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沙也加と僕  作者: ユキから
11/33

前にある道

学生服姿で一人、ポツンと座ってる。

斜めの角度から、徐々に木枠の窓を通して外の光が差し込む様を、そして、校長先生のお話、卒業証書を受け取る。

そこまで、ほとんど音が聞こえて来ない。

次の場面から、柔らかいBGMが流れ始める。

山道を駆け上がるうしろ姿、畑の中で採った野菜を運んでいる。


ようやく横顔が出て来た。

それが、真っ白い歯を見せた笑顔で、大声で叫んでいるシーンだ。

時計を確認すると、約15分。

ここで最初のCM、もちろん、キャロちんさんの笑顔が眩しい。そこで、3本目にして初の僕の声が入る。キャロちんさんの声が続き健康飲料水を二人で飲み干す。

大体15秒が一般的なCMだが、これはロングバージョンで30秒版で流れたようだ。

他のCMも当然、何本か流れた後

東京駅のホームの標識が映り、スニーカーを履いてる足下。歩く後ろから・・・


結局、プロローグが20分延々と続いて、ようやくキャロちんさんの出番になった。

キャロちんさんの役は、都内有数の名家、山王寺家のお嬢様「綾」。

美人で聡明が表の顔、その上、アスリートとしての多種多彩な才能を持つスーパー女子という配役だ。

それなのに、お茶室で着物を着てお茶を点てているシーンから始まる。

そして、次の場面になると、スカッシュで汗をかき、ソフトボールでピッチャー、バットを一閃すると外野のネットを越す。もちろん、テニスもこなして最後はゴルフ。


颯爽と歩く姿が、メッチャカッコいいのだ。


6月の第2週、金曜日の夜、新ドラマ《野生児》が1時間30分の初回拡大版でスタートしたのだ。

この日の朝、ユイさんがスポーツ新聞を何部も買って家に来た。

「はい、すごいわよ、全部に取り上げられてるよ。いよいよ謎が解き明かされるって、読んでご覧なさい。名前の発表もまだだよ。」

『あ、そう言う筋書きは何となく理解出来るんだけど、結果、ガッカリさせないかな?』

「何?怖じ気づいた?そりや、ガッカリする人もいるでしょう。今みたいなネット社会だと、絶賛派と全否定派がいるわ。全員に好かれるなんて誰も想像してないわよ。そんな中でこうやって騒がれるの、悪くないわ。CM効果は十分、もちろん、スポンサーの最大の目的は達成と言うことね。」

『それって、いいこと?』

「当然よ、テレビって映画のようにお金を払って見るんじゃないでしょう?CMを見てもらって商品を購入してもらう、それには、より多くの人に知られた方がいいじゃない?」


それを言うと帰って行った。

僕は、撮影ばかり、完成作品をまだ見ていなかったので、今日が初めて目に出来る日ということで、何となく落ち着かない朝だった。

本来なら学校に行くのだが、さすがに行っても今日だけは勉強が身に入らないように思い、休むことにした。

見るともなくテレビをつけていたが、お昼頃になると空腹を感じ、朝から何も食べていなかったことに気がつく。


近くの食堂では、平日の昼間に高校生が?なんて疑われるんじゃないか、などと余計な想像力が働き、では、どうする?

結果、一番近いコンビニに行く。とりあえず、お弁当のコーナーで何を買うか?

