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お飾り聖女は放っておけない、第二王子は放っておきたい〜転生聖女は自由気まま〜  作者: カンテラ澪


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20 ヴィヴィアンの断罪


⌘レイナルドの寝所で死闘は続く。


ヴィヴィアンが振り翳して斬りつけてきた剣は、私の腕一本分手前で止まった。


「何これ、死ね!死ね!」

何回、斬りつけてきても手前で止まる。


「そこまでだ、ヴィヴィアン!」


レイナルド様が剣の切っ先をヴィヴィアンの首に突きつけている。


「レイ!」

ヴィヴィアンが動くと剣の切っ先が食い込んだ。


「痛いわ、レイ、やめて」


「私は本気だ、我がエレノアを傷つける者は何人たりとも許さぬ」


「レイ、あなたと結ばれるのは私よ」


「私を名で呼ぶな、許可した覚えはない」


殿下の顔が本気なのがわかる。あんな冷たい顔を見たのは初めて。


「この女が襲ってきたのよ」


「当たり前だろう!私とエレノアの寝所に侵入したのだ、エレノアには反撃する権利がある」


殿下が入ってきた後ろの扉の向こうに騎士がたくさんいる気配はあるけれど誰も入ってこない。


「エレノア、こちらへ。私のところに来れるか」

私は首肯いて、ヴィヴィアンの前を離れ殿下の側へ走った。


殿下は剣をヴィヴィアンに突きつけたまま、反対の手でブランケットを被せて抱き寄せてくれた。

「大事ないか、遅くなってすまぬ」


「来てくださって、ありがとうございます」

素直に伝えると、殿下はふっと口元を緩めまた厳しいお顔に戻る。


「騎士団総員、属国ブルベールのヴィヴィアンを捕えよ!罪状は、主国の王族に対する不敬!」

騎士達がなだれ込んでくる。


ほぼ全裸のヴィヴィアンは、その後も暴れに暴れたが、騎士達に取り押さえられ、そのまま連行されていった。


「エレノア、怪我は?」

「レイナルド殿下、ありがとうございました。自己治癒ができたので、何とか戦えました。殿下の寝所に侵入するなど言語道断。婚約者の名誉にかけても、戦う所存でございました」


「……エレノア」

殿下に、ぎゅうっと抱きしめられた。


えっ、ええーーっ!

周りにまだ騎士達がいるのに、めちゃくちゃ恥ずかしい。

殿下の胸元に顔を隠して知らんぷりした。


しばらく殿下は、離してくださらなかった。




⌘

ヴィヴィアンの裁判は、ルクス王国の法廷で行われた。


あの大騒ぎがあって、ブルベールの芸術交流団は、副団長のパトリック様を残して全員が帰国した。

入れ替わりに、一連の審議をするためにブルベールから法務大臣が到着。


審議の中心は、ルクス王国のヴァルト法務大臣、私のお父様。

そして審議補佐が、ブルベールの法務大臣。



ヴィヴィアンの罪状は、震えがくるような恐ろしいものだった。


第二王子レイナルド殿下への不敬、その婚約者である私に対する傷害及び殺人未遂、更にブルベール王国での第一王女キャロライン・ブルベールの殺人。


全てに証拠があった。

ブルベール国の湖から見つけ出された証拠は、ヴィヴィアンが沈めた小舟だった。舟底に開いた穴には、ヴィヴィアンが王から賜った短剣が刺さっていたそうだ。

それを見つけたのは、キャロライン王女の王配としての婚約者パトリック様だった。キャロライン王女を愛しておられたパトリック様が執念で見つけた数々の証拠がヴィヴィアンを追い詰めた。


そしてレイナルド殿下の手元にも、ヴィヴィアンが送ってきた手紙が残っており証拠となった。私に怪我を負わせた扇は鉄扇、つまり武器だった。


ヴィヴィアンの母である側妃は、ヴィヴィアンを第一王女にするため、多くの騎士を籠絡したそうで、ブルベール王国側で、妃の称号を剥奪し放逐。


そしてヴィヴィアン・ブルベールはもちろん全ての罪が立証され、断罪は王家に委ねられた。


⌘

牢獄から欧大陸へ


国王陛下と王妃様は死罪を希望されていたが、当時者であるレイナルド殿下と私は、死を望まなかった。

そして私達が出した答えは。


「エレノア、本当にそれでいいのか」

「ええ、きっとヴィヴィアンにはピッタリだと思います」

「しかし」

「生涯その世界からは逃れられないでしょう?」

「まあそうだが、しかし」


私は殿下の唇に指をそっとあて横に首を振る。


「私の好きなように、と言うお約束でしょう?」

「……わかった」


殿下に伴われて地下の牢獄へと降りていく。

そこにはブルベールの法務大臣とキャロライン王女元婚約者だったパトリック様もいらしている。


鉄格子の箱の中でヴィヴィアンは、懲りもせず、暴れまくっていた。

「出しなさい!お飾り人形!」


まだ言ってるわ。


ブルベール法務大臣に断罪の書を手渡す。


「主国ルクス王国の王命をもって刑を執行する。今をもって王女の称号を剥奪し、名をヴィヴィと改める。剣闘士として、欧大陸の闘技場へ転移陣を使用し送るものとす」


「何ですって!バカにするな!私は王女よ!」

鉄格子にへばりついて唾を飛ばし叫んでいる。

ほんとに狂犬ね。


私と殿下は転移陣に魔力を込めていく。

陣が完全に起動したところで、私はヴィヴィへ声をかけた。


「ヴィヴィ、あなたが伸び伸びとそのままの姿で過ごせる場所よ。健闘を祈るわ」



法務大臣が一言、発した。


「刑を執行」


魔法陣が光った後には、鉄格子も残らなかった。


ブルベール法務大臣とパトリック様がレイナルド殿下に深々と頭を下げ、振り返る事なく階段を上っていく。

ブルベール王国が失ったものは大きい。


「エレノア、私はあなたを失わずに済んだ」

そして殿下は手を差し出す。


私は姿勢を正し、殿下の手を取り、階段を上りはじめた。



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