依頼「美咲の子の父親を探せ」
『ラーメンは依頼の後で』をお読みいただき、ありがとうございます。
第八話では、第六話で登場した美咲が再び依頼人として姿を見せます。
今回の依頼は、行方が分からなくなった赤ちゃんの父親を探してほしいという切実なものです。
不安や後悔、そして未来への希望を抱えながら、それぞれが一歩ずつ前へ進もうとします。
涼真と麗華は、依頼人の気持ちに寄り添いながら、新たな未来への扉を開くために奔走します。
二人のバディーとしての絆にも注目しながら、第八話をお楽しみください。
第八話 依頼「美咲の子の父親を探せ」
雨上がりの朝。
便利屋「涼真サービス」の事務所に、一人の少女が訪れた。
「お久しぶりです。」
そこに立っていたのは、第六話で依頼をした高校二年生の美咲だった。
麗華は笑顔で迎える。
「元気そうでよかった。」
しかし、美咲の表情はどこか曇っていた。
「今日は……お願いがあります。」
涼真は静かに頷く。
「話を聞かせて。」
美咲はお腹に手を添えながら、小さな声で言った。
「赤ちゃんの父親を探してください。」
部屋に静かな空気が流れる。
「連絡が取れなくなってしまったんです。」
「急に?」
「はい……。電話もメッセージも返ってこなくて、学校にも来なくなりました。」
涼真は慎重に尋ねる。
「名前は分かる?」
「神谷 大輝です。同じ高校に通っていました。」
「分かった。まずは居場所を調べよう。」
依頼は正式に引き受けられた。
⸻
翌日。
二人は大輝が通っていた高校を訪れる。
担任教師は困ったように話した。
「家庭の事情で転校したと聞いています。」
「転校先は?」
「個人情報なので詳しくはお話しできません。」
有力な手掛かりは得られなかった。
⸻
商店街へ戻る途中、一本の電話が鳴る。
依頼人の美咲からだった。
「大輝くんのおばあちゃんの家を思い出しました。」
「住所を教えて。」
涼真たちはすぐに向かった。
古い平屋の玄関を開けると、一人の高齢女性が迎えてくれた。
「大輝なら、父親の仕事の都合で引っ越したよ。」
「連絡先をご存じですか?」
女性は少し迷ったあと、本人に確認を取ってから連絡をつないでくれた。
数時間後。
公園で大輝と会うことになった。
⸻
「……美咲。」
大輝は深く頭を下げた。
「ごめん。」
「逃げたわけじゃない。」
「急に引っ越しが決まって、連絡もできなくなった。」
美咲は涙を浮かべる。
「ずっと心配してた。」
大輝も目に涙をためる。
「本当にごめん。」
涼真は二人を見つめながら言った。
「これからどうするかは、お互いによく話し合って決めることが大切だ。」
「家族とも相談して、必要なら学校や専門家にも力を借りよう。」
二人は静かに頷いた。
「はい。」
⸻
依頼は無事に終了した。
麗華は空を見上げる。
「また一つ、誰かの未来につながりましたね。」
涼真は微笑む。
「答えを出すのは本人たち。でも、そのための一歩を支えるのが俺たちの仕事だ。」
帰り道、「麺処 山岡」の暖簾が揺れていた。
店主・健蔵が笑顔で迎える。
「今日は食べられるか?」
涼真は笑って答えた。
「今日は依頼が終わりました。」
二人は温かいラーメンを前に手を合わせる。
「いただきます。」
ようやく口にした一杯は、二人にとっていつも以上に優しい味がした。
――第九話へ続く。
第八話を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、美咲の「会いたい」という強い想いから始まる依頼を描きました。
人は不安や恐れから、すれ違ってしまうことがあります。しかし、勇気を出して向き合い、話し合うことで、新しい未来が見えてくることもあります。
涼真と麗華は、答えを決めるのではなく、依頼人が自分自身で未来を選ぶための手助けをしました。それこそが、二人の便利屋としての信念です。
そして今回も、依頼を終えた後の一杯のラーメンは格別の味となりました。
次回は、どんな依頼が二人を待っているのでしょうか。
どうぞ、第九話もお楽しみに。




