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50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく  作者: かわさきはっく
第二章 ロルディアの影

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第31話 カイランの遺志

 小川沿いの静かな林を歩きながら、俺たちは先の目的地について話し合っていた。


「まずはここ。交易都市ロルディアが最適ね」


 エルンが地図を指差す。


「この街は、複数の種族が集う中立都市。エルフやドワーフ、魔法使いも珍しくないわ」


「俺たちみたいな追放者でも、居場所が作れるかもしれないってわけか」

「ええ。情報も手に入るし、装備や魔導具の補充もできる」


 なるほど。

 旅において、最初の拠点としては申し分ない。


 だが——。


「……なあ、エルン」

「何?」


 歩きながら、俺はふと口を開く。


「お前はカイランのことを、どこまで知ってる?」


「彼は私たちエルフの中でも異質だったわ。常に孤独で、知を求めていた。森の教えや伝統に縛られず、もっと広い世界を見ていた……でも、時にそれは異端と呼ばれたの」


「異端……か」


 俺の中に眠るカイラン——かつての偉大な賢者の魂は、今も共にある。

 魔法の基本から応用、思考の指針まで。数多くの知識と経験を、俺に語りかけてくる存在だ。


 だが、肝心なカイランその人については、まだ知らないことばかりだ。


 ふと、思考の中に声が響く。


『……探るのか、お前は』

「カイラン……」


 俺は心の中で語りかける。


『私のことなど、気にせず進めばいい。お前にはお前の道がある』

「だが、それでも知っておきたい。……お前が何を信じて生きていたのか。なぜ、俺に身体を託したのか」


 少しの沈黙の後、カイランは低く笑った。


『……お前のような人間が、私を理解しようとする日が来るとはな』

『だが、それも悪くはない。……いずれ話す時が来るだろう』


 その言葉に、俺はわずかに微笑む。

 カイランとの距離が、ほんの少し近づいた気がした。


「カイン……?」


 隣でエルンが、俺の様子をうかがっている。


「大丈夫だ。ただ、心の中の同居人と話してた」

「……本当に、妙な関係ね」


「でも、嫌いじゃないだろ?」

「……ふふ、否定はしないわ」


 そんな会話が交わされたとき——ルナが突然耳をぴくりと動かした。


「……人、いる。さっきから、ずっと……」


「またか」


 俺たちはすぐに歩調を緩め、さりげなく周囲を確認する。


 街道から少し離れた林の中、遠くに影が動く。


「追跡者かもしれない。行動を読まれているわね」

「なら……こちらから動くか」


 俺は森の奥、起伏のある地形へと視線を移す。


「ルナ、木の上に隠れて。気配の強い方角を見ていてくれ」

「わかった……」


 ルナは軽やかに木を登っていく。

 一方、俺とエルンは森の斜面に身を伏せ、敵が現れるのを待つ。


 葉擦れの音、風の流れ、獣の気配……そのすべてを感じながら、緊張の中で静かに呼吸を整える。


 そして——


「……いた」


 茂みを抜けて姿を現したのは、獣革を纏った男二人。

 その目は鋭く、腰には短剣。話し合いで済むような気配はない。


「……やっぱり仕掛けにきたか」


 俺は腰の短剣を引き抜いた。


 次の瞬間、敵が動いた——。

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