そう、玉子サンドが僕の空腹に誘いをかけて来た。ついでに、チキンバーガーを手に取り、牛乳をひとパック、オレンジジュースも果汁100%のパックを手にしてレジに行く。

店員さんは、母さんぐらいの年格好だったが、元気な声で応対してくれた。

お金を払って、レジ袋を受け取ると、そのまままっすぐ家に戻った。


それからの1日は、異常に長く感じられたのだった。

プロローグから第一話の流れに入ると、自分で演じたにも関わらず、結構ドラマの中に引き込まれている。

特殊効果が見事に決まっていて、キャッチャーが吹っ飛んだところが、最高だと思った。


母さんが電話してきたのは、ドラマが終わってすぐのことだった。

一応、どこが良かったとか、カッコ良く映ってたとか、かなり贔屓目に見ての話だというくらいは分かるが、嬉しいことは嬉しかった。

電話を切ると、すぐにユイさんからも掛かって来た。

母さんとの長電話を抗議されたが、ドラマの感想は良かったらしい。


翌土曜日、この日の撮影は午後からということで、午前中は学校に行くことにした。


登校すると、やはり出席率50%程度の教室、みんなと少し離れた席に着いた。

登校していた女子が6名で、もちろん、名前など知らなかった。

後ろのロッカーから教科書などを取り出している時、女の子たちの話し声が聞こえてきた。

「夕べの見た?」

「アレでしょう?野生児ってドラマ?見た見た、三条なんとか?」

「三条優也よ。あの人、ジャニ?」

「謎だらけの人でしょう?なんか、分かる。だって、今までに無いくらいよ。」

「そうだね、カッコいいとか、イケメンとかって言うような次元の人じゃないよね。」

「キャロちんが霞んで見えた。」

「そう?キャロちんが相手役だからこそみんなが見るんでしょう?」

「何歳かなぁ?私たちと同級生の役だけど、落ち着いて見える。」

「ああ、私も女優さんを志望すれば良かった。」

「うん、私もテレビを見ながら思った。チョイ役でもいいのに。」


へぇ、あの子達も見てくれたんだ?

