依頼「この旦那を探せ」
『ラーメンは依頼の後で』をお読みいただき、ありがとうございます。
第七話では、「この旦那を探せ」という依頼を通して、家族の絆や信じることの大切さを描いています。
便利屋の仕事は、失くし物を探すだけではありません。時には、大切な人の心を探し、もう一度家族をつなぐこともあります。
涼真と麗華は、依頼人の想いに寄り添いながら、一人の夫を探すため街を駆け巡ります。
そして、今回も涼真の信念は変わりません。
「ラーメンは依頼の後で。」
それでは、第七話をお楽しみください。
涼真の定番は昔ながらの醤油ラーメンか、こってり豚骨ラーメン
第七話 依頼「この旦那を探せ」
雨が降る夕方。
便利屋「涼真サービス」の事務所を、一人の女性が訪ねてきた。
年齢は三十代半ば。
濡れた傘を握りしめ、不安そうな表情を浮かべている。
「依頼をお願いしたいんです……。」
涼真は椅子を勧めた。
「どうぞ、お掛けください。」
女性は深呼吸をして話し始める。
「主人を探してください。」
麗華が優しく尋ねる。
「何かあったんですか?」
女性は小さく頷く。
「三日前に『少し考えたい』と言って家を出たまま、帰ってきません。」
「警察には?」
「届けは出しました。でも事件性は低いと言われて……。」
涼真は写真を受け取る。
写真には優しそうな笑顔の男性が写っていた。
名前は高橋 恒一。
四十二歳。
町工場で働く職人だった。
「必ず探します。」
女性の目に涙が浮かぶ。
「お願いします……。」
⸻
翌朝。
涼真と麗華は、高橋の勤務先を訪ねた。
工場長は困った顔をする。
「真面目な人なんですよ。」
「最近、様子は?」
「仕事で大きな失敗をして、自分を責めていました。」
「家族には迷惑をかけたくないって。」
涼真は静かに頷いた。
「責任感が強い人なんですね。」
⸻
二人は、高橋がよく訪れていた公園へ向かった。
ベンチには缶コーヒーが一本置かれている。
麗華が周囲を見渡す。
「あそこ……。」
木陰に、一人の男性が座っていた。
写真と同じ人物だった。
「高橋さん。」
男性は驚いて顔を上げる。
「どうして……。」
「奥さんが心配しています。」
高橋はうつむいた。
「帰る資格なんてありません。」
「仕事で失敗して、家族にまで迷惑をかけると思ったら……。」
涼真は静かに隣へ座る。
「失敗しない人なんていません。」
「でも、帰らなかったら、もっと奥さんを悲しませます。」
高橋は目を閉じた。
「……。」
麗華がそっと言う。
「奥様は怒ってなんかいません。」
「ただ、無事でいてほしいと願っていました。」
その言葉に、高橋の目から涙がこぼれる。
「帰ります。」
⸻
夕方。
玄関の扉が開く。
「ただいま……。」
奥さんは振り返ると、何も言わずに夫を抱きしめた。
「おかえりなさい。」
高橋は何度も謝った。
「ごめん。」
「本当に、ごめん。」
「帰ってきてくれただけで十分。」
その光景を見た麗華は、小さく涙をぬぐう。
涼真も穏やかに笑った。
「依頼完了ですね。」
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帰り道。
「麺処 山岡」の暖簾が見えてきた。
店主・健蔵が笑顔で迎える。
「今日は食べられるか?」
涼真は笑って答えた。
「もちろん。」
その瞬間。
プルルルル……
スマートフォンが鳴る。
店主は天井を見上げた。
「……またか。」
涼真は電話を見つめ、苦笑いする。
「便利屋は休めませんね。」
麗華も笑った。
「ラーメンは依頼の後で、ですね。」
二人は顔を見合わせ、新たな依頼へと歩き出した。
――第八話へ続く。
登場人物(第七話)
涼真
24歳。本作の主人公。
便利屋「涼真サービス」を営む青年。困っている人を放っておけない性格で、「ラーメンは依頼の後で」を信条としている。依頼人に寄り添い、問題の解決に全力を尽くす。
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白鳥 麗華
18歳。白鳥家のお嬢様。
現在は涼真のバディーとして行動し、依頼人の心に寄り添う優しさを持つ。人との出会いを通して少しずつ成長している。
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山岡 健蔵
「麺処 山岡」の店主。
人情味あふれるラーメン職人。依頼を優先する涼真を温かく見守り、帰ってくるたびに最高の一杯を用意している。
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高橋 恒一
42歳。町工場で働く職人。
責任感が強く、仕事の失敗を苦に家を出てしまう。家族を大切に思う優しい夫。
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高橋 美穂
高橋恒一の妻。
突然帰らなくなった夫を心配し、涼真へ捜索を依頼する。夫の無事を誰よりも願っている。
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工場長・田村
高橋の勤務先の工場長。
高橋の真面目な人柄をよく知っており、涼真たちへ情報を提供する。
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商店街の人々
涼真たちを応援する街の人々。
便利屋として活躍する二人を温かく見守り、時には依頼や情報を持ち込む存在。




