が始まっていて、入場口は長蛇の列になっていた。最後尾に並ぶと、すぐに私たちの後ろに行列が出来た。
ようやく中に入って2階席の後ろに落ち着く。
ステージが遠く見えるが、今日の私は贅沢は言わない。生まれて初めてアイドルのコンサートを経験出来るだけで十分満足、それが日本一のアイドルグループだから恵まれていると思う。
どんどん多くの人が入っている。
一階席を見ていると、段々と空間が無くなっている。
薄明かりの照明だから、全部がハッキリ見えるんじゃないが、ステージ周辺には男性の姿が見えて、入場前にチラホラとしか見かけなかったのに、こんなにたくさんの男性がいる事に驚いた。
そして、私たちの周りもいつの間にかいっぱいの人が入っている。
「凄い人だね。」
「サヤカだって、将来、このくらいの人を集められるんでしょう?」
「1人でだと、無理でしょう?」
「謙遜したってダメだよ。私ね、自信あるの、あ、その時、私、おっきなマンガ描いて持っていくから、ステージに立たせてくれる?」
「うん、私の絵でしょう?」
「もちろんよ。何年後か分かんないけど、いろいろ想像してるんだ。4コマがいいか、一枚ものがいいか?」
「ん?そこ?じゃあ、描くこととステージに上がる事は決まってるんだ?」
「ん?そこ?そんなの当たり前じゃん。いいこと、サヤカを一気にトップにするのは私の役目だよ、絶対私のマンガで売り出してやるから。」
「オッ、頼もしい!アハ、でも夢だね。現実味は30%もないよ・・・ね?」
照明が消えて真っ暗になった。
すると、会場内でウォーっというような唸り声が響き渡る。
耳をつんざくって、多分、こういうことかと思っているとステージの上の方がライトに照らし出された。
すると、これも多分だが、男性の声が聞こえてきた、何と言っているのか判別出来ないが、いつもこうやって呼び掛けてコンサートがスタートするんだろうと思う。
何度も何度も繰り返しているうちに、いきなりお腹の筋肉を震わせるような大音響が鳴り始めた。
そして、曲調が変わって幕が一斉に開く。
ステージの前方横からでは背伸びをしても見えないが、どうやら奥の方から走り出してきているようだ。
歌声が聞こえてきて、お客さんのキャーッ!という騒音を消している。
ステージの上が華やかな明るさに包まれた。
歌は、1曲では止まらない。次から次へと続けられる。
7曲目を終えたところで、ようやく彼女たちの動きが止まって、息せき切りながらお客さんに挨拶を始めた。
その声がキャロちんさんだということはすぐに分かった。
お客さんに呼びかけるように話すと、すぐに返事が返っている。その返事が全員同じ言葉で返しているのが凄い。
ずっとコンサートを追っかけているファンなんだろう。
一通り話しを終えると、曲が流れ始め、別のグループが走りながら歌って登場する。
その曲が終わると、新たなグループが引き継ぐ。
これが繰り返され、10曲ほどで再びMCの時間になって、メンバーイジリが始まる。
客席から笑いが起こると、そのメンバーのドヤ顔が面白い。
ただ、笑いを取るはずのコメントが外れた場合でも、オーバーアクションで笑いを取るから、お客さんは大喜びをする。
その時が突然現れた。
トンピーさんがキャロちんさんをイジり始め、キャロちんさんが軽く応じる。
「ところで、最近はグループの仕事をおろそかにして、なんか、女優?それと、CMに出ちゃって、いい気になってる?」
「な、なってないわよ、それに、こっちの仕事だって、おろそかになんて全然。」
「こ、こっちの仕事だって?何よ、こっちが本業じゃないみたいね?」
「あ、そう言うトンピーだって私と一緒に出たじゃん。あんたこそ、いい気になってんじゃないの?」
「あ、それを言う?あ、あれはだって、あの人が主人公だからよ。ねえ、みんなもそう思わない?」
すると、客席が異常なくらいの反応を見せた。