でも思ったのは、キャロちんさんが共演者で良かったと。


その女子の中に、3人の男子も加わって話が盛り上がっている。

ポツンと離れたところにいる僕に、女子の1人が気を使ったのか、仲間に入らないかと言ってくれた。

しかし、その話題に、僕が入れる話しが無いため、申し訳ないと思いながら断った。

ドラマを見てくれた事は、とっても嬉しい事だった。


授業が終わって裏門に行くと、ユイさんがタクシーを用意して待ってくれていた。

「お疲れさま。お腹空いているでしょうけど後でね。」

『は〜い。どこですか、スタジオ?』

「今日はロケ、多摩川の河川敷よ。」

『多摩川って、行ったことないですよね?』

「そうね、初めて。走るシーンが多いので、頑張ってね。」

『台本に書いてありました。走るのは平気ですけど、ちょっと腹が減って・・・。』

「ロケ弁を用意してもらってるから、それでいいでしょう?」

『あ、十分です。良かった〜、実は、朝メシ食ってないんです。』

「あら、昨日、学校休んだんでしょう?買い物に行かなかったの?」

『コンビニに行きました。でも、今朝の分をすっかり忘れてました。』

「ん?夕べは何を食べたの?」

『チキンバーガーを。』

「それだけ?」

『え?あ、まあ。』

「しょうのない人ね、今度作ったげようか?そんな食事は食事じゃないでしょう?」

『まあ、そうですね。でも、自炊なんてやったことないし。』



土曜日の朝、いつも通りに教室に入ると、女の子たちの井戸端会議が始まっていた。

どうやら夕べのテレビドラマの話のようだ。

いつも以上の盛り上がりが、返って仲間になるのを拒否していた。

すると、元気な声で前の席に座ってこっちを向いたのは、真由美だった。

「おはよ。」そう返すと

「ねえねえ、あれ、何の集まり?」

「知らない。なんか、テレビドラマ?」

「ふぅーん、あ、そうそう、夕べは協力、ありがとう。参考になったわ。」

「そうなんだ、あれくらいならいつでもどうぞ。」

「エヘッ、そう言ってくれるのを期待してたんだ。マンガを描いてると、ストーリーと絵の調和が、時々狂っちゃうんだ。サヤカと話してると、修正出来るんだよね。」

「な〜に?さっきからずっとヨイショしてる?」

「あ、ん〜ん、ヨイショじゃないよ、ホントに感謝してるんだ。」


お昼休みに、かおりから聞かされた。

「ねえサヤカ、あんた、夕べのテレビドラマ見た?」

「あの野生児とかってやつ?見てないよ。」

「私も。なんか、みんながカッコいい人が主人公だよって。あのCMに出てた謎の人のことらしいけど。」

「CMの?なんだ、そもそもそのCM、ほとんど見たことないんだ。いくらカッコいいって言っても、あの人に敵うわけないじゃん。」

「そうだね、サヤカはなんて言ったって、あの人だけだもんね。」

「ウフフ、って、ヤツはどこにいるんだ?」

「ホントねぇ、なんかさあ、私にサヤカが乗り移ったみたい。私も最近、タレントさんとか俳優さんに全然興味ないのよ。」

「一緒だね、私、真由美のマンガの方がいい。あの中には、トモ君がいるもん。」

「私は?段々と良くなってきてない?」

「そうだよ、かおりの描写がそのまんまかおりだよ。」

「エヘヘ、元がいいからね。サヤカに対抗出来る?」

「う〜ん、それはどうかな?アイドル顔じゃないよね、やっぱり私の勝ち?」

「酷〜い‼︎せめて、お世辞でもいいから・・・ま、認めるけどねー。」


最近、家でもお母さんに、アイドルになりたいと話している。

「サヤカがなりたいんだったら、お母さんは反対しないわ。でも、一つ心配なのは、今って、アイドルだらけじゃない?どういうの?グループに入りたいとか?」

「グループって、やっぱりあそこになっちゃうよね。何百人もいる中で、目立てる?」

「そうね、あのグループだと、前に出るのも至難の技でしょうね。でも、他のグループだと、生き残れないかも?」

「だと思う。やっぱり一人でって、難しいかな?」

「アテがあるわけじゃないんでしょう?余程運良くスカウトでもされない限り、末端でウロウロすることになるんじゃない?」

「スカウトって言っても、こんな地方の田舎じゃ無理だね。」

「で、サヤカの本気度は?」

「ん?あ、正直に言うと、テレビに出て有名になれば、ひょっとしてトモ君が見てくれないかな、それで、連絡をくれないかな?」

「あらあら、トモ君が目的なの?だったら、焦っちゃダメよ。トモ君が帰って来た時、サヤカが宙ぶらりんのお仕事をしてたら、あなた、トモ君に合わせる顔があるかな?結果、成功ってのは無いんじゃない?」

「そうだね、お母さんの言う通りね。でもでも、アイドルの夢は持っててもいい?」

「それは持っていなさい。それに、なれるようにいろんな努力はしなさい。」

「うん。どんな時も笑顔でいようと決めてる。トモ君に会えないのは辛いけど、もう泣かないの。悲しい涙は特に、流さないって決めたよ。」

「そう、だったら必ずいい事があるわ、信じなさい。」


私が意識したこと?お風呂で全身を磨く、食事は、栄養重視で暴食はしない。適度な運動を日課にして、紫外線に十分気をつけること。

歌とかダンスは、人前でも緊張しないで出来ることは、最低限必須。

発声練習も地道な努力が必要だし、リズム感を完全に養っておく必要がある。

その決心を真由美に話した時、意外なことを言い出した。


「サヤカがその気なら、私はそのお手伝いをしようか?」

「どういう?」

「ん〜、歌のレッスンは?あ、ダンスもだね。全身ケアのいい本、持ってるからあげる。」

「ん?真由美は、なんで本とか、歌やダンスとか?」

「実は、私も興味があったんだけど、今は、夢をマンガだけに絞ったんだよ。」

「アイドルは諦めたの?」

「エヘッ、実は、サヤカを初めて見た時にね。あ、勝てないって思ったよ。」

「いやいや、私よりも、真由美の方がもう出来上がってるって思うよ。背筋とか、歩き方にしても、全然綺麗だもん。羨ましいところが、いっぱいある。」

「小学校の頃に憧れてさ、いろいろお母さんと一緒に練習してたんだ。」

「じゃあさぁ、私に教えてって言うとおこがましいけど、注意してくれる?」

「ウフフ、いいわよ、その代わり、有名になったらおこぼれいい?」

「おこぼれ?全然いいわよ、私に出来ることなら何でも。」


以来、真由美に姿勢なんかを教えてもらうようになった。

その上、お母さんが例えば、私の部屋に大きな鏡を置いてくれたり、日頃使っていない部屋を、ダンスの練習が出来るように、床をフローリングに替えてくれたりと、全面的に後押しをしてくれたのです。


かおりと真由美は、それ以来、家に泊まりに来るようになって、よく一緒にモデルウォーキングとか、ダンスとかして遊ぶようになり、それを、真由美はどんどん漫画にしていったのだ。

