12 殿下に猫の鈴をつけられました
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侯爵家サロンで、殿下と和解したあと、お父様がとんでもないことを言い出した。
「そんな、お咎めなしってレイナルド殿下は仰ったわ」
お父様の一言に、はしたなくも大声で抗議する。
もしかして、この男が?振り向いて殿下を見る。
「私ではない、侯爵の意見だ」
殿下は肩をすくめる。
「エレノア、これは父からの罰と心得よ。法務を預かるヴァルト侯爵家の立場を鑑みれば、それでも甘い!もっと辛い罰を考えたが、殿下が酌量してくだされた。慎んで受けなさい」
「だってお父様、木箱の移動禁止は言われたけれど、それ以外は何もおっしゃってないでしょう、後付けは卑怯だわ」
「侯爵、木箱の移動とは?」
殿下が即反応、これはまずい。
「殿下、黙っておりましたが、愚娘は、あのダイシなる木箱に乗って王城から当家へ戻って参ったのです」
「ブハッ、ハッ」
オスカー様が吹き出す。
殿下が咳払いをし、口元に手をあて横をむいた。
何笑ってんのよ!
「王族の妃になる者のすることではございません。徹底的に躾けをし直さねば、家ではヌルいので、是非とも殿下に」
お父様、娘を売ったわね。
「侯爵、しかと賜った。ここまで放置していた私の責でもあるゆえ」
何言ってんのよ、殿下も。この世界の男どもは、もう!
そして私は、侯爵家の侍女のお仕着せ姿のまま、殿下が乗ってらした馬車に乗せられて、王城に連れ戻された。
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王城、レイナルド私室。
「なぜですか、殿下」
今、私は必死でくいさがっている。
「ヴァルト侯爵家としての罰だそうだ。周りにも示しがつかぬと言うことで、法務大臣は秩序を守る立場でもある。だから諦めろ。今回は王家と侯爵家を巻き込んでいるので仕方あるまい」
「……」
お父様が決めた罰は、半年間、殿下の側仕え、つまり専属侍女になることだった。
王族の側近や側仕えは、高位貴族で固められる。オスカー様だって侯爵家次男だ。でも専属侍女って、ちょっと待ってよ。
更にもう一つ、とんでもない事が決まっていた。
これまで私のお部屋は客室に近い場所にあったのに、帰城後に与えられた部屋は、殿下の私室の隣、つまり婚姻後の王子妃が使う場所だった。
「これはまずいです」
「何がまずい、母上が安心できるようにと、急いで整えてくださった、婚約者なのだから別に構わない、王妃様のお気持ちを受けられぬと」
「……い、いえ、慎んで、オウケオタシマス」
みんな何考えてるの?
「でも」
「まだ何か」
今言わないと。
「婚約者としてお部屋は賜ります。なのに侍女とは」
「それとこれは別だ。部屋を決めたのは王妃様、罰を決めたのは侯爵家」
ああ、もうぶ〜たれてきた。
お父様の意地悪。
「エレノア」
「なんでしょうか」
「着替えの時間だ、手伝え」
私は周りを見渡した。
「何をしている」
「他の侍女たちは?殿下付きは三名はいましたよね」
「エレノアがついてくれるので、一旦母上のところに戻した」
「はい???」
「二人の時間を大事にしたいと言ったのでな、母上はたいそう喜んでおられた」
何を言ってんのよ、きっと過労死するわ。
どうにも何にも聞いてもらえそうにない。
殿下が騎士団総帥の騎士服のボタン外し始める。
こう言う部屋の作りはどこも同じ。
お部屋着の時間だから、見当をつけて巨大なクローゼットから、トラウザーズとブラウスその他を出して木製の衣装盆に入れて準備をする。
振り返って、動けない。いや、これ以上近づけない。
殿下が下着まで脱ごうとしている。
「殿下、待ってください」
「何を待つ、早く着替えを」
「殿下、殿下付きの侍女はいつもこんな事を?」
「当たり前だろう。お前だってそうやって着替えをしているのでは。何を恥ずかしがっている」
「わたくしは女性同士ですから」
半分目を瞑って衣装盆を差し出そうとして、何かに躓いた。
「あっ!」
倒れ込んだ先は、殿下の腕の中。
もう嫌。殿下にがっしりと抱き止められる。
「ちょうどいい、エレノア」
な、なに?二人っきりで、何?
さっき侯爵家で囁かれた言葉が蘇る。
ちょっと待って。
近い、近い。
ドキドキしてくる。
「どうした、エレノア。首筋が紅い」
「っ」
殿下の胸元が、まるで壁、モゾモゾとする。
「動くな、つけにくい」
お願い離れて。心臓に悪い。
首筋にひんやりとした感触があり、カチリと小さな音がした。
「これでいい」
殿下が手を離すと、首元に小さなサファイア色の魔石が光っていた。
綺麗な色。
「これは私の魔力がないと外せない。居場所がわかる」
子供やペットのGPS?
「殿下、猫の鈴は無くても。私、もう逃げませんから」
「猫ならまだいい、あなたは木箱で逃亡する。次は箒に乗って空を飛びそうだ」
綺麗な石だと思った私がバカだった。
「エレノア?着替えはまだ終わっていない」
殿下の腕の中から飛び退いた。
これがずっと続くの?あと半年も?
「エレノア」