「なんだ、トンピーのお目当てって、あの人?」
「そ、そうよ悪かった?なんなら、キャロちんと勝負したっていいわよ。」
「あ、じゃあ、どっちと共演したいかにしない?」
「いいわよ、じゃあ、誰か呼んで来て!」
お客さんは、まさかと思っているのか、「ハハハ・・」の笑い声が起こり、信じられないという反応。
もう二人いた共演者が
「私たち、呼んでくる!」
ずっと見ていたが、周りの女の子たちのリアクションが凄い。
そして、ステージの上に上がれと呼びに来た。
階段を駆け上がると、館内が割れんばかりの歓声に包まれ、ステージの中央に到着すると観客席の至る所で手やウチワが振られ、ますます歓声のボリュームが上がっている。薄暗い客席のサイリウムの灯りがカラフルで、一斉に振られて、僕は呆気にとられていた。
キャロちんさんが、客席に向かって静まる様に手で制してようやく収まる。
「みなさ〜ん、知らない人の為にご紹介します、山中翼くんで〜す。あ、私は、山王寺綾だからね。」
再び起こった大歓声の中、ステージ上でも他のメンバーが腕を触りに来たりして、自分が大スターにでもなった気分にさせられている。
しばらくキャロちんさんとトンピーさんの2人にからかわれ、突然曲が流れ始めた。
誰かからマイクを渡され、両側から手首を掴まれたと思ったらステージ中央にある出っ張った場所に連れて行かれた。
歌が始まるのをキャロちんさんに合図され、僕も歌い始める。
ダンスも一緒にと合図され、踊り始め、段々と本気を出した。
お客さんの歓声が凄く、何だかメッチャ楽しい気分になってきて、練習以上に盛り上がっている自分がいた。
キャロちんさんもトンピーさんも、他のメンバーもそのダンスが力一杯だというのが伝わって来て、ノリノリだった。
「始まったわよ、サヤカ。」私の耳に触れそうな距離から真由美が話して来た。
「うん、凄い音響だね。」
さっきまで真っ暗だったから、幕が開いてステージ上でライトが点くと眩しい。
そのステージに何十人かのアイドルが、手を振りながら飛び出して来て、思いっきり歌い始めた。
もちろん、知っている曲なので、どうしても身体が反応してしまい、横に小刻みに揺れている。
真由美は、私よりも反応が大きく、時々肩がぶつかる。
でも、2曲目になると、私も動作が大きくなってきて、周りの女の子たちに合わせていた。
何度も真由美と見つめ合いながら、一緒になって歌う。
立て続けに歌っている女の子達を見ていると、自分もその場にいたら、どんなに素晴らしいだろうと思っていた。
そして、ようやくおしゃべりタイムになったようだ。
私と真由美は、汗びっしょりの首筋などをハンカチで拭き、持参していた飲み物で一息ついた。
ステージ上での話しは、大袈裟に話していることは、誰にでも分かるが、絶妙な言い回しにタイムリーな突っ込みが場内を笑いに引き込んでいる。
ズッコケ話しも多く、自然に大声で笑ってしまう。
もう少しこのまま聞いていたいと思い始めた頃、再び、激しいビートの曲が流れ始めさっきまでのチームとは別のグループが登場し、歌い始めた。
そして、休む事なく入れ替わり立ち替わり何組ものグループが歌い、踊る。
私と真由美は、ずっとマヒしたように一緒になって踊り続けて、何曲ぐらいそうしていたか、もう息切れがするんじゃないかとなった時、ようやく2回目の休憩?時間が来たようだ。
汗を拭きながら見ていると、キャロちんさんと誰かが私の知らない話を始めている。
そして、どうやら誰かをステージ上に引っ張り出すようだ。
会場内のボルテージが、それまでにないくらいに上がった時、どうやら男の人が1人登場したようだ。
ステージ上にある大型スクリーンに、その人のアップが映されていたが、その顔を見ようとした時、真由美から飲み物を渡され、それを一口飲んだ。