憧れの世界を作り上げて、私は遮二無二進んで行こうと決めたのです。



第一話の視聴率が発表されて、15%だったとユイさんから電話があった。

その数字が良いのか悪いのか、僕が判断をつけかねていると、ユイさんが

「番組のスタート時点では一桁だったんだよ、それが時間を追うごとにアップしていって、最後の30分は20%前後で推移してたの。大好評だったってことね。」

『それって、喜んでいいんですか?』

「当たり前でしょう、さあ、今日からまた真剣勝負よ。スタッフが今まで以上に気合いを入れてくるわよ、頑張らなきゃね。」

『あ、はい。頑張ります。』


いつもより早めに撮影スタジオへ行くと、すでに多くのスタッフが来て、作業が始まっていた。

大きな声で挨拶をすると、驚いた事にスタッフ全員が作業の手を止め、気をつけの姿勢で挨拶を返してくれた。

恐縮して、僕は何度もペコペコお辞儀をしていた。

そこへ、普段は撮影ギリギリにしか現われないADさんが

「よかったよかった、ありがとう。」

と言いながら握手してきたのだ。

「この調子で頑張ってくれたら、凄いことになりそうだぞ。三条ブームの到来だ。」

『あ、いえ、キャロちんさん人気が・・・』

「いや違うな、君だよ、謎のままだったのが大きいな。三条優也のインパクトが大きい。アイドルスターとして、私たちも久しぶりに燃えてるからね、頑張ろうな。」

『はい。』


残り3話分の撮影で終了する。

キャロちんさんのグループから、他に3人が同級生役で加わり、休憩時間になると明るさがいっぱいに溢れ、賑やかになっている。

ベテラン俳優さんたちも一緒になってその仲間に入り、益々、笑い声が響いていた。

彼女たちの凄いところは、スタジオに入った時から、仕事が終わって帰る時まで、全てにおいて全力なこと、そして、ずっと笑顔でいることだ。

ユイさんから、何度もああいう風な人になりなさい、と言われている。

ネガティヴは隠して、常にポジティブでいるのを目標にして撮影に臨んでいる。

結果、山中翼という主人公が多くのファンに受け入れられる。

もちろん、山王寺綾さんがアイドルパワー満開で取り組んでいるのも、僕は最大の理由だと思っているのですが。


こういう高校生を対象としたドラマだと、少しは恋愛が関係する。

僕、翼と綾さんがやがて恋におちる・・・という設定は無く、あくまでクラスメイトの一人、仲良しだけど、正義感の塊のような綾さんと、田舎者ののんびり屋 翼が織り成す物語、二人の間には、何となくそうかな?という雰囲気だけはある。

最終回の台本がまだ手元に届いていないから、結末は今のところ想像出来ないが、ストーリーを思い返してみると、このままの関係がいいのではないかと僕なりに思っている。


前の日、多摩川の河川敷で何度も全力疾走して、さすがに脹ら脛が少し張っている。

でも、その痛みも忘れさせてくれるくらい、みんなの迫力が凄く、モタモタしていられない。

「おーい三条くん、そこはもっと明るい方がいいな?」

『あ、はい。』

思いっきりはしゃいでみた。すると、すぐにオッケーの声が聞こえた。


この日は珍しく、別撮りのシーンを見学する事が出来、キャロちんさんたちの演技を目の当たりにした。

ADさんからスタートの声が掛かると、それまで賑やかにしていた彼女たちが一気にギアチェンジし、求められている演技をきっちりやり始め、その勢いのままどんどんと進んで行く。

