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お飾り聖女は放っておけない、第二王子は放っておきたい〜転生聖女は自由気まま〜  作者: カンテラ澪


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14/22

14 殿下寝所に連行されました

お飾り14話


⌘

エレノアの寝所


私は箒ごと天蓋の布が絡まって身動きできない。

居間の方から足音と声が聞こえる。


「エレノア様、如何されました?」

マーサだけじゃなくてアリスの声もする。

どうしよう、見つかったら。


殿下が、右手を居間側の扉へ向けて手を上げると、鍵がカチリと締まった。

同時にあの青い瞳で見据え、寝台に飛ぶように向かって剣を振り抜いてくる。

ああ、死ぬのね、私。


えっ?その瞬間、殿下に箒布も布も丸ごと小脇に抱えられていた。


ガラガラドサッ!

割れた天蓋が寝台の上に落下した。


ドンドン、ドンドンドン。

「エレノア様、ご無事ですか」

扉を叩く音がするが、施錠されているので開かない。


殿下は私を見て片方だけ眉を上げてフッと笑った。


「大事ない!少し激しく動き過ぎて寝台が壊れただけだ、エレノアは私の腕の中にいる。私の寝所に移るので案ずるな。それと明日の朝は起こさずともよい」


「なっ」


「……殿下!それはようございました。ごゆっくりなさいませ」


マーサもアリスも待って!ようございません。


二人を呼ぼうとしたら、私の顔を殿下の胸に押し付けたので、声が出せない。うー。


そして侍女たちの足音は遠くなった。


周りが静かになり、殿下の寝所へ運ばれ、箒ごと殿下の寝台に放り投げられた。


殿下は寝台前の肘掛け椅子に腰掛け、その横に剣を立て掛ける。


「っ」

「さて、エレノア、説明してもらおうか」


「これはマホマで」

「それは聞いた」


「……あの、助けて頂きありがとうございました」

「ほう、礼が言えるようになったのか」


青い目が、私の全身を突き刺すように見ている。

「見事な眺めだ」

「なっ!」

「箒を持った侯爵令嬢が破れた天蓋布に絡まっている、まるで蓑虫」

「笑ってないで助けてください」

「助けたではないか、放っておいたら天蓋の下敷きだった」


「それはお礼を申し上げました。でも殿下がいなければ、ちゃんと飛んでいました」

「夜中の寝所で、箒に乗って飛ぶ王子妃など聞いたことがない」

「婚約者ですっ」

「王子妃として扱っている」


嘘?とりあえず、でしょ?

「さっき言ったであろう」

何を?私は身動きできない布の中で首を傾げる。


「私の寝所に移る、明朝も起こすなとな」


え?それが何よ!


えっ、ええ?

まさか、そういう意味?

なら、さっきなんか言ってた。もっと過激なことを。


「殿下、たわけたことをっ!」

蓑虫みたいにちょっとずつ動くけど動けない。


「どっちがたわけているか、まだわからぬか」

「だ、だって祈るばかりの無能な聖女は嫌です」

「それがお前の役目だろうが」

「ち、違います、私はもっと」

「もっと、なんだ」

「もっと、いっぱい思い浮かぶから、役に立ちたいの」


殿下が大きなため息をつき、頭をくしゃくしゃっとした。


「お前は、エレノアではなく、リンコか」

「……そうとも言います」


「……悪魔つきか」

「やめてください、真っ当な人間です、神の啓示で、エレノアとリンコの記憶があるだけです。魔法があるならもっと利用できるでしょう」


「聖女をやめたいのか」

「祈りは続けます、国のために。でも好きにしたい」

「好きになぞできるはずがない」

「そういう意味ではなくて、思ったことを形にできる力があるのに、もったいないでしょう?」

「木箱で走って、箒で飛ぶことがか」

「だって、箒は馬より早いし」


殿下が立ち上がってこっちに来る!

いや違った、あっちに行くの?


「今日はそのままで寝るがいい」

「ちょっと待ってください」

「なんだ」

「その、普通に眠りたいので何とかしてくださいませんか」


「………箒か私か選べ」


何?その究極の選択?

どうしよう。


「悩むことか?」

殿下が呆れた表情になる。可愛い、こういう顔するんだ。


「眠いんだ、明日の朝も早い」

「で、でで、ででん」

噛んだ。


「もういい」

殿下は剣を持ってさっと布を切り裂いた。

「きゃっ、危ないじゃないですか」

「薄布くらい切れるわ、マホマは渡せ」


あ、取り上げられちゃった。


それから殿下はどこからかブランケットをたくさん持ってきて、丸めては寝台の真ん中に土手を盛り上げた。


「こっちに来るな、大人しく寝ろ!いびきをかいたらクビを絞める。この部屋は結界が強い、逃げ出したら怪我をするぞ」


それだけ言って、殿下は土手の向こうに消えた。



私も眠くなってくる。

今日は、侯爵邸で目覚め、フキボー作って、殿下に王城へ連れ戻され、マホマ作って宙を飛んで、忙しい一日だったわ。


ふわぁ、大きなあくびが出る。


「おやすみなさい」



◇

レイナルドの土手側では。


——なんなんだ、この女は!

何がおやすみなさい、だ。


黙って祈っていただけのお飾りの聖女ではなかったのか。


箒に乗って飛ぶなど、馬鹿げているにも程がある。

しかも、あられもない姿で箒に跨り、天蓋に突っ込む。

まるで蓑虫。

フッ。


必ず、お飾りに戻してやるから覚悟しろ!


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