15 隣国王女来訪
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騎士団早朝訓練。
目の前では、早朝とは思えないほど、白熱した剣の模擬訓練が行われている。
もちろんレイナルド殿下も、若手に稽古をつけているが、ハンパなく強い。
この人、役職だけかと思ったらほんとに強かったんだ。
相変わらず私は、侍女のお仕着せで、殿下の側仕えで色々と手伝わされているが、なんか慣れてきた。
それに、マホマで王子妃の寝台を壊し、殿下の寝所で一泊した翌日から、あっという間に噂が広まった。
どんな噂かって、こんな噂。
『あの、あの冷静沈着にして冷酷無比な第二王子が婚約者を溺愛し、寝所から出さないらしい。その上、侍女の真似事をさせて片時も離さず側に置いている』
溺愛じゃなくて、おかしな物を作らせないため、だそうですけど。
城内を歩くと周りの目が生温かい。
「危ない!」
騎士団長が若い騎士の剣を叩いたら、木剣がこっちに飛んできた。
この程度、と私は聖女の魔法を放つ。
剣は浄化されて霧散した。騎士団長が笑ってる。若い騎士は自分の木剣が消えて唖然としていた。
あ!やっちゃった。
なんか視線を感じる方を見ると、殿下だった。
殿下がこっちに歩いてくる。
「エレノア、お前のせいで木剣の数が減っている。消さずになんとかできないのか」
汗も滴るいい男?ではなくて、汗だくの殿下に手拭いを渡す。
「そう言われましても攻撃魔法は持っておりませんし。浄化したら消えてしまうのは仕方ないですわ、こっちに飛んで来た木剣や弓は防御していいと仰ったでしょう」
「まあいい、今日の朝練は終了だ」
「注目!」
副騎士団長の声が訓練場に響く。
説明によると、明日から隣国の王女が芸術交流で訪問されるらしい。
ふーん、大変ね。
外交は、王太子妃である【ひまわりの聖女】にお任せしていいと言われているので私には関係ないわね。
準備も連絡もこっちに来てなかったし、第二王子であるレイナルド様は、国内の国政の担当が多い。
そう聞き流して、着替のために私室へ戻る殿下の斜め後ろに控え、歩き出すと殿下が話しかけてきた。
「エレノア、隣国ブルベールの王女のことだが」
すごい勢いで、オスカーが走ってきた。
「レイナルド殿下、予定が変わりました、ブルベールの一行がすでに城下に入ったと、先触れが」
「明日ではないのか」
殿下の顔が曇る。珍しいわね、こんな顔。
「天候が良く、早く到着されたとのことで」
「兄上は?」
「王太子殿下と王太子妃殿下もお迎え準備を急がれています」
「エレノア、時間がない、私は執務室で着替える。そなたも着替えて謁見の間へ来るように」
そこで殿下と分かれて、私は王子妃部屋へ急いだ。
着替えと言っても、侍女のお仕着せって、正装とかないんだけど。
それより、ブルベールの王女の事って何だったのかしら。
まあいいわ。
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王子妃部屋。
衣装部屋で、マーサに侍女用の新しいお仕着せを出してもらい着替える。
「エレノア様、謁見の間とお伺いしましたが、お衣装がこれでは」
侍女のアリスが首を傾げる。
「でも殿下は着替えて謁見の間へって」
マーサとアリスが顔を見合わせる。
「王妃様にお伺いして参りますので、しばらくお待ちくださいませ」
アリスが急いで部屋を出て行く。
「でもマーサ、私、そんな他国の王女殿下をお迎えするような衣装なんて、侯爵家から持って来てないでしょう?」
「すでに準備は整っておりますよ」
「どういう事?お母様が?」
「いえ、王妃様がお支度の指示を出されたのと、殿下からも」
王妃様がドレスを。しかも殿下も準備してくださってるなんて。
卒がないわね、レイナルド様は。
その時、侍従が部屋に来て告げる。
「ブルベール王女殿下ご一行様がご到着です。エレノア様には急いでお越しいただくようにと」
「お嬢様、いかがいたしましょう」
「アリスを待っていては、お迎えできないわ。遅れては失礼にあたります。とりあえず行きましょう」
——そのタイミングの悪さが、エレノアをとんでもない事態へ引き摺り込む事になるとは、誰にも想像がつかなかった。