カラカラに乾いていた喉に、その味がしみて、一気に半分近く飲み続けた。
「美味しいでしょう?」
又、真由美は耳のそばでそう言ってきた。
「うん、気持ちいいくらい美味しい。」
「ウフ、ねえ、今から山中翼くんが歌うみたいよ。」
「誰?知らない人だよ。」
「そっか、私もあまり詳しくないんだ、実は。」
ステージの出っ張った場所に出て、歌い始めた。
時々、男の子の声が聞こえた、綺麗な澄み切った声の持ち主だと思った。
キャロちんさんと一緒に踊っているが、かなり上手いと思った時、ふと私の目の奥に「トモくん?」
そんな筈がないのに、その後、私の頭を過ぎったのは、アイドルとして歌っている私の側で、一緒に踊っているトモくんだった。
この事は、真由美に話してマンガに描いてもらおうと思った。
曲の途中で思った。
明らかに他のカメラとは異質のカメラクルーがいた。
その人達が、新しいCM撮影のスタッフだろう、ずっとそのレンズが僕に向けられている。そして、もう一台、キャロちんさんに向けられていた。
約5分間の曲が終わり、ホッとしていると今の曲に参加していなかったメンバーが、CMの飲み物を持ってステージの中央に走り出て来た。
歌と慣れない踊り、大勢の人の前という緊張感で、もう喉がカラカラに乾き切っていたので、このタイミングでの飲み物は有難かった。
みんなと一緒に大袈裟なアクションで乾杯、一気に飲み干した。
そして、ようやく解放され幕下に引っ込んだ。
「お疲れさま、凄い汗、はい。」
と言って、ユイさんがタオルを用意してくれていて渡された。
顔や首筋の汗を拭っていると、ステージからはけて来たキャロちんさんが、何人かの仲間を連れてやって来た。
「お疲れさまでした、メッチャ盛り上がってたね、ありがとう。」
『マズくなかったですか?』
「全然、最高だったよ、何だったらこれからも一緒に出てくれない?」
『無理。冗談は置いといて、僕も楽しかったです。』
「又、是非来て下さい。チケットはいつでも用意しますから。」
『あ、見るだけなら喜んで。』
「絶対よ、そうだ、勝手にこっちで用意して送り付けるからね。」
『はい、約束ですね?』
「真由美、凄かったね。山中翼?人気あるんだね?」
「そうみたいね、どう、トモ君から乗り換える?」
「イヤだよ、どうして芸能人とトモ君を比較するの?私のトモ君に勝てる人なんて、残念ながらいませんよ〜だ。」
「アハハ、そこまでサヤカに惚れられているトモ君、会ってみたいなぁ〜。」
「ほんと、真由美に紹介したいわ。」
コンサートは、3時間以上になり、ようやく終了したが、アンコールだけでも2曲歌ってくれた。
「アッと言う間だったね、こんなにたくさんの曲が聴けて、こんなに楽しいなんて想像以上だよ。真由美のおかげだね。」
「よかった、サヤカがこんなに喜んでくれて。又、機会があったら来ようね。」
帰りの電車の中、真由美がスマホを弄りながら
「凄い反響を呼んでいるよ、その大半が山中翼を生で見られたことだよ。」
「ふう〜ん、じゃあ、私たちラッキーな日に来たんだね?」
「そうみたい。」
私は、さっき思い付いた、マンガに描いて欲しい希望を真由美に伝え、約束を取り付けた。
東京から帰って来て家でのんびりする毎日、夏真っ盛りで外に出掛けようにも、ギラギラ照りつける太陽が気になり出不精になっていると、かおりからたまにはどっかに行こうと誘われた。
電話で相談しているが、どこを選ぼうにも暑そうでなかなか決まらない。
「ねえサヤカ、何の為の夏休み?日焼け止めクリームがあるんだから、気にしないでよ。あんた、どこにも行かない気?」
「ち、違うよ、どっかに行きたいよ。けどね、こう暑くちゃ。」
「分かった、真由美に相談してこっちで決めるから、あんたは言う通りにするのよ、いい?」
「あ、うん、分かった。じゃあ決めてね。」
第14話をお楽しみに




