19 狂犬ヴィヴィアンとの死闘
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レイナルドの寝台。
「あんた誰」
「ほないひぇ、しゃわりゃにゃいひぇ」
まだ口も顔も痛くて話せない。
ヴィヴィアンは速攻で抱きついてきた。
当然、寝台にいるのが殿下ではなく、女だと気づいてしまった。
「この女!レイナルドお兄様の寵愛を受けるなんて許さないっ!」
揉み合い、蹴飛ばし合いになる。
真っ暗で見えない。
でも私だとわかったら、ヴィヴィアンはもっと怒り狂うはず。
寝台の反対側へゴロゴロ回って、床へ落ちた。
ドスッ。痛っ。とにかく今は逃げるのよ。
「どこよ!夜這い女!殺してやる」
それ、そっちでしょ。
そしてヴィヴィアンが灯りをつけた。
床を這っていた私を見た途端、寝台から飛びかかってきた。
「キャロライン、まだ生きてたの!殺したはずよ」
え?私を姉と間違えてる?
それより、こっちも驚愕した。
ほぼ全裸のヴィヴィアン。
私も寝着のワンピースだけど、ヴィヴィアンは見るに耐えない。
「この女、正妃から生まれただけで王女になったくせに、レイナルドお兄様まで、私から奪おうとして絶対に許さないわ、この髪も瞳も、こんな色!許さない!」
ああ、そういうことだったのね。
狂犬らしく、ヴィヴィアンは私に馬乗りになって首を絞めてくる。
必死でその手を振り解こうとするけれど、なんでこんなに強いの?
その時、狂犬が私の首飾りに気がついた。
「キャロラインーーー!レイお兄様の瞳色、こんなものまで」
首飾りを引きちぎろうとしている?
ダメ、無理よ、首に食い込んでくる。
殿下しか外せないのよ。
あ、そうだ、この首飾りは。何とか石に触れる。
助けて、殿下。
青い魔石がほんのり光った。
そして魔力を込めて、狂犬を押し除ける。
王族の寝所に押し入って狼藉三昧、私は防御する権利があるわ。
私の反撃に狂犬が少し怯んだ、いや激昂しただけだった。
「このおおおお、キャロライン、死ね!お母様からお父様を奪った女の娘!売女!盗人!」
放っておけば好き勝手の言いたい放題。もうこれ以上は黙っていられない。
少し距離を取って、自分に治癒魔法をかける。
鈴蘭の聖女が持つ治癒力は、修復であり再来。
「ヒール!」
私の全身が淡い光に包まれ傷が癒えていく、顔の痛みも消えた。
よし!
「あ!侍女!お飾り人形!」
言わしておけば。
「私は鈴蘭の聖女、レイナルド第二王子殿下の正式な婚約者。あなた、殿下の寝所に忍び込んで、タダで済むとお思いかしら」
狂犬ヴィヴィアンが激昂し顔が真っ赤になっていく。
煽ってしまった。
歯軋りをして睨んでくるヴィヴィアンはまさに赤鬼の形相だった。
「殺してやる!キャロラインもあんたも!レイは私と結婚するのよ」
次はレイ呼ばわり?
「いい加減になさい!王女とはいえ、属国の者が主国の王族の寝所で暴れていい理由にはなりませんわ」
来るなら来い!
今のヒールで体力が上がった気がする。凛子モードなら体術の心得もあるわ。
突進してくる狂犬をかわして体勢を整える。次は投げ飛ばすわ。
まるで闘牛だわ。
そして掴みかかってきたところを、襟首を掴んで放り投げた。
「ヤッ!」
ドンッ!
しかし、狂犬は本当に狂犬だった。
すぐに起き上がって突進を再開してくる。
そして私は不覚にも、床に脱ぎ散らかっていたヴィヴィアンのドレスで足を取られ転倒。
そこに馬乗りになってくる、ほぼ全裸の狂犬。
これは死闘。
そして、狂犬の視線がある一点に向けられる。
あ、その先はまずい。
殿下の剣が数本置いてある場所。
殿下の剣には魔剣や何でも切れる剣があるのよ。
私を突き飛ばし、剣へ向かって走る。ダメ!
必死で追いすがるけれど、ヴィヴィアンのドレスが滑って動けない。
「ふん!これであんたも最後ね」
狂犬が剣を鞘から抜いて突きつけてくる。
「その剣は……」
「やれるものならやってみなさい、私は簡単には死なないわ」
「キャロラインのように命乞いしなさい!」
「しないわ、絶対に、私はレイナルド殿下を信じているの」
「死ねーーーっ」




