18 謎だらけのヴィヴィアン第二王女
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引き続きレイナルドの寝所。
私の問いに殿下が固まった。
え?この人も、固まることがあるのね。
私は微笑んで、紙に書く。
——あのヴィヴィアンは狂犬です。今や手負いの魔獣かも?
だから教えてください。
知らないと対処できません。
殿下だって、エレノアの黒歴史、ご存知でしょう。——
殿下が頷き、話し始める。
「幼い頃、母上に連れられて茶会へ行って、淡いハニーブロンドの髪色でピスタチオグリーンの瞳の少女に会ったのだ。そこでなにかあったはずなのだが、思い出せず姿形だけが記憶に残っていた」
——それがブルベールの?(紙に書くから面倒ね)——
「まだ成人前に、ブルベールへの語学訪問旅行で、世話役だったのが、第一王女のキャロラインだった。」
——運命の再会ね——
「いや、そういう感じではなかった。民を思う心優しい女性だった。帰国後は文通をしていただけだ」
(ちょっと待ってよ。だって気になっていた女の子でしょう?)
——殿下が、ずっと気になってらした女性でしょう?——
「王族の知り合いなどそんなものではないのか。愛だ恋だと騒ぐものでもない。だから母上から【鈴蘭の聖女】が婚約者候補だ、と言われた時もそういうものだと受け入れた。それを手紙に書いた。その後、しばらくしてキャロライン王女は儚くなった」
(何なの、この朴念仁は!)
——婚約者ができたとわざわざご連絡を?ご病気だったの?——
「いや、私の記憶では、成人したら婚約者が決まる、と書いたはず。それとキャロラインは事故で亡くなった。ヴィヴィアンからの文には、姉妹で船遊びをしていたときに、船が浸水して湖に投げだ出されたと書いてあった」
(いやいやちょっと待って、なんかおかしい)
——その書き方だと、受け取った女性からすれば、もうすぐあなたと婚約が決まる、にも取れます。聖女と結婚するとは書いてないでしょう?勘違いなさっていたかも?
それにおかしくないでしょうか。船遊びなら護衛騎士は必ずいたはず。王族の救出は王位継承権の高い方から、このルクスでもそうですよね。なのに妹だけ生き残った。——
殿下が青い目を私に向け、考え込んで呟いた。
「……ヴィヴィアンは側妃の子で、当時は継承権がなかったはず」
(なら、それはもっとおかしい)
——ならなぜ、ヴィヴィアンは殿下にお手紙を出せたのですか?
王族の文の送り先は検閲が入る。特に未婚男女で婚約者でもないのに殿下に手紙が届くのはおかしいです。殿下は私の紋章入りの便箋でも気がつかれた。どうして途中から文通相手がヴィヴィアンに変わったのですか?——
「ちょっと待て、エレノア。そうだ、確かに変だと思ったのだ。母上は私とキャロラインが文通していたのをご存知だった。許可をいただいたからだ。だから常に無開封のまま文が届いていた。その手紙を開封したら、中身はヴィヴィアンだった。おかしいと思ったのだ」
次の筆談を私が書くのを待たずに、殿下は立ち上がった。
「エレノア、話が途中だが調べたい事がある。いずれあなたの質問には必ず答えるので、今日は先に休んでほしい。傷も痛むだろう。何かあればこの首飾りに軽く魔力を通せ。必ず戻る」
そう言って髪を撫で、灯りを消して行ってしまった。
お飾り人形の話しはどうなったの?
でもまあ、こんな怪我をしている時にする話でもないわね。
今日は色んな事がありすぎて、疲れたわ。
考えごとをしていたつもりが、いつの間に眠りに落ちていった。
誰かの気配で目が覚めた。誰?
「レイナルドお兄様、わたくしです、お会いしたくて」
まさか、ヴィヴィアン王女。
どうかしているわ。殿下の寝所に忍び込むなんて。
入り口に護衛騎士がいたはず。
なぜ?
それに殿下の寝台にいるのが私だとわかれば、この狂犬は逆上するに決まってる。
この怪我でやり合うのは得策ではない。
どうしよう。
そして衣擦れの音がして、パサリと何かが床に落ちた。
まさかドレスを脱いだ?
この女、本気で夜這いにきたの?信じられない。
そして、私が横たわっている寝台へ滑り込んできた。
ちょっと、寄ってこないで!