あと少しだと思った時、セリフがグダグダになってしまった。

すると、他の3人が待ってましたとばかりにツッコミを入れる。

間違えた子は、監督さんたちスタッフに必死に謝っているが、あまりにも絶妙な呼吸でツッコミが入ったことで、ほとんど全員が笑っている。

もちろん、僕も声に出して笑ってしまった。


普段より時間の経過が早く感じた。

そして、この日の最後のシーンが終わり、私服に着替えていると

「優也さん、この後予定ないよね?」

ユイさんが声を掛けてきた。

『やだなぁ、いつもと一緒です。どこにも行く予定なんてありませんよ。』

「アハハ、そうよね、じゃあ皆さんと食事に行くからね。」

『エッ、皆さん?』

「そうよ、今日はいつもより上がりが早いから、皆んなで行くんだって。」

『ヘェ〜、そういうこともあるんですね?』

「もちろんよ、そう言えば優也さんは初めてだったね。」

『ええ、初めてです。』

「お酒飲めないし、いつも終わるの遅いからね。いい機会だし、もっと出演者の方々と仲良くなれるわよ。」


連れて行かれたのは新宿にある中華料理店。

中に入ると、お店の一番奥の方にある個室、テーブルが丸く4つもあり驚く広さだった。

すでに出演者の方々と一部スタッフの方々が席に付いていて、僕を見るとお酒が飲めない人の為にと用意してくれているテーブルに座るように教えてくれた。


ほとんどの人が飲めるのだろう、僕の周りは結構空席がある。

料理が運び込まれ始めると、すぐに乾杯があり、一気に賑やかになってきた。

ユイさんも僕の監視役ということで、隣に座っている。

「こういう時は、全然遠慮しちゃダメよ。どんどん食べるのがいいわ。」

『いいんですか?』

「こういう席を慰労会と言って、遠慮は禁物。だから、日頃の栄養不足を補うこと。」

『ヘェ〜、すげえ。じゃあ遠慮なくいただきます。』


お箸を持って、先ずは一番近くにある料理に手を伸ばした時、入り口のドアが開いてキャロちんさんたち4人が入って来た。

「遅くなってごめんなさ〜い。」


相変わらずの元気良さに、他の人達から拍手喝采。

そして、僕の隣の空いている席から4人が座る。

「お疲れ様で〜す。」


「おっ、三条くん、いいなぁ、若い美人を一人占めか?」

先輩の俳優さんが冷やかしてくる。すると

「どうせ私たちはオバさんですよ、すいませんね!」

ベテラン女優さんがすかさず突っ込みを入れると、別の俳優さんが

「俺はこっちの方がいい。もう、オバさんに首ったけ。」

「あら〜、って喜ばないわよ、オバさんって言うな‼︎」

「いっけね。」

全員が大笑いになった。


僕たちのテーブルでも、キャロちんさんたちとジュースで乾杯し、料理を食べ始めた。

すると、目の前の料理がどんどんと減り、あっという間に大きなお皿が空になっていく。彼女たちの食欲は際限を知らないようだ。

その食べっぷりの様子を見ているところをキャロちんさんに気付かれた。

「ねえ、三条くんって生ライブ、見たことはある?」

『あ、いえ、ないです。』

「あら、そうなんだ?じゃあ、今度招待するから、私たちのコンサートに来る?」

『エッ、キャロちんさんたちのって、凄いんでしょう?』

「どういう意味かな?確かに、何十曲もダンスと歌を歌うんだけど。」

『あ、聞いた話ですが、何万人もお客さんが来て・・・』

「うん、最高が7万人だったよ。そのお客さんたちが、一斉にサイリウムを振ってくれるんだけど、それは壮観だよ。でね、ステージの上から見ると、絶対手を抜けないのよね〜。みんなが競い合うようにノリノリになって・・・」

『想像するだけでも凄そうです。一度でいいから見たいですね。』


そう言いながらユイさんの方を窺うように見ると

「いいんじゃない?但し、私も一緒ならね。」

すると、キャロちんさんの隣に座っている通称トンピーさんが

「ねえ、来月の東京ドームで開催する全国ツアーに来て。」

「そうだね、チケット2枚抑えるから、絶対だよ。ね、ユイさん、スケジュール。」

「やった、私の分も?じゃあ何とかするわ。」


生ライブを想像していると

トンピーさんが驚くことを言い出した。

「ねえ、折角だから一緒にステージに上がって、私たちと歌うのはどう?」

「あ、それいい。いいね、三条優也って言うだけでお客さんが大喜びするよ。」

キャロちんさんも同調すると、他の人たちも一緒になって誘ってくる。

『あ、いや、ムリムリ、歌うなんて無理ですよ〜。』

「ん?いや、優也さんはやった方がいいわ。」

『ユイさんまで、何を言ってるんですか?見に行くだけですよ。』

トンピーさんが

「ついでにダンスも一緒に。デモテープを用意しますので、練習して下さい。リハの時間が取れないでしょうからぶっつけ本番?」

『余計無理ですよ。もう、虐めないで下さい。』

「あ、キャロちんさんがセンターの曲だと、アレにしようか?隣の立ち位置を空けておけばバッチリだよ。ね?」



第12話をお楽しみに





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